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宇治の街を漂うかおり




先月12月、家族そろって日本に一時帰国した。

大学生の娘は2週目から合流。
試験終了後に車でヒースローまで行き、ホテルに一泊、翌早朝の便で日本へ。
そういえば、その朝(日本ではもう午後)わたしたちは金閣寺におり、モーニングコールを入れても出ない娘にハラハラさせられたのだった。最終的にはホテルのフロントに電話をして回してもらった(笑)。

年末まで、今回は西日本を中心に、名所旧跡を訪れた。
滞在中にも一部記事をアップしたが、それ以外にも楽しい思い出が山ほどあるので、多少書き留めておこうかなと思っている...




娘が到着し、最初に訪れたのは宇治と伏見。

この1週間ほど前には友人夫婦の計らいで、平等院のライトアップの最終日を拝観したばかりだったが、夜の美と昼の美はまた趣が全然違う。

2021年の一時帰国時には、改修工事中で非公開だった鳳凰堂の本尊阿弥陀如来坐像も澄んだ空気の中でありがたく拝観できた。

九品往生、どんな人間でも救われるという。
雲中供養菩薩(天上のミュージシャン)が奏でる妙なる音楽に導かれて。
当時の人(今でも、か。人間である限り)は、その教えにどれだけ安らげたであろう。




娘は抹茶好きにかけては人後に落ちない。
あの、お茶の香りが風に乗って漂う宇治の街をぜひとも歩いてみたいという強い希望があり、中村藤吉本店のパフェをおめざにするため、開店時間に合わせて宇治に到着した。花より団子。

寒い寒いと言いながら冷たいパフェを食べたのも楽しい思い出...









辻利はロンドンにもあり、開店当時はなかなか感心したものの、最近では何が悪いのかどんどん味が落ち(ロンドンの飲食店はいつもそう...)、こちらで食べるものとは全然別物である。




おまけ...

わたしは京都のきつねうどんが大好き!
お昼どきにおなかがペコペコで、ほぼ適当に入ったお店が大当たりなのはうれしい...三よしや、お店の方もとても親切で、最高だった。

娘が和食大好きなのは当然として、ベルギー人の夫は、中村藤吉の抹茶パフェも、抹茶ぜんざいも、駿河屋の抹茶団子も、京うどんも、わたしが驚くほど何でも食べる。
彼のいいところはなんでも食べるところだ。
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眠れる森の美女2023 オープニング・ナイト



ROHからお借りしました Photo: Andrej Uspenski 2023


わたしがもし「この世で最も美しい人は誰だと思うか」と聞かれたら、即答で「マリアネラ・ヌニュス(Marianela Nunez)」と答えるだろう...


はい、前回は、わたしがもし「この世で最も美しい人は誰だと思うか」と聞かれたら、即答で「マルタ・アルゲリッチ」と答えるだろう...と書きました!

そう書きながら、頭の中にはもう一人、この卓出したバレエダンサーの姿も閃いたのだった。

ご両者ともにアルゼンチン出身である。意味はない。あの抜群の音楽性を国民性かと言いそうになるが、そこは自制。


「完璧」なものに遭遇した時に人間が感じるあの「気持ちがいい」と言うしかないようなあの爽快感よ。
ギリシャの神殿や、雪の結晶や、赤ちゃんの手...
歓喜に満たされ、同時になぜか悲しみさえ誘う...悲しみは「儚さ」に対して感じる悲しみなのだろう。



ロンドンはみなさんのご想像に反して冬もそれほど寒くないのです。年末の日本のほうがずっと寒かったくらい
しかし昨夜は公演終了後、1度まで下がっていた。帰宅したらマイナス3度!!
全てが死んだようになる冬...の次には春の輝く曙(オーロラ)が


それはさておき、ロイヤル・バレエ2023年最初のオープニング・ナイトは『眠れる森の美女』The Sleeping Beautyで。

Marianela Nunezのオーロラ姫は、技術は完璧、音楽性も未聞、16歳の誕生日に喜びに発光し、弾ける無邪気さそのものであり、王子の幻想のシーンでは宙に浮かぶような儚さを、結婚のシーンでは正統性を示す王冠のように堂々と、しかも限りなく優雅であった。

Vadim Muntagirovは、難役『マイヤーリンク』のルドルフを経て、円熟の域に入ったのではないかとすら思った。凛々しく品のある美しさ、「舞台に立っているだけで煌めく王子様」を脱皮して、さらに美しくなったのではないかと思う。


夫が買ってきてくれたピンクの薔薇。オーロラ姫のようだ


16歳の誕生日にオーロラ姫はカラボスの復讐により、死ぬ...いやリラの精に助けられ永遠の眠りにつく。ある日、彼女を愛する王子が現れるまでは...という誰でも知っているであろうあのストーリー。

批評家の中には、ずいぶん前からこのプロットの「古臭さ」が嫌われ続けているものの、わたしはこういうお話は現代社会にすりよった新解釈を加えたり、モダンな背景に変えたりするよりも、永遠に凍りついた教会のステンドグラスや美術館の展示物にように、そのままで後世まで続けるのが吉だと思う。

衣装などに新デザイン施すのには賛成するにしても、である(例えばオーロラ姫が誕生時のスタイルがバロックで、彼女が目覚める100年後のスタイルがロココ、というのがいい)。

人間はなぜこういった「古臭い」「型にはまった」「同じような」話をなぜ語り続けるのか。と考えることにこそ、こういう古典作品の意味があると思う。
すべてを削ぎ落としてもなお残る人間の精神は何か、と。


わたしは、眠れる森の美女の話は端的に、自然のサイクルを意味しているのだと考える。
全てが死ぬ冬のあとの春の訪れを確実なものにするため、祈る人間の可憐さ。

春の誕生は再生の喜びに満たされる。
しかしその陰には、すべてが死んだようになる冷たく厳しい冬がある。

オーロラ姫の誕生は「春の曙」そのものである(名前も「オーロラ」だし)。
しかし彼女の輝かしい成長の影には忍び寄る「死」、つまり冬の陰がつきまとう。
輝ける姫は一旦死ぬ(冬の訪れ)それは世界の終わりではなく、いつかはまた春が巡ってくるのである。春を運ぶ西風の神、ゼピュロスの接吻によって。

ここで思い出されるのがボッティチェリの『プリマベーラ』画面の右側、ブルーグレーの肌をしたゼピュロスに捉えられたニンフのクローリスが、絢爛な春の女神フローラに変身する、あの場面である。


ちょうど一年前、ウフィッツィで撮影した『プリマベーラ』。最も好きな絵の一枚


リラの精は狂言回しで重要な役柄であるから、今回のようにプリンシパルの金子さんをもってきたのは大正解だと思った。

「金子さん、きれー!!!!」と絶叫しそうになりましたよ。
The Lilac Fairy、妖精の女王、美しく強く優しいリラの精、そのもの。




緞幕の紋章、故エリザベス女王のまま。チャールズ3世(<エリザベス女王と違い、バレエファンだそうで、よくお見かけする)に変わるのはいつなのかな...



写真では遠そうに見えるが、オーケストラ・スタルN列目から。N、Mあたりがわたしは好き。
これより前の座席は人の頭で視界が遮られることが多い
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『小さな旦那様、小さな奥様』




わたしがもし「この世で最も美しい人は誰だと思うか」と聞かれたら、即答で「マルタ・アルゲリッチ」と答えるだろう...

去年の夏、南スペインはグレナダのアルハンブラ宮殿内でラヴェルのピアノ協奏曲を演奏するというので、娘と飛んでいった。
12月にはパリでシューマンのピアノ協奏曲を聴くはずだったが、日本へ行くか、パリへ行くかと迷っていたところ、アルゲリッチ病欠との知らせが入り、快癒を祈った。

昨夜のベルリンはパリの予定と同プログラム。同郷のバレンボイムが指揮する。彼の引退コンサートの一環でもあった。

アルゲリッチの、神のような大胆さ。素晴らしいスタミナ。限りない新鮮さよ。(若いのがいいという意味ではない)常若。マンネリズムのカケラもない(と書くわたしの文章がマンネリ)。
彼女がスコアのあらゆる美点をひきだし、際立て、具体化し、驚異的なリズム感で楽しませつつ、他の楽器へ目配りをし、引き立てることを忘れない...のはいつもわたしが書くマンネリながら、シューマンのピアノ協奏曲のピアノがオーケストラの伴奏に回るところ、そのダイアローグがこれまたひっくり返るくらいすばらしかったです!!

「能力の高い人」の定義が、他の人の能力を最大限に引き出す能力のある人、であるとしたら、まさにその通りの大天才である。


アンコールでは、ビゼーの『子供の遊び』から『小さな旦那様、小さな奥様』Petit mari, petite femme! をバレンボイムがおどけて紹介し(「小さな旦那様」で自分を指差し、「小さな奥様」でアルゲリッチを指した)、アルゲリッチと連弾した。

その音色には会場中のカップルが手を握り合った。

森鴎外の『ぢいさんばあさん』のような美しさに胸をつかれた。

『小さな旦那様、小さな奥様』、『ぢいさんばあさん』...

第一コンサートマスター樫本大進さんも目を赤くして泣いておられました。それがまた感動的で泣かされた。


次は3月、ウィーンでリストのピアノ協奏曲を聴く。
指揮はバレンボイム。
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あんぱんで公現祭を祝う




1月6日はカトリックの国では公現祭を祝う。

12月25日にベツレヘムに誕生したイエス・キリストの元へ、東方の三博士が祝福に訪れた日を記念して。
これをもってクリスマス・シーズンは終わりとなり、飾り付けなどもしまい、生のもみの木も処分する。

ベルギーに住んでいるときは、この日にいただく「王様のタルト」がどこででも手に入ったが、英国ではそうはいかない(英国は国教会の国だから)。で、作る。
しかし今年は...

あんぱんを焼いた(笑)。フェーヴも入れた(笑)。


先月一時帰国中だった日本で、たくさんお菓子を持たせてもらい、また買い込んではきたものの、餡入りの和菓子を買いそびれたため、イングランドのスーパーで売られている「あずき水煮・無糖」で試作したつぶあんを使ってみたかったからだ。

缶を開けてみると、予想以上に小豆の粒が揃っていて、とても綺麗。それに気を良くして砂糖を加えて煮詰めたら、かなりそれらしいものができた。
手前味噌ならぬ、手前餡子。


炒め物、カレー、サラダにぴったり! と書いてある...


つぶあん入りのバターサンドにしようか、あんぱんにしようか。
フェーヴを入れやすいあんぱんにした次第。


フェーヴはまだ出ていません


先月は西日本を中心にさまざまな土地を訪れた。

歴史、文化、自然よし。
そしておいしいものが想像ができないくらい多く、寿命が足りないのではと不安になるほど。
スポンサーなしでは行けないクラスのお店から、買い食い立ち食いジャンクフードのお店まで。あるいはデパ地下、駅の物産店。
食べても食べてもつぎつぎと目の前に現れる美味しそうなもの、もう一回味わいたい、あるいは今は食べられないから後のために買っておく、しかし買っても買ってもまだ買い足りない、という餓鬼の地獄。

いつも一時帰国前には事前に食品を中心に食器、雑貨、文房具...その辺りの買い物リストを作っておきはするのだが、決してその通りにはいかない。
わたしが日本で買わないのは服飾品だけかな!


つぶあんといえば、焼きたての梅ヶ枝餅が食べたい!


和菓子ばかりは今回は大失敗した。
生の和菓子が大好物なので、最後の最後の大阪梅田で賞味期限ができるだけ長い、新鮮なものを買うと予定していたのだが、年末年始の梅田の阪神・阪急百貨店の人混みがすごく(ほんとうに不景気? というくらいすごい人出だった...)ひるんでしまったのと、ラストスパート(<なんと卑しいのでしょう)であれもこれもと食べており、お腹が空いていなかったために購買意欲が湧かず、じゃあ空港で大好物の赤福を買えばいいかと思ってしまったのが運の尽きだった。

羽田の国際線ターミナルにはろくな取り揃えがなかった...
機内に持ち込もうと楽しみにしていたお弁当も売っていなかった...

最近、外国の検疫が特に厳しく、特になまものを扱いにくいそうだ(<これは覚えておこう。前回も前々回も夜中の便だったため、売店が全部閉まっており、気がつかなかった)。
しかも、食事をしたくてもスナック・バーみたいなところしかない。

それを知っていたらせめて国内線ターミナルで買えたのに。
伊丹空港のみたらし団子、おいしそうだったなあ、関西人大好き美々卯のうどん屋さんもあったなあ、最後に無理しても食べておけばよかったなあ、常温で保存できる鯖寿司、なぜ買わなかったのかなあ。

時間があったらもう一度セキュリティ検査の外へ出て買い物できるのに...と半泣きになりながら、ラウンジで鶴亭のお鮨と和定食とシャンパンをいただいた思い出。これぞやけ酒。


羽田国際線ターミナルのシャンパーニュは涙の味...



脳はまだ日本にいると勘違いしているようで、浅い夢のなか、起きたらデパ地下へ行こうと思っている。
気持ちはわかる。

ロンドンの吉兆庵がなくなったので、パリの虎屋へ行こうかと思う。
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イングランドの三が日


探し求めた末の一目惚れ、田口杏奈さんの水引のしめ縄


あっという間にお正月三が日、終わってしまいました。
ダラダラと食べるのもおしまい...?!

英国では3日から通常運転になるため、夫は昨日、初飛びでLAへ出張に、娘は停滞していた勉強キャッチアップに忙しい。

さてわたしは何をしよう...レクチャーでも聞きながら、何百枚もある日本旅行の写真の整理や、思い出でも書き留めようかしら。


友達から、干支のお懐子をいただいた


元旦は、怪我の功名? 時差ぼけで朝4時半に起きたため、ドタバタでなんとか用意。

日本で家族や友達が持たせてくれた食材、黒豆、栗きんとん、燻製かずのこ、田作り、昆布巻き...
鴨ロース(強めに塩をしてフライパンで焼き、オーブンで5分、アルミに包んで冷めるまで置くだけ。和風にも洋風にもソース次第で応用可でわたしの最定番)、冷凍しておいた豚バラのチャーシュー、伊達巻などで簡単お節風。近所の魚屋で有頭の海老が手に入ったので、それらしく見えていいわと自画自賛。
お餅もたくさん食べました。


元旦の夜は、大晦日に食べそびれたお蕎麦を鴨南蛮で。

鴨南蛮には鴨から出る香ばしい脂とイタリアの魚醤を使う。
大晦日は時差ぼけがはなはだしく、20時ごろ、23時に目覚ましをかけて床に入ったら...目が覚めたら元旦の朝4時半だったのだ。
夫が起こしてくれたそうだが記憶がない。かわいそうに彼は一人で年越ししたそう。娘はロンドンで「医者と弁護士のカウントダウン・パーティー」に参加していて留守だったから。


お箸はアマネムで頂戴した御千木箸


セッティング、こちらのほうが好みです


2日の昼はバタートーストとコーヒー。なぜか毎年このタイミングで厚切りバタートーストやクロワッサンが食べたくなるの!


2日の夜はトマトのすき焼き。

牛肉とプチトマトとクレソン、〆は焼き餅なので、準備が超簡単でありがたい。しかも色鮮やかで豪華に見える。
半冷凍にした牛肉塊(今年はスコティッシュ・ビーフのリブアイの部分。脂が比較的多くわたし好み。翌日も使うので多めに3人で1.2キロ)を事前にスライサーで薄切りにしておけば、夕食前、もっと楽! こちらには「薄切り肉」というものが販売されていないのですよ...

満を期して、ユーハイムの抹茶バームクーヘンをデザートに。


ユーハイム、神戸っことしては、子供の頃が懐かしい



3日の昼は、しゃぶしゃぶ茶漬け。

前夜の牛肉薄切りをしゃぶしゃぶにして炊き立てご飯にのせ、わさびと、ほうじ茶を煮出したつゆをかけていただくお茶漬け...
こちらも超簡単でほんとうにおいしい。わたしがご飯を何膳いただくか明かしたらみなさんきっとびっくりしますよ。


3日目の夜はとっておきの生ハムで締めた鯛のカルパッチョで鯛ちらし風。
鯛のお刺身を生ハムではさんで放置、ご飯の上に並べるだけの超簡単料理。
元になっているのは、神戸の大っ好きなレストラン、ハナタニさんの「岐阜のパルマハムとごはん」。


お米も持たせてもらった。ありがたい。


「生ハムで締めた鯛のカルパッチョの鯛ちらし風」は新調した飯台で。柴田玉樹さん作。美しい。
前代はタガがはずれたので、今回はタガがないものを求めた。
最初に使う時はドキドキですね...大切に持ち帰りました!



牛蒡のたたきや、蓮根の酢漬け、紅白なます、黒豆、生ハムフルーツなどは、無限ループで食べてしまう。
なんでも「〇〇風」なのが海外在住日本人家庭だ。
そろそろ生野菜が食べたいですね。

おやつは大好物の湘南のチーズパイ(<Aさん、いつもほんとうにありがとうございます!)、資生堂パーラーのクッキー、さかぐちのおかき、ブルージュのプラリネ、奉書をイメージして作った白いロールケーキ...

今日はおやつに井村屋のレトルトゆであずきでおぜんざいを作ろうかな!


阪神百貨店の日替わり物産展? で購入したもの。
梅田の阪急・阪神は神戸とは品揃えが違う! どこでもドアが欲しい!


今はこれ、すやの栗こごりをいただいておりまする。
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