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パラダイスとしてのペルシャ庭園




滞在中のホテルの中心には巨大な人造湖。
この周囲を取り巻くようにヴィラが立つ。

乾燥した国においては特に水は豊かさの象徴であろう。

「長く伸びる木陰の、絶え間なく流れる水の間で」というのは、イスラムにおける美しく望ましい天国の描写だ。




水路と噴水があちこちに。
部屋にもプールと噴水がある。

夜は窓を開け、水音とこおろぎを聞きながら眠りにつく。
今朝は5時20分にアザーンの声で目が覚めた。夜明け前。




マラケシュにある12世紀に造園されたメナラ庭園(世界遺産)を、比較的涼しい午前中に訪れようとガイドブックを見ていたら、とても興味深い記述があった。




曰く、メナラ庭園の中心には巨大な人造湖が貯水池として設けられ、周囲にはガゼボやパヴィリオンが立つ、と。
人工湖の水はカナートと呼ばれる地下配水システムによって、周囲を灌漑し植物を育てる。

そうか、これは滞在中のアマンジェナ(全写真)の構成と同じなのだ。
建築家はホテルを建設するにあたって、この土地に伝統的な庭園の建築様式を参考にしたのだろう。

この土地に伝統的な庭園の建築様式...とは、いわゆるペルシャ様式の庭園で、西はスペインのアンダルシアから、東はインドの庭園造成に影響を与えた。




古くは紀元前4000年代にまで遡ることができるようだが、特に発展したのはアケメネス朝ペルシャ(紀元前6世紀ごろから)で、だそう。
このころには、パラダイス「壁に囲まれた地上の楽園」のコンセプトが、文学などを通じてギリシャやエジプトにまで広がっていた。

2世紀ごろからのササン朝ペルシャの時代になると、ゾロアスター教(拝火教。善と悪、光と闇の二元論が特徴)の影響で、芸術における「水」の重要性が増し、この傾向は庭園デザインにも取り入れられ、噴水や池の設置が必須となっていく。




庭の形的には、漢字の「田」の形に土地を四分割(「十」が噴水路)して造園される庭園で、周囲は壁に囲まれ、精神の充実と休息のためのもの、エデンの園の再現でもある。
また、中央の泉から四方向へ流れ出る4つの川と、川に4つに分割された形は「世界」の象徴でもある。

世界を象徴し可視化し、天国を地上に再現したペルシャ庭園...人間が強く惹かれるのも無理もない。非常に魅力的だ。


メナラ庭園、行ってみよう。
一昨日金曜日から、週明けの火曜日までは熱波が来ていて46度越えゆえ、一気に気温が20度から30度前半まで下がる水曜日以降にでも。
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