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さようなら夏の日




わたしが17歳だったのはもう何十年もだが、娘がいるおかげで、失ってしまった時を追体験することがある。


今年、娘は音楽のサマースクールに通った。

彼女のメインの楽器ピアノではなく、フレンチ・ホルンでの参加で、ブラスの奏者だけがイングランド国内はもちろん、近くはフランス、遠くはマレーシアから60人近く集まったのは壮観だった。

ブラス奏者というのは比較的男性が多い統計なのか。60人中、男子9割、女子1割、女の子は誰もがちやほや姫扱いされる超うらやましい環境。

普段同年代の男子と接する機会ゼロの娘は、音楽家はみんなジェントルマンであると演繹してしまいそうなほどみんな礼儀正しいと感心していた。

...ああ楽しそう。わたしもブラスをやっていればよかった(笑)。


人数が少ないホルン・グループの中にはひとつ年上の男の子がいて、同じ楽器を演奏するということもあり、彼とは特に仲良くなった次第。


最後の日は家族や友人も観覧できるコンサートが催され、娘たちはその後、小グループで食事に行った。

いよいよ帰るという時刻に、たまたまわたしたちとの待ち合わせ場所で彼ら2人を見かけたのだが、なんかこう、自分の遠い夏を思い出してしまった。

近頃はSNSという神器があるおかげで、わたしたちのころのように一旦連絡が途切れたらそれでほとんど永遠に終わりというような焦燥な感じではない。が、遠くに住んでいる者同士、「もう2度と会えないかもしれない」感が漂っていて、声をかけられなかった。

娘は結局、嫉妬に狂った父親(笑)に急かされて、彼の両親と談笑していたその場を去ることになるのだが、彼の言い放った「またね!」というのが響いて、ああ、もう2度と来ない夏!


17歳の夏...自分がひとつ年上の男の子と神戸の東遊園地のベンチに座っていたのを思い出す。
彼はものすごく礼儀正しい男の子で、うちの母の評価も高かったのだが、彼の大学進学先が関西ではなかったため自然消滅。

そんなことはすっかり忘れていたものの、わたしが人生ですでに消費してしまった50回くらいの夏のうちの、ひとつの夏を思い出した。


わたしも娘も「礼儀正しい男子」に弱いみたいです。
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