MASTER PIECE

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幽霊たち

2013年03月04日 22時56分45秒 | 書籍



【書き出し】

まずはじめにブルーがいる。次にホワイトがいて、それからブラックがいて、そもそものはじまりの前にはブラウンがいる。
ブラウンがブルーに仕事を教え、こつを伝授し、ブラウンが年老いたとき、ブルーがあとを継いだのだ。
物語はそのようにしてはじまる。

探偵ブルーは依頼人ホワイトから、ブラックなる人物を監視してほしいとの依頼を受ける。
そのブラックを監視しても何も起こらない、しだいにブルーは混乱していく・・・

なにも特別な事件は起こらない探偵小説・・・
クールで頭脳明晰で冷静沈着な主人公ブルーが次第に追い詰められていく小説(笑)

でも、面白いです・・・こういうアイデアでのまとめ方は意外性での勝負ですが
ポール・オースターはスマートでまとめ方が上手いのでシュールな内容が映画のシナリオのような印象ですね。

でも、これって映像作品にしてしまっては退屈なんでしょう・・・多分。
文学で読み、読む者のイマジネーションでラストまでグイグイ持っていって余韻を楽しむ。
そのような印象を受ける作品です。


悪者見参

2013年03月04日 21時58分07秒 | 書籍



「サッカーは国と国との代理戦争」を地で行くルポタージュですね。

バルカン半島の火薬庫と言われたユーゴスラビア連邦共和国のサッカー代表を通じて
民族紛争とサッカー選手たちのメンタリティを描いているのが興味深くて、著者の非常に熱い気持ちが伝わる。

東欧の歴史や民族の紛争など専門的に勉強しなければ中々知りえない知識だと思うが
政治に翻弄されるスポーツ選手の境遇や国家分裂後のサッカー国際試合など凄い内容です。・・・

この境遇や現実はイングランドとアルゼンチンのフォークランド紛争や
日本と韓国の歴史、またはレアル・マドリードとバルセロナのダービーに通じるものがあり
(実際にはもっと深刻で一触即発の事態だったのがよく分かります)
本当にサッカー代表というのはスポーツ精神以上に国家の威信を背負っていると思います。
これが代理戦争と言われる所以じゃないかと思う・・・

日本人には理解しがたい東欧の歴史や民族紛争を解り易く追ったこの本書は
ルポタージュとしては今まで読んだどのスポーツノンフィクションよりも
強烈に印象深い内容でした。