安部公房の作品7作目。
久々に安部公房を読破しました・・・
まず、作者の遺作であるという事が一般的な認識ですね。
文具メーカーの開発部で働くサラリーマンの男にある朝起こった災難(かいわれ大根が脛に生える)
訪れた医院で麻酔を打たれ意識を失くした彼は、自走するベッドと共に坑道から運河へ、賽の河原から共同病室へ・・・
なんとシュールな展開なのだろうか・・・(笑)
あくまでも語り口はユーモアたっぷりで主人公に深刻さや悲しさは無くて奇妙な体験記イメージでしたが。。。
これは最後の最後で物語のイメージを裏切る(いい意味で覆す)なんとも安部公房らしい作品でした。
テーマはずばり「死」である。
この「死」を意識して再読したら一つ一つのエピソードがすべて伏線としてつながる
驚愕の小説ですね。
私の考察はこうです。
主人公が求めたのは安らげる場所だったと思う。
それはカンガルーが子供を守るおなかの袋なのだろう・・・(母胎回帰)
なぜ、そう考えるかというと、主人公は突然病気になり人生に絶望、自殺を考えて死に場所を求めて彷徨う。
安らげる場所の象徴が、カンガルーのおなかの袋だと思う。
シュールな一つ一つのエピソードはすべて主人公が見た走馬燈(夢)であったと考えれば、理解できる。
正直にいってなんとも救われない作品なのですが、安部公房ではかなり読みやすくて面白い作品でした。
作者の死生観がヒシヒシと伝わってきます、やっぱり世界的に有名な作家なんですねぇ~。
8日にノーベル文学賞の発表で村上春樹が受賞を逃すってニュースを見ましたが。
以前に安部公房がノーベル確実と言われていたのに急死したので、大江健三郎が受賞したとのエピソードを何かで読んだ。
結構、周りが騒いでいるうちはノーベル賞は貰えないのかも知れません・・・