MASTER PIECE

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火垂るの墓

2016年05月30日 06時47分47秒 | 映画



「泣ける!!」映画で有名な火垂るの墓を初めて観ました。
凄くびっくりしたのですけど・・・これって冒頭に登場人物の清太が死んでしまいますけど。
それってこの物語自体が魂(幽霊)の回想なんですね・・・
つまり幽霊が怨念を持って時間を遡り回想しているって、辛いし悲しい以前に怖いです。。。

もっとですよ、「昭和20年のあの日、私には節子という妹がいた・・・」で始まって
生きている清太の回想録であって欲しかった・・・
この事実を知ってから、泣く予定でしたが最後まで泣けなかったです
結局、お父さんもお母さんも妹も、最後は自分まで戦争で亡くなってしまったので、あまりにも絶望的過ぎる。。。
「戦時中は苦しくて苦労したけど、今はやっと当時の悲しい思い出が話せるよ・・・」っていう方が
どこか希望や救いがあって感情移入出来るので泣けます。あまりにも救いがないと泣く感情を通り越してしまいます。

あとはやっぱり時代が悪かったというか、親戚のおばさんにしても至極正論だし理不尽な事は言っていない。
清太も生きるための火事場泥棒や農作物を盗んでいるが、生きるために皆、必死だったのがよく分かる。

今の時代は豊か過ぎるよね。

ラストは現代に移って清太と節子の魂がビル群を眺めているシーンで終わりますが
あれも二人の霊魂が戦時中から成仏出来ていないっていう意味に思える。。。

悲しくて切なくてどこまでも絶望的な作品だと感じました。

Dear Zachary /ザカリーに捧ぐ

2016年05月29日 06時36分27秒 | 映画



YouTubeで町山智宏さんの動画を観ていたらこの映画の解説があったので観てみました。
(作品自体はネットに普通にアップされています)
町山さんの解説で、「考えられる以上の最悪の結末」とあったので私は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」とか「ファニーゲーム」とか
そういう後味悪い系かと思いましたが・・・

アメリカで医者のアンドリューが同僚で元ガールフレンドのシャーリーに銃撃され殺されてしまう。
アンドリューに別れ話をされたことによる怨恨が殺害の理由だった。
加害者のシャーリーは母国カナダで裁判にかけられるが、その時にアンドリューの子供を妊娠していた。
生まれた子供はザカリーと名づけられ子供の親権を巡ってアンドリューの両親と争う事になるが・・・

この映画は最初、プライベートで撮っていたドキュメンタリーであること。
そのドキュメンタリー映像はアンドリューの友人が撮影していること。
その目的は、父親を知らないザガリーへ将来、父親の事を知ってもらうのが目的だということ。

うーん、なんでしょうか・・・
観ているだけで体力を使う作品ですね、しかもドキュメンタリーなのがキツイです。
現実は小説よりも奇妙」っていうのを突きつけられる怖さっていうのは精神的にどうも・・・

映画は最初アメリカでは日常茶飯事的な(どうかは分かりませんが)殺人事件だったのですが。
後半から「えっ!!なに!!」っていう展開です。ドキュメンタリーがどんどん映画的な結末になっていく。。。

このような結末になるって・・・この世に神はいないんじゃないかっていう感想と
それでも神はいて、愛はまだ人間の中にあるっていう感想と二分するんじゃないかと思う。

正直なんとも言えないです。。。。

ベイビー・オブ・マコン

2016年05月24日 23時35分02秒 | 映画



1659年のイタリアの都市で「ベイビー・オブ・マコン」と題された芝居が始まった。
老婆が産んだ赤子をその娘が処女懐胎したように振る舞い
聖なる子供を利用して自分の身を滅ぼすという宗教劇です。

処女懐胎とは聖母マリアの事で聖なる子供はもちろんイエスの事ですが
面白いのは当時のキリスト教会はこの事を認めません(あくまでも劇の中です)
それというのも処女懐胎は奇跡なので、建前上奇跡を起こせるのは教会内だけだと主張する。
結局は嘘の奇跡(処女懐胎)がばれて娘は208人の男に犯される刑が行われて・・・

まぁ観るもショッキングなシーン満載なのですが、その意味不明とも思える展開とは裏腹に
映像が美しく、唯一無二な世界観なので引き込まれてしまって・・・帰ってこれない(笑)

16世紀のイタリアとか当時のキリスト教会の存在やメディチ家の権力など
ある程度の知識がないと理解に苦しむ、かなり難解な映画作品です

この作品のテーマは「搾取」だと思います。誰が誰から搾取するのか?
民衆が動物から食物を搾取、教会が民衆から金品を搾取、支配階級が教会から権力を搾取。
そして聖なるものはすべての者が搾取。。。

かなりグロいシーンもありますが、ネットで言われるほど酷くはないです。
あくまでも劇中劇です(笑)まぁ映画自体がフィクションの劇な訳ですから・・・

監督のピーター・グリ-ナウェイって変態だとしても、かなり頭がいい変態だと思う(笑)
最悪で最高な映画作品って言われているのも納得です。

マップ・トゥ・ザ・スターズ

2016年05月20日 18時45分13秒 | 映画



この作品もクローネンバーグ流の精神的にくる作品でした・・・
まったくもって一般人が覗いてはいけない世界ですね。
ハリウッドセレブの裏世界っていうのか、ある家族の崩壊を描いているのか・・・

観ている分には凄く面白いので見入ってしまいます(笑)
「ひどい話だ!!」って思っていても覗いてみたい衝動とか、秘密を知りたい好奇心とか・・・
そのへんはやっぱりクローネンバーグのセンスは見事ですね。

熱演なのはやっぱりジュリアン・ム-アでして、彼女のいかれた行動とか、喜怒哀楽が激しいところなど
ここまでの徹底した変人はハリウッドセレブにはいないと思います・・・(笑)

なんかあれですね。。。この作品でハリウッドセレブを物欲やセックスや薬物まみれに描いてあって
ちょっと気の毒な気もするが・・・監督流のブラック・ジョークとでもいうのかも。
そのブラックな側面だけ考えると、人間お金があっても精神的に満たされないと不幸なんだね。。。
物凄く分かりやすいメッセージです(笑)

傍から見たら羨ましい生活でも、当事者の苦労は計り知れないのかも知れないですね。
クローネンバーグ作品としては幻想的なシーンは少なくて、かなりリアルな作品なので
好き嫌いがはっきり分かれる賛否両論な作品だと思います。

大地のゲーム

2016年05月18日 23時56分18秒 | 書籍



久しぶりに綿矢りさを読んでみた。
読んだ正直な感想ですが、いい意味で綿矢りさらしくない作品です。。。
綿矢りさのポップで読みやすい文体、スピード感で一気に読ませるっていうのではなくて
どっちかというと大地震と学生運動をモチーフに生死や人間の絆を問う青春小説でした。

物語は近未来で学生運動が盛んになっている大学キャンパス。
そこには「私」と「私の男」他には「リーダーと言われる男」「マリ」と恋人の「ニムラ」

主人公に固有名詞が無いのも変なのですけど・・・
そこはやっぱり綿矢流の「私=あなた(読者)」へのメッセージだと思う。
地震が起きた時にどれだけ「生きる勇気と覚悟」が有るかって事なんじゃないのかな?
あきらめない気持ちとか支えあう優しさとか、もう後半になるにつれて泣けてきます。。。
まるで村上龍の「イン・ザ・ミソスープ」みたいに後半に怒涛に押し寄せてくる展開ですね、綿矢りさ=村上龍だと思った。
そう、言葉の言い回しにパワーがある、それは綿矢りさが持っている言葉のセンスですね。
でもって青春小説っていう言葉の裏にある男女間の愛憎劇にも取れるのが綿矢流だと思った。

綿矢りさらしくないって書きましたが、作品自体は力強く凄く面白い作品でした。