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オシムの言葉 増補改訂版

2014年02月26日 22時49分41秒 | 書籍



これは単行本が出た数年前に読みましたが、今回増補改訂版が文庫として出ていたので購入。

【オシムの言葉】とはこの文庫の人物であるイビチャ・オシム氏の半生を綴ったルポタージュです。

元サッカー日本代表監督であり、ユーゴスラビア連邦共和国最後のサッカー代表監督でもあるオシム氏の
激動の半生を緻密に記してあり、著者の木村元彦の著書は何冊か読みましたが、これも凄く心に響く内容でした・・・

まずもって旧ユーゴスラビア、サラエボ出身のオシム氏が凄く魅力的な人物です・・・
ユーモアとウイット、計算された指導力と強い信念に驚かされる。
なによりも母国が民族紛争と内戦に翻弄された数奇でドラマチックな人生・・・

1990年のイタリアワールドカップでのユーゴスラビア代表の記事は泣けます・・・
そして2年後のヨーロッパ選手権前に国家分裂、同じサッカー代表として戦っていた旧友との壮絶な予選試合。
元々、スポーツと政治は切り離されたものなのですが。そうならないのが現実に起こるという事実。

DVDで【引き裂かれたイレブン】っていうドキュメンタリーを持ってますがこれも凄く泣けます・・・
大ブーイングをする観衆の中で試合をする選手たちが旧友とハイタッチをするシーンがあるのですが
戦争一歩手前での国際試合で旧友との再会を嬉しく思う選手たち。(あれはスーケル選手だと思う)
選手たちは国家のために戦うが、あくまでもスポーツマンシップを忘れない姿勢。
壮絶なサッカーの試合で起きた奇跡的に感動するシーンでした・・・

そんな東欧の歴史も絡めて読むとオシム氏の言葉っていうのは凄く重い・・・

心に響く木村元彦さんのルポタージュでした。

アナザーサイド・オブ・ボブ・ディラン

2014年02月24日 21時12分05秒 | 音楽



言葉は力です、言葉を紡ぐと詩となり哲学になります。
その言葉の哲学としてディランの【マイ・バック・ペイジズ】という曲が持つ言葉の凄みは
現在も輝きを失わずに私の感情に訴えかけてくる・・・

初めてディランを聴いたのは十代前半でした。
何がきっかけだったのだろうか・・・って思い返したらライブエイドの【ウィー・アー・ザ・ワールド】でしたね。

アメリカのミュージシャンの集まりで当時の人気アーティストの中においても
独特の間をもって歌うディランの凄さ!!!っていうかカッコよさと存在感(笑)

マイケル・ジャクソン、ヒューイ・ルイス、シンディーローパー、ビリージョエルやブルース・スプリングスティーン
他のミュージシャンが一目置いてリスペクトするディランというミュージシャンって・・・

耳のなかで縛られた真紅の焔が
高く転がり大きなワナ
焔の道に火とともに跳ねる
思想を私の地図としながら。
「せとぎわであうだろう、じきに」とわたしは言った
ひたいをあつくして誇らかに。
ああ、あのときのわたしは今よりもふけていて
今はあのときよりも、ずっとわかい。


この解釈って成長や変化することが人生の意味みたいな事なのかな?
それとも単に現在の心境の変化を言っているのだろうか・・・

よくよく聴いてみるとディランの歌詞にはネガティブな言葉は少ない。
常に変化や現在進行形のポジティブな歌詞が印象的です。
そんなところがリスペクトされる理由なのだろう・・・

とにもかくにもこの「あのときのわたしは今よりもふけていて~」は
ディランの言葉の哲学を表している歌詞として大好きです。

ディボース・ショウ

2014年02月17日 22時59分00秒 | 映画



コーエン兄弟10作品目。

コーエン兄弟の作品は色々観てきましたが、初期の【ファーゴ】や【バートン・フィンク】に見られる
不条理とか人間の残酷性などは無くなり、より洗練されたスマートなアメリカンなブラック・コメディでした。

アメリカの国民性なのか・・・離婚【ディボース】までもショウとして捉える感覚って
日本人には無い感情なのでしょう。元々婚前協約がはっきりしているのは個人を尊重する
自由の国アメリカらしいって言えば凄くアメリカらしい。(笑)

そんでもって自己主張+裁判が大好きな国民性らしく弁護士っていう職業は
黒を白に変える力を持っているらしい・・・それが真実かどうかは別問題として

一つだけ凄く惜しいと思えるのは、この作品がコメディであるとしても
映画のシナリオとしては深いところで愛情とか、共感できるテーマがよく見えないところですね。

この映画の舞台がロサンゼルスであるって事で、結婚も離婚もコンビニエンスで
スイーツを買うくらいに気楽に出来るって事みたいです・・・

真鍋博のプラネタリウム

2014年02月11日 22時57分06秒 | 書籍



星新一の本が好きです。

星新一のショート・ショートの魅力って考えた時に未来の話があります。
その未来が、けして明るくない未来っていうのが魅力です。(笑)

これって日本の昔話の教訓みたいですね。「浦島太郎」や「鶴の恩返し」など
主人公は最後にちょっとアンハッピーな展開で終わる・・・

どんなに文明が進んで便利な世の中になったとしても、人間は滑稽で愛すべき人物として描いてあるので
ストーリー自体、古臭さを感じません。

その星新一のショート・ショートのイメージを挿絵で表現した真鍋博。
読んでみましたが、真鍋博の挿絵もかなり未来的です(笑)

ストーリーの結末を邪魔せずに読者に最後まで読ませるイメージの挿絵って。
これは考えただけでもかなり難しいと思う・・・

真鍋博の挿絵は星新一のショート・ショートに凄くマッチしていると思う。

この文庫の表題がプラネタリウムってのは星新一の星にかけているのだろうか?
ちょっと気になる・・・

人間そっくり

2014年02月09日 23時55分53秒 | 書籍



安部公房の作品6作目。

安部公房に関しては、面白い→つまんない→面白い→つまんない・・・の繰り返しです。
結果から言うとこの【人間そっくり】に関しては面白かったですね。

ラジオドラマのシナリオライターの家に自称火星人という男が訪問してきた。
現実と虚構が繰り返されて何が真実か嘘か分からなくなる主人公の苦悩・・・
この男の要求はなんなのか?はたまた本当に火星人なのか?単に騙しているだけなのか?

まぁ室内劇ですね・・・とっても「世にも奇妙な物語」にぴったりな題材(笑)

読者は明らかに訪問者が異常だと感じるが、説得力ある話術にまんまとはまってしまう。
「本当はもしかして・・・」
でもラストは安部公房らしく、総崩れな感じで物語をとっても深いところに引きずり込む救いようが無い展開(笑)

短編なのでさらっと読めました。

安部公房の書籍としては非常に読みやすい作品でした。