ボイシー日記

手がふさがっていては、新しいものは掴めない。

夏目漱石の美術展へ。

2013-07-07 13:48:22 | 出来事
信州から、夏目漱石の大好きな叔父が上京して
上野で開かれている「夏目漱石の美術世界展」を
観たいと電話があったので雨の中を行ってきた。
鴬谷駅の周辺には、次の日から始まる
朝顔市の朝顔がもう並べられていた。

漱石の小説のなかには、
「坊っちゃん」ではターナーの金枝、
「三四郎」はウォーターハウスの人魚、
「草枕」は若沖の鶴の図などが登場するが
それらを中心に国内から海外まで
多くの作品が展示されていた。

また漱石本人が描いた山水画や、
「我ガ輩ハ猫デアル」などの一連の漱石本や
雑誌「ホトトギス」などの
装丁に携わった橋口五葉のデザイン画、
挿画を描いた中村不折の作品や
同時代を生きた芸術家の絵画をはじめ
荻原守衛(碌山)の彫刻「坑夫」までもあった。
(碌山とは漱石の作品「二百十日」の
登場人物からその名前をとった)

漱石はロンドン留学中にターナーや
ラファエル前派に強く引かれて次第に造詣が深くなり、
小説を書き始めてから、そうした美術の知識なり
自分ならではの考察を織り込んでいったといえる。

また、この展覧会ならではの企画として
「三四郎」にでてくる原口画伯が描いた美ね子の「森の女」や
「虞美人草」の最後にある酒井抱一が描いたとされる
虞美人草(ひなげし)の屏風が想像画として展示されていた。


美術館を出て、叔父が漱石の墓も
訪ねたいというので鴬谷から大塚へ、
そして都電に乗って雑司ヶ谷霊園へ行った。
「こころ」に出てくる墓地の風景の中を歩いて行くと
巨大な安楽椅子の形をした漱石の墓があった。
まるで江戸川乱歩の「人間椅子」のような
ちょっと不気味な雰囲気さえ感じた。

ほかにもこの霊園には文化人が眠っており、
漱石ゆかりのケーベル先生や
弟子の森田草平、満鉄総裁の中村是公、
竹久夢二、泉鏡花などの墓があり、
小一時間ほど霊園内を見てまわった。
小雨が降る中、蚊に腕を刺されながら
墓地をしんみり歩いていると、
水木しげる先生の気持ちが
少しわかったような気がした。。。

〈写真 美術館入口/朝顔の鉢/夏目漱石の墓/竹久夢二の墓〉

コメント
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