それは、私がまだ20代半ばでの出来事でした。
そんな珍事は、恐らく生涯に二度と出会えないと思います。
会社の仕事で九州に行きました。夏でした。
確か福岡だったと思います。
当時、新幹線はまだ大阪までしかありませんでした。
帰路、大阪まで行くべく、私は夜行列車に乗りました。
寝台車でなく、普通のボックスシートの列車でした。
列車内は満員どころか通路に座って寝ている人が大勢いました。
当時の夜行列車は、大体そんな事が当たり前の時代でした。
私は運良く座席に座る事ができたので、ホッとしました。
列車が動き始めると共に、私はかなり疲れていたんでしょう。
また、まだ若かったので寝込むのも早かったのでしょう。
完全に熟睡してしまいました。
さて、福岡を出発してからどのくらい経ったのでしょうか?
私は、ふと真夜中に目を覚ましました。
その瞬間の驚愕を貴方は信じられるでしょうか?
あんなに驚いた事は、恐らく人生で初めてだったと思います。
列車内には私だけしか居なかったのです・・・
私だけが、たった一人っきりで座席に座っていたのです。
さっきまで、あんなに満員だった列車内には私以外に誰も居なかったのです。
「目がテンになる」
「呆然とする」
「頭の中がカラッポになる」
「ウッソーッ」
形容詞で言えば、多分そんなとこなんでしょうね。
しばし呆然として、この列車に何が起こったのか?と考えました。
でも、いくら考えたってそんな事が解る筈はないのです。
何だか恐ろしくなって、多分、鳥肌が立ったのかも知れません(覚えてないけど)
「呆然とする」その言葉しか思い当たりません。
そんな頭になりながら、薄暗い列車内をよ~く見ると、
向こう側の隅に、何やら人の頭らしき物が見えたのです。
「あれは人か?」
私は恐る恐るそっちへと歩いて行きました。
近づくと、それはやはり人の頭だったのです。
50歳くらいのおばさんが一人で寝込んでいたのです。
私は恐る恐るおばさんに声をかけました。
「あの~、気が付いたら列車内に誰も居ないんですけど、何かあったのですか?」
それを聞いたおばさんは大笑いでした。
その日は台風接近とかのニュースが入っていた日だったのです。
多分、広島県あたりだったと思うのですが・・・
おばさんいわく「何処だったかの駅に到着した時に車掌さんが車内アナウンスでこう言ったんですよ」
「皆さん、台風が接近してる状況で、この列車の運行もどうなるか分かりません。
現在、駅の反対側に停車している列車が先行しますので、お急ぎの方は乗り換えた方が良いかも知れません」
それを聞いた乗客(おばさんと私以外)の全員が、ドーッと向かい側に居る列車に乗り換えてしまったと言うのです。
それは、かなりの大騒ぎ・大騒動だった筈なのに、
私の目の前に居るこの若者は、それを全く知らずに寝込んでいたという姿を想像すると、
そのおばさんは、あまりにも可笑しくなって吹き出してしまったのです。
やっと、ミステリー、謎の解けた私は心から安心して大阪へと向かいました。
翌朝、何事もなく無事、大阪駅に到着し向かい側をと見ると、
あの、セッカチな連中の乗った、あの列車が少し前に到着していて、
まだ列車内から乗客が降りている最中でしたとさ・・・バ~カッ!
だから言ったろ~、あわてる乞食は貰いが少ないって。
俺なんか、心からゆったりしてるから、ま、こんなモンかな~。
そんな珍事は、恐らく生涯に二度と出会えないと思います。
会社の仕事で九州に行きました。夏でした。
確か福岡だったと思います。
当時、新幹線はまだ大阪までしかありませんでした。
帰路、大阪まで行くべく、私は夜行列車に乗りました。
寝台車でなく、普通のボックスシートの列車でした。
列車内は満員どころか通路に座って寝ている人が大勢いました。
当時の夜行列車は、大体そんな事が当たり前の時代でした。
私は運良く座席に座る事ができたので、ホッとしました。
列車が動き始めると共に、私はかなり疲れていたんでしょう。
また、まだ若かったので寝込むのも早かったのでしょう。
完全に熟睡してしまいました。
さて、福岡を出発してからどのくらい経ったのでしょうか?
私は、ふと真夜中に目を覚ましました。
その瞬間の驚愕を貴方は信じられるでしょうか?
あんなに驚いた事は、恐らく人生で初めてだったと思います。
列車内には私だけしか居なかったのです・・・
私だけが、たった一人っきりで座席に座っていたのです。
さっきまで、あんなに満員だった列車内には私以外に誰も居なかったのです。
「目がテンになる」
「呆然とする」
「頭の中がカラッポになる」
「ウッソーッ」
形容詞で言えば、多分そんなとこなんでしょうね。
しばし呆然として、この列車に何が起こったのか?と考えました。
でも、いくら考えたってそんな事が解る筈はないのです。
何だか恐ろしくなって、多分、鳥肌が立ったのかも知れません(覚えてないけど)
「呆然とする」その言葉しか思い当たりません。
そんな頭になりながら、薄暗い列車内をよ~く見ると、
向こう側の隅に、何やら人の頭らしき物が見えたのです。
「あれは人か?」
私は恐る恐るそっちへと歩いて行きました。
近づくと、それはやはり人の頭だったのです。
50歳くらいのおばさんが一人で寝込んでいたのです。
私は恐る恐るおばさんに声をかけました。
「あの~、気が付いたら列車内に誰も居ないんですけど、何かあったのですか?」
それを聞いたおばさんは大笑いでした。
その日は台風接近とかのニュースが入っていた日だったのです。
多分、広島県あたりだったと思うのですが・・・
おばさんいわく「何処だったかの駅に到着した時に車掌さんが車内アナウンスでこう言ったんですよ」
「皆さん、台風が接近してる状況で、この列車の運行もどうなるか分かりません。
現在、駅の反対側に停車している列車が先行しますので、お急ぎの方は乗り換えた方が良いかも知れません」
それを聞いた乗客(おばさんと私以外)の全員が、ドーッと向かい側に居る列車に乗り換えてしまったと言うのです。
それは、かなりの大騒ぎ・大騒動だった筈なのに、
私の目の前に居るこの若者は、それを全く知らずに寝込んでいたという姿を想像すると、
そのおばさんは、あまりにも可笑しくなって吹き出してしまったのです。
やっと、ミステリー、謎の解けた私は心から安心して大阪へと向かいました。
翌朝、何事もなく無事、大阪駅に到着し向かい側をと見ると、
あの、セッカチな連中の乗った、あの列車が少し前に到着していて、
まだ列車内から乗客が降りている最中でしたとさ・・・バ~カッ!
だから言ったろ~、あわてる乞食は貰いが少ないって。
俺なんか、心からゆったりしてるから、ま、こんなモンかな~。