高尚先生や山陽先生の師であったと伝えられる笠岡の小寺清先という人がおられました。
この小寺清先という人について調べているうちに、高尚先生と同門の人に「鳧翁」という奇妙な字を持つ先生がおられることが分りました。
辞書でも分るのですが、この字について教えてもらいがてらに、久しぶりに例の漢文の先生に会ってもいいと思い訪ねました。
鳧という字についてです。「フ」と読み、「かも」「けり」という鳥のことを言うのだそうです。けりという鳥がいるのかどうかは知りませんが、「けりを付ける」というのは、本来は「鳧(けり)がつく」であって、和歌などに見える助動詞「けり」ではないという。またもや目から鱗です。
又、彼は言う。
「こんな言葉があるのを知っているか。君」
と、言って、紙切れに字を書いてくれます。
その紙切れには、彼の特長でもあるミミズが這ったようなお世辞にも上手だとはいえない字で、堂々??と書いてくれます。でも、彼は、自分の書く字が世の中で最も美しい文字であると自負しているのですが、そこらあたりは私も大いに疑問です。
その紙には
「鳧脛雖短続之則憂」と書かれてありました。
「鳧脛短じかしといえども之を続がばすなわち憂う」と読むのだそうです
そして彼は、最近の事例として、この2、3日話題の中心になっている例のイージス艦「あたご」の事件を語りだします。
「大体、あの艦の自衛官がたるんでいる。アメリカの真似かどうか知らんが、実験かなんかで空行くミサイルをたった一回打ち落としただけで『成功した成功した』と有頂天になって、錦を着て故郷に戻るような気分になって通うりょうたのと違うかな。俺様が通っているのだ、そこら辺りの木の葉のように漂っている小船たち「邪魔だ邪魔だ」と言わんばかりに通うりょうたのと違うかな。
「どうぞお先にお通りぐださい」
と言うのが当然とばかりに船を運航させていたその心が見え見えだ。ありゃどう見ても自衛艦がわりい。言い訳ばかりしている。でも、言い訳をすればするほど、粗が出てき自分達がこまっとるじゃろうが。あのことを言うておるのじゃ」
「へえ。そりゃ何のことですか」
と私。
「ああこれか。これはその紙に書いてある言葉の意味じゃ。鴨の脛はあるかないかぐれえ短こうても、じゃあ、と言って長くしてやったら鴨はこまるばかりじゃ。それと同じで、言い訳ばかりしておったら結局自分が困るばかりになると言うためしだ。わははは・・・」
と、これまた例の高笑いを聞きながら彼の家を辞しました。
なお、この言葉は彼によると「荘子」の中にあるのだそうです。念のために。
この小寺清先という人について調べているうちに、高尚先生と同門の人に「鳧翁」という奇妙な字を持つ先生がおられることが分りました。
辞書でも分るのですが、この字について教えてもらいがてらに、久しぶりに例の漢文の先生に会ってもいいと思い訪ねました。
鳧という字についてです。「フ」と読み、「かも」「けり」という鳥のことを言うのだそうです。けりという鳥がいるのかどうかは知りませんが、「けりを付ける」というのは、本来は「鳧(けり)がつく」であって、和歌などに見える助動詞「けり」ではないという。またもや目から鱗です。
又、彼は言う。
「こんな言葉があるのを知っているか。君」
と、言って、紙切れに字を書いてくれます。
その紙切れには、彼の特長でもあるミミズが這ったようなお世辞にも上手だとはいえない字で、堂々??と書いてくれます。でも、彼は、自分の書く字が世の中で最も美しい文字であると自負しているのですが、そこらあたりは私も大いに疑問です。
その紙には
「鳧脛雖短続之則憂」と書かれてありました。
「鳧脛短じかしといえども之を続がばすなわち憂う」と読むのだそうです
そして彼は、最近の事例として、この2、3日話題の中心になっている例のイージス艦「あたご」の事件を語りだします。
「大体、あの艦の自衛官がたるんでいる。アメリカの真似かどうか知らんが、実験かなんかで空行くミサイルをたった一回打ち落としただけで『成功した成功した』と有頂天になって、錦を着て故郷に戻るような気分になって通うりょうたのと違うかな。俺様が通っているのだ、そこら辺りの木の葉のように漂っている小船たち「邪魔だ邪魔だ」と言わんばかりに通うりょうたのと違うかな。
「どうぞお先にお通りぐださい」
と言うのが当然とばかりに船を運航させていたその心が見え見えだ。ありゃどう見ても自衛艦がわりい。言い訳ばかりしている。でも、言い訳をすればするほど、粗が出てき自分達がこまっとるじゃろうが。あのことを言うておるのじゃ」
「へえ。そりゃ何のことですか」
と私。
「ああこれか。これはその紙に書いてある言葉の意味じゃ。鴨の脛はあるかないかぐれえ短こうても、じゃあ、と言って長くしてやったら鴨はこまるばかりじゃ。それと同じで、言い訳ばかりしておったら結局自分が困るばかりになると言うためしだ。わははは・・・」
と、これまた例の高笑いを聞きながら彼の家を辞しました。
なお、この言葉は彼によると「荘子」の中にあるのだそうです。念のために。
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