![]() | 百年前の山を旅する |
服部文祥 | |
東京新聞出版局 |
服部文祥の新刊「百年前の山を旅する」を読む。過去二作のサバイバルシリーズとは若干異なり、昔の登山家や荷役衆の足跡をたどることで、現在の登山や文明のあり方に批判的な視点を投げかけている。ただ山に登るとはどういうことかを考えている点は同じだ
あいかわらず秀逸な山岳ルポには脱帽。資料の読み込みや古い装備のことを詳しく調べる能力にも驚いた。ただ単に詳しく情報を引き出すだけにとどまらず、調査で知り得た昔の登山行為や冒険行の意味を物語に転換させている視点が鋭い。さらにそれが面白いところに、もっと感心させられる。情熱大陸しか見てない人は、ただの危ない人という印象を受けるようだが、著書を読むと、頭のいい危ない人であることがよく分かる。
登山のルポは難しい。確固たる視点を持たずに山に行っても、そこには基本的に自然しかなく、対自然は対人間と違いやりとりがないため、文章にメリハリをつけるのが難しいのである。服部さんの山岳ルポが面白いのは、自然と対話し、そこから読者をうならせる発想を得ているからだ。
近くにこういう文章がうまい人がいると本当に困りもんだ。栗城くんの本を読んで登山のことを勘違いしてしまった人は、服部さんの本を読みましょう。
話は変わるが、本の雑誌がWEBで「空白の五マイル」の記事をアップしてくださいました。ありがとうございます。
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NEWS本の雑誌
http://www.webdoku.jp/newshz/azuma/2010/11/17/100259.html
杉江由次さんの「帰ってきた炎の営業日誌」
http://www.webdoku.jp/column/sugie/2010/11/17/104057.html