ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

馬脚

2010年11月21日 15時49分45秒 | 雑記
集英社が主催する文学賞四賞の贈賞式が19日に帝国ホテルであり、憚りながら、わたしも開高健ノンフィクション賞の受賞者として出席した。受賞作は18世紀以来の地理的課題であるチベットのツアンポー峡谷の探検記。選考委員を代表して佐野眞一さんからは「絶滅危惧種」「バカ」との、ありがたい言葉をいただいた。うれしい限りである。

実は7月に受賞が決まった時、選考委員の先生がたに呼び出されて打ち上げの場にかけつけたことがあった。その時、わたしは板橋にあった弟の坦々麺屋でメシを食べていたので、当然、破れたジーパンにTシャツという普段着姿でお邪魔した。そのみっともない姿を見て、同委員田中優子さんから「あなた、式の時はちゃんとした服を着ないとダメよ。それが一番大事なことなのよ」と諭された。

ということもあり、今回は式に臨むため、わざわざジャケットにシャツ、パンツを新調した。基本的にわたしはファッションというものにやや疎いので、店員さんに、これこれこういう事情でパーティー用の服装が必要なのであると説明し、上から下まで現在のトレンドから見ても恥ずかしくないコーディネートをしてもらった(油断していると二万円のベルトまで買わせようとするので恐ろしい)。

式の前日夜、一応、もう一度試着してみるかと思い、わたしは部屋の中で新装した洋服を着用し、鏡の前に立ってみた。はだしだと違和感があるので、靴を履いてみようと思った、その瞬間に思いだした。あ、靴買うの忘れた。家には記者時代に履いていた黒の皮靴があったが、5年以上使っているで、中学校の先生の靴みたいに擦れてぼろぼろである。昔、結婚式の引き出物でもらった皮靴用のオイルを塗って磨いてみたが、擦れたところは当然、ぼろいまま。でも靴なんか誰も見ねえか、と思い、翌日そのまま出席した。別に誰からも、角幡君、靴だけぼろいね、などとは言われなかったが、翌日家族からはやはり指摘を受けた。

こういうのを馬脚をあらわすというのだろう。



高野秀行さんとの対談が集英社のPR誌「青春と読書」12月号に掲載されています。書店などでお求めください。

もうひとつお知らせ。本日NHKスペシャルでツアンポー峡谷の運搬人をドキュメントした「天空の一本道」(午後9時~)が放映されます。ぜひご覧になってください。

http://www.nhk.or.jp/special/
コメント (4)
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