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今ではほとんど目にすることもなく、耳にすることもなくなってしまいましたが、90年代中頃によくマスメディアで取り上げられた
日本発の「トリレンマ」という概念をご存じでしょうか?
この概念の源になったと考えられる、依田 直 監修「トリレンマへの挑戦 人類、いま選択のとき」(1993年 毎日新聞社刊)のまえがきには、「
人類は経済成長、エネルギー・資源、環境の三者の間のトレードオフ、つまりトリレンマの状況に直面している。これを生み出してきたものは、産業革命以来の資源エネルギーを軸にして発展してきた、大量生産・大量消費・大量廃棄の現代文明そのものである・・・これをこのまま放置すれば、この数世紀のうちに人類は滅亡の危機にさらされかねない・・・」と書かれています。
要約すれば、「人類の将来は現行の産業経済システムシステムの更なる拡大の方向にはない」というわけです。
“トリレンマ”という命名には疑問を感じますが、この認識は私の認識と基本的に一致します。
この三つの中で、私たち人間が自らの意志でコントロールできるものは「経済活動」だけです。他の二つは経済活動の大小と連動しますので、この三つの関係は
「トリレンマ」ではなく、「
因果関係」であるというのが私の主張です。経済成長(20世紀型の経済活動の拡大)が資源とエネルギーを要求し、環境への負荷を増大するのです。
この三つの関係を
人間の願望を前提にして現象面から見れば、確かに、対立している(トリレンマの状態にある)ように見えないこともありません。この本の帯に、京都大学経済研究所長の佐和隆光さんがつぎのような「推薦の言葉」を寄せておられます。
トリレンマとは実によくできた言葉だと思う。誰にもジレンマの経験はあるが、トリレンマの経験を自覚した人はまずいまい。しかし地球環境問題が私たちに問うているのは、まさしくトリレンマの克服、「環境を保全しつつ、有限な資源・エネルギーを分かち合い、持続可能な経済発展をかなえるにはどうすればよいか」なのである。新鮮な問題意識のもとに編まれた本書は、エネルギー、環境、経済を一挙に学べる絶好の入門書である。
私はこの「トリレンマという日本の概念」に疑問を持っています。このトリレンマのような、「新たに提案された基本的な概念」は提案者以外で議論し、その妥当性を吟味しなければなりません。
ここでいう「トリレンマ」というのは「経済成長」、「エネルギー・資源」および「環境」の三者の間のトレードオフを意味するのだそうですが、私に言わせればこの関係はトリレンマではなくて、
単なる「ジレンマ」であって、「経済成長(エネルギー・資源を使う)を行いたいということ」と「環境汚染が進むこと」の因果関係に過ぎないと思います。
つまり、「経済成長」という言葉が「従来型の経済の量的拡大」を意味するのであれば、経済成長をするために「エネルギー・資源」が消費され、「環境」への負荷が高まるのです。逆に、「経済成長」を抑えれば、「エネルギー・資源」の消費は抑えられ、「環境」への負荷も低くなります。
不況が続けば、生産量が抑えられ、エネルギー消費が減少し、廃棄物の発生が減少することを私たちは経験的に知っています。
十分な議論がないままにその概念を不用意に使用すれば、将来の方向を誤ることになりますし、問題の解決を困難(複雑)にします。概念が異なれば、対応が異なるからです。日本では将来を見据えた基本的な概念づくりが不得手であるため、十分な議論のないまま不十分な概念が、一人歩きする傾向があります。
この本の112ページには、つぎのような記述があります。
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トリレンマは、グローバルな広がりをもつ問題である。トリレンマの克服に向けて重要な課題の一つは効率のよいエネルギー利用技術と環境保全技術の開発と普及にある。
日本はこれらの技術分野で世界第一級の水準にあり、グローバルな省エネルギーと環境保全のためには、日本の技術が重要な鍵を握っている。
経済企画庁の試算によれば、先進国の主要製造業と電力産業が、日本国と同レベルのエネルギー消費効率を達成した場合、そのエネルギー消費とCO2 排出量の二割を削減することができる。また、
旧ソ連、東欧、中国などの発展途上国に適用すれば、約5割の省エネルギーが可能である(2010年委員会報告)。
一般に発展途上国では、石炭への依存度が高い上にエネルギーの技術効率が低く、環境対策も遅れている。このため、SOxや煤じんによる大気汚染が深刻な問題になっている。
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また、154ページには、つぎのような記述があります。
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日本の1人当たりエネルギー消費量は石油換算で2.2トン、米国の約5分の2であり、日本は世界に冠たるエネルギーの利用効率の高さを誇っている。
その要因の一つとして人口密度の高さが効いている面がある。
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このような考え方は
日本のコピーを世界に作れということと同じではないでしょうか?
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