環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

対照的な日本とスウェーデンの「債務残高」と「国民負担率」

2007-03-18 16:16:24 | 政治/行政/地方分権


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3月16日のブログで、21世紀前半の日本の国づくりを議論するとき、議論を混乱させる二つの指標があるという話をして、「国民負担率」と「環境効率」をあげました。そして、「国民負担率」という概念は日本独自のもので、専門家の間でも疑問が多い概念であることをお話しました。

現在発売中の月刊誌「文藝春秋」(2007年4月号 p384~391)が、「財政再建 特別鼎談 『成長なくして財政再建なし』の理念で編成した平成19年度予算」と題して、新政権になって初となる平成19年度予算の特長と日本の財政事情などについて、尾身幸次財務大臣、財政制度等審議会会長を務める西室泰三さん、フリーアナウンサー・酒井ゆきえさんの鼎談を掲載しています。

この記事の中に、「債務残高(GDP比)の国際比較」「国民負担率(国民所得比)の国際比較」の最新の状況を伝える図が掲載されています。両方の図から、日本とスウェーデンを比較できるので、参考になると思います。両国の現状が極めて対照的であることが読み取れます。

尾身さんはつぎのようにコメントしています。
国と地方を合わせると770兆円くらいの借金があるんです。これは、日本のGDPに対して148%。こんなに借金のある先進国は日本だけで、2番目に借金が多い国が、121%のイタリア。アメリカ、ヨーロッパの先進国は、大体50%から70%なのです。

他方で、ここは非常に大事なところなのですが、国民負担率、これは、税金と、年金、医療保険、失業保険等の掛け金を全部合わせて、所得のうちからいくら払うかというものですが、これは日本は39.7%です。


尾身さんはつぎのようにコメントしています。
高福祉の国スウェーデンは70%。その代わり医療費も学校もほぼタダ、年金もかなりもらえるというので、老後は安心なんです。これが「高福祉-高負担」。ヨーロッパの国が「中福祉-中負担」。西室会長は、財政制度等審議会の会長ですが、審議会がこの前、日本は「中福祉-低負担」だという報告を出したんです。そうすると、日本は、「中福祉-低負担-高借金」

私のブログでは「少子・高齢化問題」「環境問題」の2つを21世紀前半に人類が人類史上初めて経験する大問題であると位置づけています。そして、どちらも、私たちの社会をこれからも持続させることができるかどうか、また、つぎの世代に引き渡すことができるかどうかに、深くかかわっています。

この2つの大問題を同時解決するために、スウェーデンは「福祉国家」から「緑の福祉国家(生態学的に持続可能な社会)」への転換を図っているのです。「少子・高齢化問題」に対しても、「環境問題」に対しても、日本とスウェーデンの間には顕著な相違があります。この相違は「問題に対する認識の相違」によるものです。



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1970年の大阪万博のスカンジナビア館

2007-03-18 04:56:22 | 環境問題総論/経済的手法
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37年前の1970年3月14日、大阪万博が開幕しました。今になって考えてみると1970年代は先進工業国にとって「高度経済成長期」から「次の新しい時代」への転換期だったのではないでしょうか。

いま、北欧諸国が「持続性」において高い評価を得ている背景には、長年にわたって培われてきた、科学技術に対する考え方があります。米国や日本とは異なる科学技術観は、1970年に「人類の進歩と調和」をメイン・テーマに開催された大阪万国博覧会の展示にも見て取ることができます。

「人類の進歩と調和」はきわめて今日的な標語ですが、当時は、日本をはじめとしてほかの多くの国々で、「技術の進歩はバラ色の未来を約束する」という考え方が支配的でしたので、さまざまな科学技術の華やかな面が展示されていました。
 
たとえば、米国はアポロが持ち帰った「月の石」を展示しました。美浜原発から送られた電力によって、万博会場に「原子の灯」がともったのも、このときでした。

こうしたなかで、北欧諸国の考え方は大きく異なっていました。スウェーデンを中心とする北欧諸国は、 「科学技術には必ずプラスとマイナスの両面があり、将来、このまま科学技術が拡大する方向で社会が進んでいけば、科学技術のマイナス面が増えて、環境への人為的負荷が高まる」と考えたのです。
 
そこで、無制限な人間活動の広がりは環境への負荷を高めるという観点から、北欧諸国は協力して、「産業化社会における環境の保護」をテーマに掲げたパビリオン「スカンジナビア館」を建てました。このパビリオンの目的は、地球上の問題に、未来の世代の人々の注意を促すことでした。

スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、アイスランドの北欧五カ国がこの万博のために積極的な協力体制を敷いたのは、国境のない問題に永続的に協力して取り組む姿勢を示そうと望んだこと、環境問題は地域的な範囲を越え、世界的な規模で解決に当たらなければならないことをアピールしようと考えたこと、などの理由によるものです。
 
パビリオンの正面には、図に見られるように、「+と-」のシンボル・マークが鮮やかに刻まれ、パビリオンの内部では、人間の生活を豊かにした数々の発明や発見、労働災害や公害といった、プラスとマイナスの具体的な事例が7200枚のスライドと写真、パネル、映像を通して、パビリオンを訪れる人々に語りかけられました。



 

これは、科学技術が発達すれば、言い換えれば、人間活動が拡大すれば、それによって、環境への人為的負荷が高まることを警告したのです。この時期にすでに、北欧諸国は「今日の地球環境問題」に警鐘を鳴らしていたことがわかります。

いまから37年も前のことでした。当時のこの認識は、2000年以降に国際的に認識されるようになった「持続可能な開発」の概念へと発展していったと考えてよいでしょう。
 
しかし、こうした先進的な認識が、当時の日本では、専門家にすら理解されなかったようです。知人の玉置元則さん(兵庫県公害研究所研究員)が雑誌「環境技術」(1995年11月号)に、つぎのような主旨の解説記事を書いておられます。

昭和45年(1970年)夏の頃、大阪千里丘陵で万国博覧会が開催されていた。種々の催し物が行われる片隅でスウェーデン館(小澤注:スカンジナビア館)では一つの講演があった。一人の研究者が「英国の工業地域から排出された大気汚染物質がスカンジナビア半島の松を枯らしている」と力説していた。また、その講演のなかでは、今でいう「環境の酸性化」の概念が具体例とともに説明されていた。しかし、招待された日本の第一線の研究者や行政担当者はただ唖然として聞くのみでその意図することが理解できないようであった。



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