環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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2004年 五輪招致をめざしたストックホルム市 

2007-03-23 08:37:23 | 巨大構造物/都市/住環境


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昨日、3月22日、第16回統一地方選挙の知事選が13都道府県で告示されました。注目される東京都知事選の立候補者数は最終的には14名だそうです。問題山積の都知事選の大きな争点に「2016年の夏季五輪招致」が徐々に浮上してきました。

この争点で思い出すのは、10年前の1997年8月にスウェーデンの首都ストックホルム市が「2004年の夏季五輪招致」をめざしていた頃のことです。私は、当時、1997年4月4日から10月3日の半年間、毎週金曜日に、日本工業新聞に「小沢徳太郎のグリーン時評」と題するコラムを持っていました。今日は、10年前に私がこのコラムにどんなことを書いていたのか、再録を試みます。

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日本工業新聞 1997年8月8日(金)

“環境にやさしい五輪”の誘致  日本vsスウェーデン

前回のコラムで、設備投資計画や公共事業計画が「循環型社会(小澤注:私は、当時「持続可能な社会」と「循環型社会」をほとんど同義語として理解していたのですが、日本で2000年5月に成立した「循環型社会形成推進基本法」の定義によって、両者は似て非なる概念であることを知り、それ以後 私は両者を意識して使い分けています)へのソフト・ランディング」をめざしたものかどうかを、計画の段階で判断するために、スウェーデン政府の環境諮問委員会が提示した6つの条件を紹介した。この判断の基準を適用するのに格好のテーマがある。

2004年夏季五輪招致をめざすストックホルム市は、「環境にやさしい五輪」を提案している。その一環として、各国の代表団の宿泊先となる予定の新しい住宅地区の建設事業が進行中である。

バルト海とメラーレン湖を結ぶ水路に沿った産業地区ハンマビー港を循環型社会のモデル地区に転換するこのプロジェクトは、先端的なエコ技術を育てながら建設し、五輪の開催で世界の注目を集め、育てたエコ技術の輸出も狙っている。

このプロジェクトの大きな目標は、施設の建設時および建設後の使用期間中の環境負荷を現在の半分にすることで、エネルギー、水利用、交通、建材など各分野の具体的な目標が設定されている。

一方、7月22日付けの日本経済新聞によると、横浜・神奈川総合情報センターがまとめた2008年に横浜で五輪が開催された場合の経済波及効果の試算では、観客500万人を見込み、経済効果(生産誘発額)は全国で5696億円。既存施設を活用する横浜市の方針があるので、経済効果はサービス業が最も大きいそうだ。

また、98年の長野冬季五輪については長野県内で2兆3244億円(長野経済研究所)と見ているが、その9割前後は建設投資によるものと言う。

長野五輪も“環境保護”を掲げてはいるが、事業者とその周辺の意識は相変わらず従来の発想と変わりないようである。2つの国の環境問題に対する意識とその意識に基づいた行動計画との落差は大きい。

これまで、マスコミはこの種のイベントが日本経済全体あるいは地方経済にどの程度の経済波及効果をもたらすかを経済成長の観点から大々的に報道してきた。 今後は、経済波及効果と共にイベントの準備期間および会期中に発生する「廃棄物の総量」と「その処理に要する費用」の試算結果を公表したらどうだろうか。

この種の情報が事業者によって「経済誘発効果」と共に提供されるか、マスコミ独自の調査によって積極的に国民に提供されるようになれば、国民の問題意識も大きく変わる可能性が出てくると思うのだが。
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なお、このコラム記事には続報(9月12日)があります。私は9月12日のコラム記事で、この記事の顛末をつぎのように書きました。

8月8日のコラムで取り上げた2004年夏期五輪は今月5日、アテネに決まり、ストックホルムへの招致は実現しなかったが、ストックホルム市の「循環型社会(小澤注:現在の私の理解では「持続可能な社会」)のモデル地区プロジェクト」は、もともと五輪招致を目的に計画されたプロジェクトではないため、五輪にかかわりなく進められる。




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