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日本で環境問題にかかわる最も基本的な法律といえば、1967年制定の「公害対策基本法」で、それが93年に「環境基本法」に置き換えられました。法律だけではありません。74年3月に発足した「国立公害研究所」が、日本独自の概念である「地球環境問題」に対応するために、90年7月から「国立環境研究所」と改称したのにともなって、多くの地方の「公害研究所」が「環境研究所」と看板を書き換えています。
そして、その典型的な例が日本の「環境白書」です。白書というのは政府が国会に提出する年次報告で、その名のとおり、白表紙の報告書です。私の手元にある「環境白書」の最も古いものは「昭和50年版環境白書」で、第4回目の環境白書です。この環境白書の「はしがき」を見ますと、「この環境白書は、公害対策基本法第7条の規定に基づき政府が第75回国会に提出した『昭和49年度公害の状況に関する年次報告』及び『昭和50年度において講じようとする公害防止に関する施策』である」と書いてあります。
つまり、環境白書の内容は、この「はしがき」が述べているように「公害の状況に関する年次報告」であり、「翌年度の公害防止に関する施策」なのです。このことは政府が国会に提出した白表紙の報告書を表紙だけ変えて、「環境白書」の名で「公害白書」を市販していたことになります。
この状況は1993年発行の「平成5年版環境白書」まで、なんと20年以上も続いてきました。
94年6月発行の「平成6年版環境白書」の「はしがき」は、「この環境白書(「総説」「各論」)は、環境基本法第12条の規定に基づき政府が第129回国会に提出した『平成5年度環境の状況に関する年次報告』及び『平成6年度において講じようとする環境の保全に関する施策』である」と記されており、ここに初めて、形式的には「表紙」と「内容」が一致したことになります。
しかし、「公害」と「環境問題」を同義語として用いるのは明らかに誤りであるし、日本の認識不足だと思います。
いま、私たちが直面している「環境問題」は、過去の公害のように企業と住民(被害者)が対立するのではなく、国民の間に協力体制ができないことには、解決はおぼつきません。いずれにしても、日本で早急になすべきことは国民各主体の間にこれまでのような「公害への共通認識」ではなく、「環境問題への共通認識」を育て上げることです。
十分な「環境への共通認識」が育っていないうちに、不十分な「環境基本法」のもとでいろんな立場にある人々がそれぞれに「自立的な取り組み」(「それぞれができることから始める」とか「身近な所から始める」といったような)を求めることは、環境への負荷をさらに高めることになりかねません。