環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

日本の経済論・技術論の最大の欠陥 

2007-01-30 21:52:50 | 経済


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書店には21世紀の日本経済や科学技術を論ずる雑誌や書物が溢れています。これらの著者の多くは評論家あり、自然科学系あるいは社会科学系の大学教授あり、エコノミストあり、ジャーナリストありと多彩ではありますが、これらの著者に共通していることは21世紀の経済や科学技術の行く末を論ずる際に、工業化社会の経済の将来を左右する最も重要な要因である「資源・エネルギー問題」や「環境問題」の視点がまったくといってよいほど、欠落していることです。
このことは、今なお経済学の基本的な枠組みが、生産の基本的要素として「資本」、「労働」および「土地」、あるいは「技術」を掲げていることからも明らかです。

21世紀の経済や技術を論ずる経済学者やエコノミストの議論もこの枠組みを超えるモノではありません。大学で講じられている経営学は企業や組織を学問の対象とし、「戦略論」「組織風土論」、「知識創造論」、「リーダーシップ論」、「ゲーム論」などを展開してきましたが、いまなお、企業活動に必然的に伴う「資源・エネルギー・環境問題」に踏み込んでいません。

試しに、近くの書店に立ち寄って平積みになっている新刊書の目次を眺めてみたらよいでしょう。経済、ビジネス関係の書物や科学技術の書物で、ここで指摘したような視点を持った書物を容易に捜し出すことができるでしょうか。ぜひ、お試しになって下さい。
   
経済関係の書物でも、特に、将来の経済の方向性を議論しているもの、具体的には「21世紀」を冠した書物で、「資源・エネルギー問題や環境問題」に基礎を置いてない経済議論は絵に書いた餅のようなもので、バーチャル・リアリティ(仮想現実)の世界です。

書物だけではありません。テレビの討論番組も、著名なエコノミストや一流コンサルタントによる経済に関する高価な有料セミナーも・・・・・・

安倍首相の「イノベーション」

2007-01-30 12:18:37 | 政治/行政/地方分権


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安倍首相の施政方針演説には「イノベーション」という言葉が5回も出てきます。活字で見るとあまり目立たないのですが、テレビでの演説を聴いていると私にはこの言葉が強く印象に残りました。この言葉は、いままでは主として、産業部門や経営部門で好んで使われてきたので、イノベーションという言葉には「技術革新」という日本語が当てられています。

時代の動きに合わせて、「イノベーション」という言葉の意味も「技術」を対象とするだけでなく、いろいろな分野へ広がってきました。例えば、2006年5月4日付けの毎日新聞の1面コラム「余録」に「政治の世界のイノベーション」という言葉が出ていました。



このコラムの前半は、サッチャー政権の誕生について書かれています。後半は北欧諸国の政治システムに触れています。そして、「いま、政治システムで最先端にあるのは北欧諸国のような気がする。経済、教育、社会保障、環境問題への対応、どの指標をとっても世界のトップクラスにある。北欧諸国はすでに他の国々が気付いていない道を歩み始めているのではないか」と興味深い記述があります。

サッチャー政権の誕生とその成果が政治の世界のイノベーションというのであれば、そのイノベーションは「20世紀型の経済成長」を支える政治のイノベーションでしょう。北欧諸国の政治システムは国によりそれぞれ異なりますので、北欧諸国と十把一絡げに論ずるのにはやや抵抗がありますが、スウェーデンの政治システムそれ自体は、サッチャー政権の80年代のシステムと基本的には変わらないと思います(進化はあったでしょうが)。

重要なことは、北欧諸国が相対的に他国よりもすぐれた「民主主義の手続きを基本にした合意形成のシステム」と「政治システム」を用いて、他国よりも早く、21世紀にめざすべき新しい社会を構想し、国をあげてその実現に向けて努力していることでしょう。

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EIUの民主主義指標 成熟度が高い民主主義国の1位はスウェーデン(2007-08-18)


安倍政権に切に望みたいのは、20世紀の政治システムの改良ではなく、21世紀をはっきり意識した新しい政治システムの構築です。20世紀の政治システムの改良であろうと、21世紀を意識した新しい政治システムであろうと、真っ先に取り組むべきは長年の課題である「行政の縦割り構造の改革」ではないでしょうか。