東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

七面坂(谷中)

2012年07月25日 | 坂道

岡倉天心宅跡 七面坂下 七面坂下 七面坂下 前回の蛍坂を遠景できる広場からもどり右折し北へ進むと、途中、一枚目の写真のように、岡倉天心宅跡・旧前期日本美術院跡のある公園を右に見て、さらに進むと、やがてT字路に至るが、ここを右折すると、七面坂の坂下である。

二枚目は坂下から坂上側を撮ったもので、かなり緩やかに東へ上っている。右側の塀の向こうは長明寺である。三枚目は坂下から上って左にちょっと折れ曲がる手前から坂上側を撮ったものである。四枚目はそのあたりから坂下側を撮ったものである。この坂道は日暮里駅方面へ抜ける道のためか、車の交通量が多い。

坂下を右折せずそのまま直進すると、すぐ次の四差路の左右が人通りの多い谷中銀座の通りである。人通りだけを考えると、この坂は裏道、脇道のようになっている。

七面坂中腹 七面坂中腹 七面坂中腹 七面坂中腹 一枚目の写真は中腹の折れ曲がりから坂上側を撮ったもので、二、四枚目は、さらに進んでから坂上を撮ったものである。このあたりは坂下よりも勾配がついているが、中程度といったところである。三枚目は、そのあたりから坂下側を撮ったもので、坂下の寺に墓とたくさんの卒塔婆が見える。

この坂は、ちょうど、台東区谷中五丁目と荒川区西日暮里三丁目との境界になっていて、坂下から見て台東区側の右端(南側)に坂の標識が立っていて、その反対側に荒川区の標識が立っている(二枚目、下一枚目の写真に写っている)。前者には次の詳しい説明がある。

「七面坂(しちめんざか)
 宝暦年間の『再校江戸砂子』に「宗林寺前より七面へゆく坂」とある。宗林寺(台東区谷中三-一〇)は坂下にあるもと日蓮宗の寺、七面は坂上の北側にある日蓮宗延命院(荒川区西日暮里三-一〇)の七面堂を指す。七面堂は甲斐国(山梨県)身延山久遠寺の西方、七面山から勧請した日蓮宗の守護神七面天女を祀る堂である。
 坂は『御府内備考』の文政九年(一八二六)の書上によれば、幅二間(約三・六メートル)ほど、長さ五十間(約九十メートル)高さ二丈(約六メートル)ほどあった。
 なお宗林寺は『再校江戸砂子』に、蛍の所在地とし、そのホタルは他より大きく、光もよいと記され、のちには、境内にハギが多かったので、萩寺と呼ばれた。
  平成六年三月        台東区教育委員会」

七面坂上 七面坂上 七面坂上 根岸谷中日暮里豊島辺図(安政三年(1856)) 一枚目の写真は、坂上側から坂下を撮ったもので、二枚目はそのあたりから坂下を撮ったもので、坂上側では緩やかになっていることがわかる。坂上で谷中銀座から御殿坂へと続く通りと合流する。三枚目は、さらに坂上側から坂下を撮ったものである。

四枚目の尾張屋板江戸切絵図 根岸谷中日暮里豊島辺図(安政三年(1856))の部分図を見ると、蛍沢のあった宗林寺の前の道を右折し東へ進む道がこの坂である。坂上北側に延命院七面とある。下三枚目の御江戸大絵図(天保十四年(1843))の部分図には七メンとあるだけで、近江屋板には同じ位置に七面社とある。

この延命院は現在、坂上の谷中銀座からの通りの北側にあるが、この坂はこのあたりが坂上であったのであろう。

『御府内備考』の「谷中之一」の総説に、「七面坂 御殿坂の通りにて西へ下る坂を云、」とある。上記の標識で引用の説明は七面前町の書上である。

七面坂上 七面坂上 御江戸大絵図(天保十四年(1843)) 一枚目の写真は、坂上から東側を撮ったもので、谷中銀座からの通りの向こうに延命院の参道らしき所が見える。二枚目は谷中銀座からの通りを横断し坂上を撮ったもので、この坂上は谷中銀座からの通りに吸収されたように見える。

『江戸名所図会』に、七面大明神社が「同所延命院といへる日蓮宗の寺に安置す。開山日長人、万治三年[1660]庚子正月十六日、夢中に霊告を得て、後勧請すといへり。」と説明されている。立願には、面七つ、また鏡七つをかけるという習慣があった。八百屋お七の母親が新願をこめ、一女を得て、お七と名付けたという伝説があるという。

麻布十番の近くにも同名の坂がある。
(続く)

参考文献
横関英一「江戸の坂 東京の坂(全)」(ちくま学芸文庫)
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
「嘉永・慶応 江戸切絵図(尾張屋清七板)」(人文社)
市古夏生 鈴木健一 編「江戸切絵図集 新訂 江戸名所図会 別巻1」(ちくま学芸文庫)
デジタル古地図シリーズ第一集【復刻】江戸切絵図(人文社)
デジタル古地図シリーズ第二集【復刻】三都 江戸・京・大坂(人文社)
「大日本地誌大系御府内備考 第二巻」(雄山閣)
「東京人 特集 東京は坂の町」④april 2007 no.238(都市出版)
「江戸名所図会(五)」(角川文庫)

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