東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

明治坂~日東坂

2010年10月15日 | 坂道

蜀江坂を下り、商店街の通りを左折し、次の信号を過ぎてから、左折すると、ここの通りも下町らしい商店街であるが、やはり閉じている店が多く、さびれた感じである。

ちょっと歩くと、左手に明治坂の標柱がみえるが、ここが坂下である。右の写真のように、細い坂が曲がりながら延びている。真新しい標柱には次の説明がある。

「めいじざか むかしから存在していた道であるが、明治坂と呼ばれたのは、大正初年からであると伝える。」

むかしから存在していた道とあるので、尾張屋板江戸切絵図をみると、「イナリ」神社を回る道があり、そこからさらに左に続く道があるが、そのあたりであろうか。

明治地図をみると、雷神社の近く西に延びる道があり、その途中に北側に延びる道があるが、ここであろう。戦前の昭和地図には、坂下の通りと、明治坂がみえ、坂名もちゃんとのっている。

今回の白金の坂巡りでは、この明治坂にもっとも興味があり、楽しみにしていた坂であった。というのは、以前、ここにきたとき、細くうねりながら下っていて、むかしながらの雰囲気が残ったよい坂という印象が強く残っていたからである。周囲の家々の雰囲気もよかった。

そのときは蜀江坂上からたどってきて下ったので、今回、坂下からアプローチしたのである。

前回きたとき、心配なことが一つあった。それは、この坂の下りに向かって左側でマンション工事が始まっていたことであった。

坂下では、上右の写真のように、細く曲がって坂が続く感じで、以前と同じような雰囲気である。坂下から右に曲がって進み、曲がったさきあたりから坂上を撮ったのが上左の写真である。細い坂が続いているが、この上ではそうでなくなる。坂下では緩やかであったのが次第に急になってくる。

右の写真は坂の中程から坂上側を撮ったものである。

道幅が拡がり、歩道が右側にでき、以前の坂道がどこであったのかわからない。坂下と同じ坂とは思えないほど変わっている。心配していたことが的中した。

坂のこれほどまでの改変前後を眼のあたりにしたのはこれが始めてである。

このような変化は、坂巡りを始める前に同じようなことがあってさんざん感じたことで、すでに耐性ができており、いまさら驚くにあたらないことであるが、それでもやはり残念である。

ここでちょうど変わる前後の坂をみることができたのも一つのめぐりあいである。これまで訪ね歩いてきた坂も、かなり変わった後のすがたをみているに過ぎないのであろうが、変わる前のすがたを想像できればまた坂巡りの楽しみも増えるというものである。

左の写真は坂上から撮ったものである。

写真の標柱の立っている右側の歩道が以前からの坂の位置のような気がする。それを左側に拡げたのであろう。

坂上でむかしの坂の一部が残り、中間ではそれが消滅しているようで、さらに坂下ではむかしのままの坂道である。このように、この坂は新旧混在型になっているが、そのため、むかしの坂道を想像するのは比較的簡単である。

この坂は坂下から上るのがよく、旧→新の変化を感じることができるであろう。これもまた一興である。

東京23区の坂道」で新しくなる前の明治坂の写真を見ることができる。

坂上を左手に進む道があるが、以前にきたとき通ったところと思われたので、ここに入ってちょっと歩いてみた。何回か直角に曲がるが、むかしながらの雰囲気のある通りである。この道の方がいまの明治坂よりも以前の雰囲気を残しているような気がする。

坂上にもどり、坂からの道を直進すると、かなりの下り坂になっている。

ここを下り、外苑西通りを横断し、そのまま進むと、日東坂の通りを横断するところにでる。このあたりが坂上である。

右の写真は、そこを右折した日東坂の通りで坂下側を撮ったものである。まっすぐに下っており、始め勾配はきつくないが、中腹から下側がちょっときつくなる。

写真右端に写っている標柱には次の説明がある。

「にっとうざか 日糖坂ともいい、日東紡あるいは日本製糖の用地があったからと伝える。大正初年に開かれたと推定される。」

ここも比較的新しい坂のようである。明治地図をみると、この道はまだないが、戦前の昭和地図にはある。しかし、その用地はどこかわからない。

左の写真は坂下から撮ったものである。坂下側でちょっと右に曲がっている。坂下にも標柱が立っている。

以前、このとなりの国立科学博物館附属自然教育園にきたことがあり、その帰りにうろうろしていたら、この坂にたどり着いた記憶があるが、今回は、そのとき以来である。

これまでほとんど休憩しなかったので、坂下のパン屋さんで珈琲休憩。
(続く)

参考文献
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
「古地図・現代図で歩く戦前昭和東京散歩」(人文社)
「古地図・現代図で歩く明治大正東京散歩」(人文社) 

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