ホワイトシェパード・アリエスの日々 ≪一雲日記≫

いつまでもどこまでも一緒に歩こう!

12月21日~25日

2019-03-09 | 11~12歳
最後の日々
続けて闘病記を書いてきましたが、終わりの日々にくるとやっぱりなかなか進むことができませんでした。穏やかで楽しかった日常や、一緒に出かけた思い出を杖にして自分を支えようとしてきましたが、アリエスの苦しかった日々を消し去るわけではなく、どうしても涙なく語ることはできません。

アリエスはいつも誠実に、一生懸命その日を生きていました。ヤケを起こすことも八つ当たりをすることも、嘆くこともしない。いつも優しい目のまま、家族が近くに来れば喜びを表し、気持ちよく世話を受け入れて、自分の生を堂々と生きました。本当に宝石より輝く一瞬の連続のように見えました。

しかしこのころには吐き戻しが頻回になり、痩せてきました。経口薬も入りにくくなって、ほかのルートからの投与を検討することになりました。それまでの経過では、危なっかしい時は優しい理性的なアリエスではなくて、貪欲に生きようとする本能のアリエスを引き出すことができれば乗り切ることが可能だと経験していました。それでおやつは硬いものを軽くひっぱりっこしたり、骨付き肉をかじらせたりもしました。貧血がいっこうに良くならず、歯茎は真っ白。腹水か出血かはわからないけど、上半身に比べてお腹から下はボリュームが多くなり、筋肉も落ちているのでとてもアンバランスになっています。でも供血犬から輸血を受ける適応までは下がっていないので、輸血すれば一時的には元気になるだろうとは思ってもどうすることもできませんでした。

ヒトならばそこまでやれば改善までいかずとも維持はできる。そのくらいの経口摂取状況であり充分な医療もできていたと思います。それでも事態は急に坂を転がり落ちて行くようになりました。イヌの1年はヒトの4年とのことですが、50kg越えの大型犬でアリエスの年齢では、一説には7年に相当するとも言われているそうです。仔犬の頃の成長も目を見張るようだったけど、その時間の流れを改めて見せられているみたいな速さでした。だとしたら、ヒトの集中治療の7倍もの手段とケアが必要になるということなのだろうか。違う列車に乗り並んで走り、やがて引き離されていってしまうような、冷酷とも思えるどうしようもなさでした。

父ちゃんは宗教も迷信も都市伝説もスピリチュアルも受け付けないけど、生命の神秘や不可思議さや、ほんの些細なことでバランスを崩して失われるはかない微妙さなどについて、非常に注意と敬意を払う人間です。だから、闘病している状態の写真は絶対に取らない。その人が、アリエスが旅立つ2-3日前から少しずつ撮影をしている姿を見ました。私自身は不安しかなかったけど、そんな素振りを見せれば持って行かれる気がして、まだなんとかなると自分を叱咤しながら過ごしていました。父ちゃんが写真を撮っているのを、「大丈夫だと思って撮ることにしたのかな、治ると思っているのかな」と危惧していました。しかし後で聞いたところによると、もはやこれ以上はしてやれることがない、でも追いつかない、と覚悟を決めていたからカメラを構えたことが分かりました。いつも撮るばかりで一緒の写真がない私とのショットや動画を、撮ってくれました。いったいどんな思いで穏やかな言葉をかけながら撮影したのだろうと思うと、言葉がありませんでした。それらはずっと見ることができず、つい数日前にやっと開いてみました。想像していた通り、アリエスの優しさに満ち父ちゃんの優しさに満ちた画像でした。