ホワイトシェパード・アリエスの日々 ≪一雲日記≫

いつまでもどこまでも一緒に歩こう!

遺伝子の旅・その2

2010-07-07 | 2~3歳
 母ちゃんは、より目に悩殺される!


 アリエスも、お父さんとお母さんから生命そのもの、DNAを引き継いだ。どちらから伝わったか確実なところでは、男子の彼は性染色体はXYで、Xはお母さん、Yはお父さんから。ミトコンドリアDNAについてはお母さんから。常染色体の「配分や混ざり具合」については謎であるし、同腹のきょうだいでも違っているから、互いに似ていたり似ていなかったりする。遺伝子多型の相違のほか彼に特異な変異もあるだろうし、本当の意味で「世界にたったひとり」であるわけだ。

 体質的にも内面的性質としても、弱い点や不都合な点というのはあるかもしれない。だが、私だって、いやいやヒト一般だってそういうものだ。それが遺伝であれ教育のせいであれ環境うんぬんであれ、今ある存在そのものを受け入れて仲良く暮らせればそれでいい。遺伝子的に完璧な生物などどこにもいないし、ある種の変異が、その時代その条件で生き延びるために有利であった可能性だってある。時代が変わって「良くない面」であったり「病気」と認識されたりすることは十分にある。血糖値が上がりやすい体質は、飢餓の時代には有利であったかもしれないのに、飽食の現代においては糖尿病として治療の対象となる。清潔きわまる都市生活の中では、対外的にヒマになった免疫システムは、必要の無いものにまで過敏に反応してアレルギーを引き起こすのかもしれない。

 私達人間は、大抵の場合は、遺伝子検査などせずに結婚したり子孫を増やす。もちろん優生学につながる思想を避ける倫理的な説明もあるが、それが本質的解決ではないと認識しているからという気もする。生命情報の伝達のしくみの精妙さは驚嘆に値するけれども、正確無比なわけではない。みんな、どこかに弱点や落ち度のあるDNAに、ウイルス感染の歴史の刻印を押され、伝達ミスや作成過程のアクシデントや誤作動の危機を乗り越えながら、ある意味柔軟に生きている。タンパク質の塊でなく生命体として生まれ出て、そのうえ生命を維持することの凄さ。

 暗号のような科学の言葉、それだけを見ていてさえ、ちゃんと理解はできなくても、生命やこの世界の神秘に打たれる。ましてやこの白いでっかいウサギ顔が、異種である私を家族と信じ笑いかけてくる、そんな時は、まさに胸を打ち抜かれるわけだ。