二週にわたってNスペ枠で放送された横山秀夫原作のドラマです。
リアルタイムで見て、一体これは何が言いたいのか何の話なのか全然掴めませんでした。
見直して、気になる箇所を繰り返し見て印象はガラリと変わりました。
二度目に見た時はこれが色々な話をつなぎ合わせてサスペンスに見せかけた話だと思いました。
大まかに言いますと、主人の青瀬稔という建築家に家の設計を頼みに来たのが吉野陶太です。
彼は青瀬に「あなたの住みたい家を建てて下さい」と奇妙な事を言います。
そして自分建てたい家を拘って造ったのが「ノースライトの家」です。
80坪の土地に3千万の家、その屋根には北からの日差しを取り入れた「ノースライト」と言う光の煙突を付けました。優しい穏やかな光が部屋に届きます。
稔のその家は建築の本にも取りあげられ、一目置かれるようになったのでした。
陶太が仙台で暮らしていた昔、彼の父親はタウトという(当時ナチスを逃れて日本に来ていた)ドイツの職人に傾倒して椅子を作る仕事をしていました。
その父親が森で捕まえた九官鳥を家に持ち帰り飼っていた所を、元の持ち主が引き取りに来ました。それが青瀬の父親です。
二人は九官鳥を巡って言い争いになり、青瀬の父は道から落ちて転落死してしまいました。
その事実を数十年後、父親から亡くなる直前に陶太が聞きます。そして陶太は相手の息子にお詫びをしたいと決心します。
しかし青瀬に帯するお詫びが変わっています。青瀬が何を望んでいるか、青瀬の元妻に会って聞き出すのです。どう考えても不自然です。
完成したノースライトの家に吉野一家は住んでいなく、変だと思った青瀬が色々調べ始めます。
そこにあった一脚の椅子(タウトの椅子)について調べ、また陶太の行方を捜します。
結局彼は見つかり、失踪の理由や元妻とよりを戻そうとしていたことなどが分かりました。
さらに建築事務所の社長岡嶋が挑戦しようとしたコンペの話や、それに関する賄賂疑惑、岡嶋の事故死が重なります。
別にサスペンスでも何でもなかったのです。陶太が青瀬に事実を話さずに妙な依頼をしたことがサスペンスになってしまった原因でした。
青瀬の元妻ゆかりはノースライトの家をとても気に入り数時間眺めていたと言います。
岡嶋は息子が本当の自分の子ではないと知り苦しんでいました。
が、息子がとても可愛く、息子に自分の仕事で何か残せるものを残したいと稔に話します。
その気持ちをかなえたいと思った青瀬はコンペに岡嶋のアイディアを全面的に取り入れノースライトを使った斬新な発想にしました。
それを全て無償でライバル会社に提供したのです。
陶太は妻との仲が壊れていますが、よりを戻すのはもう無理でした。
青瀬の元家族、二人の実家も平穏ではなく、母親が早く亡くなっています。
作者はこれらの家族が心では結ばれていた、と語りたいようです。岡嶋が書き残した「埋められない物を埋める…」は家庭、家族への努力の言葉なのでしょう。
体は別でも心は一つ「同心梅」というものがあると岡嶋に語らせています。
ノースライトの家はここに関わった様々な人の家族再生のきっかけ、象徴でもあるかのようです。
色々な話に気を奪われ気がつかなかったけれど、静かに流れていたのは夫婦関係であり、親子関係であり家族の姿だった。
それに気づきました。
2時間半では無理だったのか、それとも脚本が悪かったのか、原作が盛り込み過ぎだったのか、分かりませんが何度も見ないと理解出来ないのはちょっと勿体ないなと思いました。
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