今日の考え事〈applemint1104〉

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又吉直樹のドラマ「許さないと言う暴力について考えろ」の感想

2017-12-28 12:07:24 | ドラマ
摩訶不思議なドラマでした。
粗筋というものがなくて、雑然としたドキュメンタリーみたいだと思ってると、途中から妄想になり、はーっ?ふざけてるの?と戸惑います。
登場人物も誰が主役か分からない。
渋谷を題材にしたものを取れと言われて取材に走る中村ディレクターと、渋谷に集まる人々たち。取材は難航します。
幾ら取材しても、指の間から零れていく砂のように捕らえどころがないのです。
飲食店でクレームをつける人、謎のお婆さん、小説のネタを自分の経験のフリをして得々と話す50代の男、そして服を作りたいと言いながら作りもせず、先輩達と無為の日を過ごす女の子チエ。彼女の姉は売れっ子の漫画家。ふわふわした、足に地が付かない人。
中途半端で非常識な人たちが集まる町渋谷。そんな人達全てを呑み込んで息づく町なのでもあります。

売れっ子の漫画家の姉は、時々気になる言葉を発します。「変わってる人」と言われながら、このドラマの本筋をつぶやきで語ります。
コンプレックスに押しつぶされそうな妹。しかし姉は、妹の明るい色使いに刺激を受け、暗い絵柄を変えたと告げます。
いつになったら服を作るのか?と問われつつ先輩に言われるままに高価な服を買ったり、付き合いから抜け出せない。
自分の不甲斐なさに焦り、周りの人々の中に自分の姿を見いだし、徐々にやる気になり始めるちいちゃんなのでした。
彼女が昔の絵を見ていると、絵の中から色が飛び出して、町の中へ広がって行きます。パフュームのミュージックビデオみたい。
このように、急に妄想になったりコントになったり。ふわふわして取り留めがありません。
 
ホームレスみたいなお婆さんが急に現れて、ドラマの主題のヒントを投げかけます。
みんな勝手に生きすぎて、他の人の気持ちなど考えない、許せない社会になっている。
「なんで許せないんだろうね」
 
中村は取材を続けますが、どこに照準を当てていいのやら分からなくなっている。
小説ネタを吹聴する爺さんが増殖して中村を追いかけたり、突然女の子の時間が逆回転したり…
そして、チエちゃんは洋服を作り始めます。吹っ切れたように。
最後に宮本さんのお婆さんが出て来て、渋谷の町を見下ろしながら言います。
「あらゆるものを呑み込んでしまう優しさがこの町にある」「自分を傷つけながら生きるのは、苦しいんだけどね」
と。
 
なるほど、これが又吉の世界なのか。
一つとして結論を出さず、エピソードを書いている内にねじれていく。このとらえどころのなさ、奇妙さ。
このように屈折したものが文芸というジャンルにマッチしたのでしょう。
あまり面白くないドラマでした。…けれど、作者の世界観ということではありなのでしょうか。
これはちょっと冒険だったでしょうね、NHKの勇気に感心しました。