あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

樽状胸郭

2013-06-29 21:24:42 | Weblog
先日の方は僧帽弁の視野展開にかなり苦労しました。
いわゆる樽状胸郭のような方で胸郭の前後径が長く、本来ならばこういう方こそ、MICSが生きてくるところなのでしょうが、ICMとASRもあり、術式はAVR+MVP+CABG3本でしたので、正中切開で入りました。
SVC,IVCもぶらぶらにかなり剥離して、左房も奥まで切開しましたが、何をやっても見えず、なんとか後尖弁輪が見えるかどうかで、、、、しかも深くて持針器がぎりぎり。
これまで離断したことはありませんがよほどSVCを離断しようかと思ったぐらいで。
しかし、この程度はおそらく先人たちは経験済みなのかと、よく上司が苦労していたのを思い出します。以前の上司たちはSVC,IVCなどはほとんど剥離しないでやっていましたので、ほんとに助手側からは全く見えなかったし、術者もいつも見えない見えないと言ってやっていたのを思い出します。
それでも何とか、一針かけて、引っ張り出してはかけてで、なんとか見えてという感じでした。
不幸中の幸いは、麻酔導入後のTEEではtethering hightが8mm程度と思ったほど引っ張られてなく、弁尖も問題なかったので、弁輪縫縮のみでOKと判断できていたことです。
持針器はぎりぎり届きましたが、指は届かず、ノットプッシャーの出番です。まさか正中切開でノットプッシャーに頼るとは思いませんでしたが、指で深いところを結ぶことを考えれば、全くストレスなく、この時ばかりはMICSをやってて良かったなと思ったのであります。

反省点としては手間を惜しまず、経中隔切開で入ればよかったということ、持針器が届かずMICSの器械を準備しとけば、もう少し楽に運針できたかもということ。

ただ、一番は私の勉強不足+実践不足、これに尽きますね。
樽状胸郭なのは術前からわかるし、詰めが甘かったです。

EFは30%しかなかった方ですので、できるだけ心停止時間は短く120分ぐらいにしたいなと思っていましたが、下手くそな手術で遮断時間160分となり、半分以上は僧帽弁に費やしてしまいました。

念のため入れておいたIABPシースの出番もなく、止めてた割には立ち上がりは良好で、無事に目も覚めて問題なしなので、一安心です。

ビアガーデン

2013-06-29 21:11:59 | Weblog
右開胸のAVRのMICSも先日、8例目となりだいぶ慣れてきました。
指導医の先生にも今回は特に注意されることなく、滞りなく終了。
最後は見学に来ていた学生さんと一緒に閉胸となりましたが、それでも遮断時間が110分、手術が260分と最初から比べるとだいぶ短縮されてきました。
体位と開胸の方法が症例を重ねていく中で少しずつ改善されていき、今はかなり良好な視野で、大度脈弁輪の死角が全くないのでストレスを感じることなく操作できるようになりました。

MICS症例は14例ぐらいになりますが、その中で多くの困難やトラブル、合併症を経験し気をつけていくポイントがだいぶ見えてきました。

無事に抜管できましたので、夜はみんなでビアガーデンに繰り出しそこでも反省会。
ビアガーデンはやはり雰囲気がいいですね、なんか、周りもどんちゃんやっていて、テンションが上がります。また、スタッフ連れて大人数で行きたいと思います。

何歳まで

2013-06-29 20:48:32 | Weblog
一例目は普通のAVR+CABG2本でしたが84歳とご高齢で、帰室後に覚醒させたら、けいれん?との電話あり、よくよく聞くと両上肢をバタバタしていたとのことで、両上肢だけのけいれんはないだろうと思いましたが、心配してエラダラボン+グリセなど開始して、再び鎮静、夜になりもう一度、覚醒させてみたら、何ともなく、人工呼吸器離脱できて一安心。最近は新人NSさんが担当になることも多く、これからのことを考えれば、しっかり育ってもらわないといけませんが、しばらくは電話の嵐なのです。
高齢者だけにちょっと焦りました。

以前、86歳のAVR+CABGを担当したときに、更生医療の申請を行ったら、お役所から「86歳の高齢者に心臓手術を行う必要があるのでしょうか」という文書付きで返却されたことがありました。厚生労働省によれば更生医療とは、「身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できるものに対して提供される、更生のために必要な自立支援医療費の支給を行うもの」とあります。
私の担当した患者さんは86歳でしたが、お元気で奥様の介護もされている方で、内科的治療されていても心不全入院となった方でしたので、十分、手術の適応と判断し、その旨を返答したところ、認可がおりました。
昨年、96歳で心臓手術を受けられた皇族の方がおられましたが、その少し後の手術でしたので、まず問題ないと思いましたが、、、。
しかし、今年度中には日本でもTAVIの認可が下りるとうわさされておりますが、どうなることやら。手術適応なんていくらでもなんとでもなってしまうので、恐ろしいです。EVARのときだって日本では開腹手術のリスクが高い症例という制限があるはずですが、あまりにあいまいな表現で、医師がリスク高いといえば、それで適応となって、逆に解剖学的に適応外の症例もバンバンやられている国なので、TAVIはしっかりした適応を作って、誰かがしっかりチェックしないと、とんでもないことになるかもしれません。


ペース

2013-06-29 20:31:38 | Weblog
今週は3件+αで、なかなか充実した週でした。
やはりこれぐらいのペースで手を動かせれば、感覚も鈍らないかなと。
週一件程度だと、ウォーミングアップしてからでないと、思うように手が動きませんので、手術日の朝はBeat君で細かい吻合と8-0の糸結びの感覚、MICSの練習BOXでノットプッシャーの感覚を練習してから手術に入るようにしています。
コンスタントに手術があればいいのですが、手術は季節ではやりすたれがありますし、支援に来ていただく先生方のスケジュールによって、1件だったり4件だったり、なかなかコンスタントには行きません。
やはり毎日手術に入っていたころと比べると、いたしかたないことですが、感覚が鈍らないようにしたいものです。