あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

YOUCAN

2009-10-31 18:48:09 | Weblog
YOUCAN
ユーキャンではありません。
ヨーカンと読みます。
何のことかといいますと、OFF-PUMP CABGの練習用のマシンであります。
正確にはマシン自体はBEETといいまして、YOUCAN自体は吻合用の擬似血管でありまして、それをBEETといわれる機械にセッティングすると、あたかも心拍動下のバイパスの練習ができるというものである。
何年か前に早稲田大学の研究班が学会会場で展示していまして、すごいものができたなーとは、思っていましたが。

私もかつて豚の心臓を買ってきては練習したが、実際に拍動いている心臓のたった1-2mmの血管に吻合するのとは、雲泥の差であります。拍動下は、かなりの技術がいります。

最近、バイパスのチャンスが少し回って来るようになり、練習しなくては思っていたところ、今度の冠疾患学会のウエットラボでYOUCANがおいてあるとの情報をゲットし、一度見てみたいなと思いました。
できれば、練習用に欲しいなぐらい。
しかし、これ、値段を調べてみると、本体がなんと5000ドル、血管一本が50ドルである。血管100本ぐらい買ったら、10000ドルであります。
ふざけんなー、この病院の安月給で、そんな金出せるわけねーだろ。
さすがに、病院で買って欲しいともいえない。
しかし、本体だけでも頼んでみようかとも思っている。
でも、ダメだろうな。

そういえば、先日、キューサーを購入したが、400万だった。
それに比べれば、安いけど、あくまでも、医局員の練習用であって、直接、患者に役立つわけではないからな。
みんなで、割り勘にするか?

あとはバイト、ちょっと増やすかな。

LIQR

2009-10-31 18:26:24 | Weblog
LIQRといっても、私の大好きなお酒の話ではありません。
Less invasive quick replacement、大動脈解離の新しい術式です。

このブログでも以前に触れたかとは思いますが、日大の先生でA型の解離をたったの2時間で終わらせてしまうという、世の中がひっくり返るような方法を考え出した先生がおりまして、通常はうちでも6~8時間、出血が止まらないと10時間を越えることもざらではない手術である。
それをたったの2時間ですよ、それでもって、成績も非常によいのです。噂には聞いていて、以前に論文を読んでうちの勉強会でも取り上げましたが、へーすごいなぐらいで、あんまり取り入れようという感じではなく、ちょっとがっかりして、熱は冷めていたのですが、先日の学会で発表を聴いて、話し方からしても大変インパクトのある先生で、ぜひ、お話を聞こうと思っていたら、発表の後は、やはりみな、興味があるのでしょう、アットいうまに人だかりになってしまって、お話を聞くことができませんでした。

そこで、先日、思い切って論文に乗っているアドレスにメールを送ってみたところ、早速のお返事を頂き、論文には載せていない細かな手技的なことをいろいろと詳しく教えていただきことができました。
言葉一つとっても、大変、愛を感じる方で、見ず知らずの私に企業秘密?をご教授していただけました。
ついでに、手術のDVDを送っていただくことになり、楽しみであります。

とはいっても、まだ、私自身は解離の手術を任せていただけるポジションでありませんので、いちおう、勉強会にDVD出して、上司も含めスタッフ皆に理解していただこうとは思っていますが、たぶん却下されそう。
いつか、チャンスが回ってくるであろうその日まで、私の中で暖めておきたいと思います。
ボスの時代は終わったわけではありませんが、いつか世代交代の時期がやってきますので、これまでのやり方を基礎に、やはり、新しいことを取り入れていかなくては生き残っていけないと思います。

いやー、しかし、ほんとに2時間で終わったら、スタッフも患者も病院も幸せですね。
うちにもいつかそんな時代が来ますように。

2009-10-30 12:31:24 | Weblog
今日はボスが午前中は関連病院で手術なので、うちの入室は午後からなので、のんびりしています。
先日、珍しいというか、なんと言うか不思議な症例にであいました。
30年ぐらい前に開心術をやっていて、今回はそのまた再手術という事で、行ったのだが、開けてみたら、癒着もルーズで、なんと心臓にメスを入れた形跡がない。
いくら探しても無い、心臓を開けてみたがやはり、欠損孔を閉じた後も無い。
どういうことでしょう、前回の手術した病院から手術記事を取り寄せようとしましたが、病院自体もうなくなっていた。
胸を開けただけで何か、人工心肺でもトラブルがあって、その場で中止したのでしょうか、送血管や脱血管すら入れた形跡がありませんでした。
30年前といえば、開心術といったら、手術室から生きて帰ってこれるのは半分といわれていた時代です。
当時に手術を受けて、最近になり再手術となる方はちらほらいますが、そういった方のお話では、心臓外科の手術前の大部屋では、手術を終えて戻ってくるのは半分しかいなかったので、自分の番が来るのが恐ろしかったなんて話を聞いたことがあります。当時はほんとにそんなものだったのでしょう。
逆に考えると、何もしなかったおかげで、この方は死なずにすんだのかもしれませんね。

無輸血

2009-10-30 00:12:58 | Weblog
今日は私は山奥のバイトです。
朝晩はかなり冷えます、暖房が欠かせません。
病院では私のいない今日も手術が行われたはずです。
今日の手術はあの須磨先生の考えたSAVEです。
左室の縮小手術はピタッと決まれば、あんがいサクッと終わるものであります。
ただ、今日の方は輸血ができない事情の方なので、いつも以上に慎重に行われているはずです。輸血を拒否することに関してはそれぞれ個人の考えがあるでしょうから、別に否定しませんが、それで、心臓の手術をしてくれというのは、、、、、、どうなのでしょうか。複雑な問題なので、これ以上、ここでは個人的な意見は控えておきますが。
こういった方が、時々、当院にいらっしゃいます。
だいたい、他のところでは倫理委員会がどうのこうので、断られてしまうようで。
off-pumpぐらいでしたら、無輸血でがんばれますが、今年になって覚えているだけで、2弁置換やら再手術までありました。
よくまー、無事に終わったものです。
こちらとしては正直、あまり歓迎できるものではありませんがね。
みなさんはどうしているのでしょうかね。

3枝バイパスへ

2009-10-28 17:54:50 | Weblog
本日、ついに2例目となる、off-pumpCABGが回ってきました。
ここのところ、手術が回ってこないので、このブログにも書いたが、ちょっと、ふてくされておりまして、先日、飲みの席で、ボスに懇願。
なんとか手術を回してくださいとお願いしました。
いつも、そうですが、お願いすると、1症例ぐらいは回ってくる。
今年に入っても、何度か、ボスに掛け合いましたが、そのたびに、思い出したように1例、その後ぴたりと無し、また、3ヶ月ぐらいしてお願いして1例みたいな。
今回も、覚えていてくれたのか、グラフトを3本とって、吻合までの準備をしていると、ボスが入ってきて、突然、お前やれーみたいな。
いつもそうでありますが、その場で言われるので、心の準備もイメージトレーニングもなにもないのであります、、、。
せめて、前日もしくは当日の朝でもいいけど、わかっていれば、ちょっとした運針の手順ぐらいイメージできるのに、いつも、その場で言われるので、緊急手術より、たちが悪い。
その場で、思い出しながら、やらなくてはなりません。
とはいっても、ボスが前立ちに入ってくれるので、結局、ここ掘れワンワンですが。
今日、一番苦労したのはいつも、上司が言っていることでありますが、冠動脈を綺麗に出してど真ん中で切開することであります。回旋枝が掘っている間にどこにあるかわからなくなり、、いちど見失いかけました。
あけてしまえば、あとはひたすら縫うのみであります。
今日はあまり拍動に翻弄されずに吻合を進めることができました。

これで、前回が2枝バイパスでしたので、今日は一歩前進です。
ほんとに、周りのスタッフに感謝の気持ちでいっぱいです。
また、これですこしやる気が出てきました。
AAAもまた、来月あたりには2件ほど入りそうですしね。

今日は久々においしいお酒が飲めそうです。

大動脈は出血がKEY

2009-10-20 21:38:00 | Weblog
先日の心破裂の患者さんも、徐々に回復の方向に向かっており、なんとかなりそうであります。
今日はAVR+上行大動脈置換という手術でしたが、23度の循環停止にまで持っていったので、それなりの手術になりました。
ポンプを降りてボスが手をおろすまで3時間、その後、止血を任されましたが、結局3時間とメインと同じ時間かかってしましました。
うちの方法は単純に連続で一周縫うだけ、確かにシンプルで早いのですが、やはり出るときはでます。出ないときもありますけどね。やはり、出血は嫌ですから、最初から硬い方法で吻合して欲しいというのが、ドアマンとしての希望でありますが、、、、なかなか、やはり自分で切り開かなくてはいけないのでしょう。

大動脈手術というのはやることは決まっていて単純ですが、手術時間の長さはほぼ、吻合部から出血の有無に尽きると思います。
いつか私の時代がきたら、これまでの経験をいかして必ず、吻合方法を何とかして出血のない手術を確立したいと思います。
今の調子だと、何年先になることやら、その頃にはもう、大動脈の手術はなくなってしますかもしれませんね。

久々に興奮

2009-10-18 20:44:43 | Weblog
今週は家に帰ってません、前半は学会に行って遊んでたのですが、水、木、土と当直、唯一帰れた金曜日も、帰宅は午前2時、4時間寝に帰っただけで、今日は当直あけて、久々に家でのんびりしようと思っていたら、帰る間際に、さっき引き継いだ内科のO先生に引き止められ、AMIの自由壁破裂が来るととのことで、帰るチャンスを失いました。
しかし、本日、日曜日、うちの外科医はみんなプライベートでお忙しくて、誰も捕まらず、いたのは研修医上がりのペーペーのみ、それでもいないよりいくらか増し、看護婦も1人、ME1人、計4人で、日曜日の手術室でひっそりと行いました。
これを、チャンスといわずして、なんと言いましょう。
あまり頭を使う手術ではありませんが、久々の開心術で、リーダーとして冷静を装ってましたが、心の中は大興奮。
ちょうど、数ヶ月前の学会で傍聴した心破裂のセッションが頭の中によみがえりました。
執刀前にボスと電話がつながり、縫ったらあかんぞー、タココンブ貼り付けて閉じてくるだけやーといわれ、はいと答えておきましたが、先の学会の話では、タココンブだけでは再破裂の可能性が高いということが話題になっており、みな、いろいろな補強方法をなさっておりましたので、そのときの記憶をたどって、ちょっと工夫しました。
とりあえず、開けてみたら、心尖部のoozing ruptureでしたので、まずは院内にあるだけのタココンブ6枚全部つかって、ひたすら押さえて止血。
その後は、再破裂の予防に馬心膜一枚まるまるフィブリン糊で貼り付けて、ずれないように健常な心筋部位に4針で固定。
それでも心配でしたので、さらにサージゼルシートを一枚でかでかと、これまたフィブリン糊で貼り付けて補強と、3層に被覆しました。
心筋はAMI後という事で、高度の浮腫をきたしており、心嚢内になかなかおさまらず、何箇所か、心膜に切開を加えて、押し込んできました。
それでも、心嚢内はパンパンなのでしょう、術後はやはりタンポナーデ様の血行動態になっています。
IABPとカテコラミン大量サポートでなんとか帰室しましたが、肺は真っ白だし、血行動態は不安定だし、おしっこは一滴もでないし、術後が大変です。
前壁は全くといっていいほど、動いていませんが、しばらくして、心筋の浮腫が引いてくれば、血行動態が安定してくるのでしょう。
肺もいっぱいいっぱいですが、血行動態が改善するまでは、なんとか肺をだまして、ボリューム入れて血圧を保つしかないのでしょう。
という事で、今日も帰れそうにありません。

そういえば先日の台風で、うちの家庭菜園すべてぶっ壊れて、庭がメチャクチャなことになっていますが、あれからずっと休みが取れず、そんまんまなんです。
今日やろうと思ってたのにー、あー。
でも、久々に手術できたので、よし、日ごろの溜まっていた鬱憤も少しは晴れました。
でもほんとは、こんな緊急とかばかりでなく、定期の予定手術をやらせてもらいたい、といいたいところですが、贅沢ですね。
また、チャンスを待つのみ。

もう10月

2009-10-07 00:20:59 | Weblog
先日、ようやくと病院のホームページの更新をしました。
昨年の手術成績をずーと更新してないまま、気がつけばもう10月ではないですか、このままでは、もう、年が変わってしますとおもい、なんとか、データを整理しました。
昨年は少し症例が増えまして、なかなか忙しい年でありました。
今年は、どうでしょう、なんか、結構、暇であります。
もちろん、去年と比べたらの話でありますが。

昨年の手術を見ていて、はて、私はどれぐらい手術の執刀をさせていただいたのか、ちょっと調べてみたら、昨年は28例(開心術5例、AAA21例、末梢血管2例)であり、ちょうど手術件数の1/10でありました。
それで、今年はというと、9ヶ月で22例(開心術3例、AAA14例、末梢血管5例)とこのまま行けば、ほぼ、去年と変わりません。
自分ではもっとやっているのかと思いましたが、想像以上に少なかった。
ちょっと悲しいです、これだけ症例の多い施設にいながら、10年目の外科医で年間30例そこそこでは、なかなかさびしいです。
ほんとはもっと開心術をやりたいのですけど、ボスにも言ってはいるのですが、なかなか、回ってきません。
複雑な症例が多いということや、成績を落とせないということもあるのでしょう、週の半分以上ボスが不在という事も、大きいのでしょうが、もう少し、手術を降ろしてほしいものです。
私が上に行かないと、下の2人もチャンスはないのであり、難しいものです。

まーしかし、贅沢な悩みなのかも知れない、居場所があって、必要とされているだけましか。
チャンスを待つしかないですな。