杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

移動都市 モータル・エンジン

2021年04月03日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年3月1日公開 アメリカ 129分 G

「60分戦争」と呼ばれる最終戦争から数百年の時が過ぎ、わずかに残された人類は地を這う移動型の都市で生活することを余儀なくされた。巨大移動都市ロンドンは、都市同士が捕食しあう弱肉強食の荒れ果てた地でその支配を拡大させ、小さな都市を捕食することで成長を続けている。そんなロンドンの指導者的立場にあるヴァレンタイン(ヒューゴ・ウィービング)に対し、過去のある出来事から復讐心をたぎらせる少女ヘスター(ヘラ・ヒルマー)は、ある小都市がロンドンに捕食される騒ぎに乗じてロンドンに潜入。ヴァレンタインに刃を向けるが……。(映画.comより)

 

フィリップ・リーブの小説「移動都市」を「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」のピーター・ジャクソン製作、脚本で映画化した作品です。

メデューサ(量子エネルギー兵器)による最終戦争で荒れ果てた地球が舞台。生き残った人類は移動型の都市を作りあげ、大きな都市が小さな都市を捕食する弱肉強食の世界になっている設定です。その巨大都市ロンドンを率いるのは市長を隠れ蓑にした野心家のヴァレンタイン。

冒頭、荒野を逃げ回る小都市を巨大なロンドンが飲み込む様は、肉食獣か昆虫の捕食を見ているようです 小都市が財(塩)や構造物をバラバラと落としながら逃げ回り、遂には吞み込まれる描写に、何故か「ハウルの動く城」を連想してしまった 凄く大変な出来事の筈なのにどこか滑稽でもあるという不思議な感覚を持ってしまいました

捕食された都市の住民たちは、最下層で奴隷として働かされるようです。その中にいたへスターは、視察に来たヴァレンタイン(いかにも親切そうに振舞っています)に近づくとナイフで刺します。歴史家見習いのトム(ロバート・シーハン)が二度目の攻撃を止め、逃げるへスターを追いかけ捕まえると、彼女は顔を覆っていたスカーフを外して傷を見せるとヴァレンタインは母親の仇だと言い、廃棄物の穴に落ちていきます。そこへヴァレンタインが現れ、トムが彼女の話を聞いたと知ると、彼を穴に突き落とします。ここでヴァレンタインの立場が観客にはっきり示されるんですね。

ヴァレンタインの娘のキャサリン=ケイト(レイラ・ジョージ)は、トムの友人のベヴィス( ローナン・ラフテリー)から、父がトムを穴に突き落とした事を聞かされ、また、父が密かに何かを教会の中で作っている事を知り、べヴィスと一緒に父のやっていることを暴こうとします。(ロンドンは階級社会で、トムやベヴィスは第三階級に属しています。)

穴から荒野に投げ出された二人。ロンドンの外の世界に出たことのないトムはへスターについていくしかない 彼女は自分の過去を語ります。

8歳の頃、へスターは母パンドラ(カレン・ピストリアス)と二人暮らしで、時折訪ねてくるヴァレンタインを父のように慕っていましたが、ある日パンドラが見つけた箱をヴァレンタインに渡すことを拒んだため、彼はパンドラを殺し、へスターにも傷を負わせて奪っていったのでした。逃げ出したへスターは、シュライク(スティーヴン・ラング)に拾われ育てられたのです。シュライクは「復活者」と呼ばれる感情や痛みを持たない人間を狩るための機械で作られた人造人間です。

ヴァレンタインを尊敬していたトムはヘスターの話に衝撃を受けます。

一方、ヴァレンタインは密かに進めている兵器開発の責任者である女性科学者を訪れて新しい兵器の開発状況とへスターのことを相談します。

彼女は、自分と同じ人造人間になるという約束を破り、ヴァレンタインへ復讐する為去っていったヘスターを恨んでいるシュライクを使うことを提案し、ヴァレンタインは海の上の刑務所に収監されているシュライクをわざと逃がして彼女を追わせます。自分の手は汚さないのね

奴隷商人に捕まったトムとへスターをアナ(ジヘ)が助けます。アナはパンドラの友人でへスターを探していたのです。ヴァレンタインが奪っていった箱の事を聞いたトムは、それが60分戦争で使用されたメデューサだと気付きます。アナは二人を反移動都市同盟の仲間の元に連れて行き、ヴァレンタインが同盟の拠点である静止都市シャングオ攻撃にメデューサを使おうとしていると知って、攻撃される前にロンドンを倒そうとします。

そこへへスターを追ってきたシュライクが現れ、トムが殺されそうになります。彼の代わりに自分を殺してくれというヘスターを見て、彼女がトムに特別な感情を持っていると気付いたシュライクは彼女を許し、保護した時に持っていたペンダントを彼女に返して死んでいきます。感情を持たない筈のシュライクですが、彼の過去を思わせる一枚の写真や、ヘスターと過ごした時間の記憶が、彼のかつての人間性を訴えかけてくる切ないけれどどこか温かい気持ちにさせるシーンでした。ヘスターにとっても育ての親であり、だからこそ彼女はシュライクから逃げるだけで攻撃しようとはしなかったのね

このペンダントの中にメデューサを無効にするUSBが隠されていることに気付いたヘスターは、ロンドンに侵入してメデユーサをシャットダウンさせようとします。メデューサ発動のシーンは迫力がありました。ヴァレンタインとの戦いで死んでいったアナや多くの仲間を失いながらも阻止に成功した二人は、共に世界を旅することにするのでした。負けたロンドンの市民を連れたケイトがシャングオの代表者に迎えられるシーンは感動的ではありますが、アナといいシャングオの代表者といい、中国テイストなんだよな~~ 

復讐者ながら、戦いにおいてはいつも受動的に見えるヘスターにちょっとイラっとしたけれど、移動都市という設定は目新しいし、細部まで作り込まれた世界観はさすがピーター・ジャクソン率いる制作陣の腕を感じました。 それにしても、最終兵器が世界の終末を招いたと言うのに、凝りもせずそれを使って権力の拡大を目論んだヴァレンタインってバカなの?

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