杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

友罪

2018年10月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年5月25日公開 129分

ジャーナリストの夢に破れ、部屋を借りる金も使い果たした益田(生田斗真)は、寮のある町工場で見習いとして働き始める。益田と同じ日に入った鈴木(瑛太)は、自分のことを一切語らず、他人との交流を拒んでいた。そんな鈴木のことを不審に思った寮の先輩・清水(奥野瑛太)と内海(飯田芳)は益田を強制的に連れ、鈴木の部屋をガサ入れする。そこで益田は女性の裸婦像が書かれたスケッチブックを見つける……。工場からの帰り道、鈴木は男に追いかけられている女・美代子(夏帆)を庇う形になり、男から一方的に殴られる。彼女は元恋人の達也(忍成修吾)に唆されAVに出演した過去を持ち、達也と別れてからも執拗につきまとわれていた。鈴木は美代子のマンションで、けがの手当てを受ける。数日後、慣れない肉体労働に疲れ果てた益田は、めまいを起こして機械で指を切断。だが、鈴木の冷静な対処と、病院まで運んでくれたタクシードライバー・山内(佐藤浩市)のアドバイスのおかげで、何とか益田の指は繋がるのだった。夜勤明け、義父が亡くなり、妻の智子(西田尚美)の実家へ駆けつける山内だったが、妻と会うのは10年ぶりだった。息子・正人(石田法嗣)が交通事故を起こして人の命を奪った罪を償うために、家族を“解散”したのだ。しかし、正人が結婚しようとしていると聞いた山内は、怒りと当惑で言葉を失う。入院中の益田のもとに、元恋人で雑誌記者の清美(山本美月)が見舞いに訪れる。清美は埼玉で起きた児童殺人事件の記事で行き詰っていると打ち明け、17年前の連続殺傷事件の犯人・青柳健太郎の再犯だという噂について意見を求める。だが、益田はジャーナリスト時代に自身の記事に因って招いた暗い過去を思い起こし拒絶する。数週間後、カラオケパブで清水や内海、鈴木が益田の退院祝いをしてくれる。鈴木の傍らには、美代子もいた。寮に戻った益田がスマホを見ると、清美から再度意見を求めるラインが届いていた。ため息をつきながらもパソコンを開き、事件について検索した益田は、当時14歳だった犯人・青柳健太郎の顔写真を見て、息をのむ。そこには鈴木によく似た少年の姿が写っていた。まさかと更に検索し、医療少年院で青柳の担当だった白石(富田靖子)の写真を見て固まる益田。それは、鈴木のスケッチブックに描かれていたあの女性であった……。(Movie walkerより)

 

ミステリー作家・薬丸岳の同名小説の実写映画化。監督は「64 ロクヨン」の瀬々敬久です。テーマは犯した罪と贖罪、かな。なかなか重いテーマです。

現実にあった事件を想起させるような鈴木という青年の設定です。他人と交わろうとしない彼が唯一心を開いていくのが益田なんですね。二人の中に共通する(かつて人を傷つけ死に追いやったことがあるという)罪悪感が結びつけていったのかな。

鈴木が庇った美代子は元カレの達也に付きまとわれています。この男は人を殺してはいないけれど、登場人物の中で一番酷い奴と言えるかも 二人は付き合い始めるのですが、達也の嫌がらせはエスカレート。因縁をつけられた鈴木はもっと殴れと達也を挑発します。まるで自分を殺してくれというかのような鈴木の態度に怯んだのは達也だけではなかったようで・・。

益田が怪我をした際に乗ったタクシーの運転手・山内は息子が起こした交通事故で家族解散という過去を持つ男です。故意の事故ではないとはいえ、幼い子供が犠牲になったことに父親として罪悪感に苦しむ山内は、当事者である息子が新しい人生(恋人と結婚し子供の父親となる)を歩き出そうとするのが許せません。自分は息子のせいで家族を解散したのに、当の息子が幸せになるなんて!という気持ちはわからないでもないけれど、では一生人を愛さず子供をもうけないことが贖罪になるのか?という疑問も出てきますね。 息子の方は、自分のしたことへの責任と贖罪は十分自覚しているように見えるから尚更です。(もちろん被害者家族の気持ちはまた別問題なのですが、山内の行動はその被害者家族の気持ちも逆撫でしているように見えました。結局、彼自身がこんなに自分は申し訳ないと思っていますと自己アピールすることで許しを求めているように感じるからかな。)

近隣で発生した児童殺人事件の容疑者として、名前を変え姿を消していた鈴木も一時疑われます。彼の本名は青柳健太郎といい、17年前に連続殺傷事件を起こしていたからです。疑惑は真犯人逮捕で晴れるのですが、雑誌記者の元カノの話から鈴木が青柳かもしれないと気付いた益田は鈴木に問うべきが悩みます。そんな折、カラオケで楽しそうに歌う姿を写した画像を元カノが勝手に記事に使ったことで、鈴木の身元が周囲にばれてしまいます。謝る益田を許した鈴木(この時の寂しそうな笑顔が印象に残ります)は、ひっそりと姿を消します。

自らの罪から逃れられず苦しむ鈴木の姿を目の当たりにして、益田は自分の中学時代に犯した罪に向き合う決意をします。虐めに遭っていた親友の最期の電話に自己保身から「勝手にすれば」と見捨ててしまった益田は、親友の両親にもそのことを言えずにいました。益田は親友の母親にやっと真実を語り謝るのですが、彼女は聞きたくなかったと言います。(原作では少し違うようですが)死にゆく母親にとって、息子の親友の裏切りを今更聞かされたくないと思う気持ちの方に共感できました。これも益田が自分の罪悪感を拭うための一種の身勝手さに思えたから

ラストに鈴木に充てた益田の手紙が読まれます。曰く「自らの犯した罪を見つめながらしっかり生きて欲しい。もう一度君にあってこれからどう生きていけばよいのか一緒に考えよう。どんなことがあっても友達という約束を果たしたい」と。

鈴木がこの手紙を読むことがあれば、今度こそ二人は親友として互いを支え合う存在になれるよね。


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