杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ファンシー

2020年09月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年2月7日公開 102分 R15+

とある地方の温泉街に、一日中サングラスをかけている鷹巣明(永瀬正敏)というニヒルな男が住んでいた。失踪した父親、竜男(宇崎竜童)の後を継いで彫師となり、昼は郵便配達屋もこなしている鷹巣の日課は、町外れの白い家に引きこもって暮らす若い詩人(窪田正孝)にファンレターを届けること。その詩人は“南十字星ペンギン”というペンネームで月刊ファンシーポエムという雑誌に寄稿し、女子学生の絶大な支持を得ている。見かけからしてペンギン似の詩人は、いつもレトロな空調で室内をキンキンに冷やし、氷風呂に身を浸すという生態までペンギンのよう。そんなペンギンの浮世離れした日常を不思議がる鷹巣だったが、はみ出し者同士のふたりは奇妙な友情で結ばれていた。

そもそもこの温泉街は風変わりな連中の溜まり場だった。鷹巣の勤務先の郵便局長で、風俗嬢を斡旋する射的屋でもある田中(田口トモロヲ)。鷹巣の後輩で、グチばかりこぼしているヤクザ組長二代目の国広(長谷川朝晴)。事あるごとにお墓を売りつけようとする住職の篠田(外波山文明)。鷹巣のもとに刺青を入れにやってくる裏社会の男、新田(深水元喜)。この時代の流れに取り残されたような寂れた町で、それぞれがあてどもない日々を生きていた。

ある日、いつものようにペンギンの家を訪ねた鷹巣は、人付き合いが極度に苦手なペンギンが月夜の星(小西桜子)と称するファンと文通を交わしていることを知る。しかし、今回届いた手紙の文面はいつもと違っていた。「私は先生の妻になりたいのです。どうか私をいっしょう先生のおそばにおいてください」。会ったこともない女子からの思いがけない熱烈な求愛にペンギンは驚き、鷹巣は「アブねえ女だな。おまけに絶対ブサイク」とつぶやく。

すると後日、月夜の星がペンギンのもとに押しかけてくる。ブサイクという鷹巣の見立てとは大違いで、清楚で可憐なメガネ女子である月夜の星は、強引にペンギン宅に住みつき、料理、風呂、洗濯などの身のまわりの世話を始める。すっかり奥様気取りの月夜の星をサングラスの下の冷めた目で見つめていた鷹巣は、彼女にずけずけ質問を投げかけ、ペンギンが性的不能である事実を告げるのだった。

やがてペンギンのもとに月刊ファンシーポエム編集部から懇親パーティーの招待状が届き、鷹巣は代理として出席する月夜の星のエスコートを頼まれる。ところがパーティーの最中、鷹巣の真意不明の言動に心かき乱されていた月夜の星は、ワインをがぶ飲みして泥酔してしまう。悪態をつかれた鷹巣がその場で突然唇を奪うと、我を見失ったように身を委ねる月夜の星。そのままホテルになだれ込んだふたりは、欲望に駆られるままに体を重ね合う。

その頃、温泉街にも不穏な変化が巻き起こっていた。ヤクザのドンを狙撃してこの町に潜伏していた新田が追っ手に殺害されるなど、血生臭い事件が続発。夢見る少女から妖艶な女へと変貌を遂げた月夜の星は、自ら鷹巣を誘惑するようになる。一方、月夜の星に惹かれながらも彼女を抱けないペンギンは、答えの見つからないジレンマにもがき苦しんでいた。

そして鷹巣と月夜の星が激しい情事に身を焦がしている最中、ふたりの関係を察したペンギンは、体質的に耐えがたい太陽光が照りつける外界へ飛び出していく。ロマンティックな夢と苦く切ない現実の狭間で、どうしようもなく狂おしく溺れ続ける3人はどこへ漂着するのか……。(公式HPより)

 

彫師の郵便配達員と詩人、1人の女性の奇妙な三角関係をエロスと暴力で描いた山本直樹の短編漫画の映画化です。

もちろん窪田君目当てで、コロナ騒動がなければ劇場鑑賞したところですが・・・そういえばこの半年以上劇場鑑賞してないなぁ

ニヒルで粗暴な男とロマンティストで性的不能な詩人、夢見がちで少女のような月夜の星。三人の間に流れるのは友情とも愛情ともつかない不思議な感情。まさに大人のファンタジーです。

ペンギンというペンネームの通り、どこか人間離れしたキャラですが、彼が演じると何だかとても自然 視線が泳いだり、口を尖らせたりの表情も、焦燥に駆られて下界へ出た時のふらついた足取りも本物のペンギンに寄せているように見えました。ペンギンですから冷房の効いた部屋で暮らし、氷風呂に入ります。人間と交わることも当然できない=性的不能者

温泉街の住民たちも一風変わって・・いや、かなり個性的な連中です。鷹巣が勤める郵便局の局長は風俗の斡旋をしていて、風俗嬢の一人は局員の妻。それがばれて局員から刺されるという、とんでもない設定だ 鷹巣の後輩?ヤクザの組長は、親に無理やり跡目を継がされたと愚痴ります。そういえば、行方不明の鷹巣の父もまた彫師でした。共に親の呪縛を受けていたという点で共通するのかな。

ペンギンは、月夜の星を受け入れようとします。一緒に(冷水ではない)お風呂に入ろうとするし、夏の太陽の照り付ける野外に踏み出してもいきます。月夜の星はといえば、自らの欲求に貪欲になり、鷹巣との逢瀬にのめり込んでいきます。鷹巣も彼女も本気で相手を愛したわけではなく、自分たちのもどかしさを互いで埋めているように見えました。

鷹巣の父親の失踪の真相も、最初から想像がついていた気がします。呪縛を解き放った筈が逆に囚われてしまったかのような鷹巣と、淡々と運命を受け入れながらも、希望を抱いているかのようなペンギン。対照的な二人の関係が面白かったかな

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