2023年2月10日公開 中国 133分 G
2011年、中国西北地方の農村。
貧しい農民ヨウティエ(有鉄)は、マー(馬)家の四男。
両親とふたりの兄は他界し、今は三男・ヨウトン(有銅)の家に暮らしているが、息子の結婚を心配するヨウトン夫婦にとって、ヨウティエは家族の厄介者。一方、内気で体に障がいがあるクイイン(貴英)もまた厄介者だった。互いに家族から厄介払いされるかのように、ふたりは見合い結婚、夫婦になった。 ぎこちなく、それでも互いを思いやり、作物を育て、日々を重ねていくふたり。ヨウティエのことをいつも気にかけるクイイン。そんな彼女の気持ちに愛おしさを覚えるヨウティエ。ある日、家を建てるためにヨウティエが作ったたくさんの日干しレンガが突然の大雨に襲われる。そんな不運さえもふたりには大切な日々となる。 クイインは初めて会ったその日からヨウティエの優しさに気付いていたと話す。
ロバと、ヨウティエと、クイインと。力を合わせ、毎日懸命に働き、ついに自分の家をもった。だが、その幸福は長くは続かなかった——。(公式HPより)
貧しい農民ヨウティエ(有鉄)は、マー(馬)家の四男。
両親とふたりの兄は他界し、今は三男・ヨウトン(有銅)の家に暮らしているが、息子の結婚を心配するヨウトン夫婦にとって、ヨウティエは家族の厄介者。一方、内気で体に障がいがあるクイイン(貴英)もまた厄介者だった。互いに家族から厄介払いされるかのように、ふたりは見合い結婚、夫婦になった。 ぎこちなく、それでも互いを思いやり、作物を育て、日々を重ねていくふたり。ヨウティエのことをいつも気にかけるクイイン。そんな彼女の気持ちに愛おしさを覚えるヨウティエ。ある日、家を建てるためにヨウティエが作ったたくさんの日干しレンガが突然の大雨に襲われる。そんな不運さえもふたりには大切な日々となる。 クイインは初めて会ったその日からヨウティエの優しさに気付いていたと話す。
ロバと、ヨウティエと、クイインと。力を合わせ、毎日懸命に働き、ついに自分の家をもった。だが、その幸福は長くは続かなかった——。(公式HPより)
家族に厄介払いされるように見合い結婚した二人でしたが、互いを慈しんで力を合わせて慎ましく日々を生きる姿が描かれます。
冒頭の場面では、互いの家族に言われるがままの二人には意志や感情が見受けられず、その背景もよくわかりません。
しかし結婚後の二人は徐々に自分の言葉で自分のことを話し始めます。
ヨウティエは内気で優しい性格のために、クイインは体の障害のために、これまで家族から虐げられ人格を否定され続けてきたことがわかってきます。そもそもクイインは医者にも診てもらっていないようです。初め彼女は知恵遅れなのかと思ったのですが、そうではなく逆にしっかりした考えを持つ女性だとわかります。二人ともおそらくはろくな教育も受けることがなく育っていて、その日を生きる事で精一杯だったのでしょう。
離村する者も多い貧しい村には空き家も多く、その一つをあてがわれて新婚生活を始めた二人ですが、農村改革で空き家を解体した者にお金が入ることになって、出稼ぎに出ていた村人の空き家に住んでいた二人は追い出されてしまいます。 別の空家に移ってもその繰り返しで、二人は自分たちで土をこねてレンガを作り自分たちの家を作り始めます。
病気になり輸血が必要な豪農の当主がRH-の血液を持つ ヨウティエに輸血を頼むのですが、相応の報酬を払うわけではなく輸血が終わった後で食事をご馳走するくらいで無償なんですね。この豪農が村人の収穫を政府に売る取りまとめ役をしているので、クイインがもう止めてと頼んでも村人の為に何度も輸血をするヨウティエ。
クイインのためにコートを買おうとしてお金が足りず諦めたヨウティエを見て、値切って買ったそれをさも親切そうにあげるという彼に、ヨウティエは代金は収穫で払います。値切ったことを知らないので言われた値段でね。😖 素朴で優しくて正直者なのです。クイインが初めて彼と会った時にロバに優しく接していた姿を見て「この人となら」と思ったのも頷けます。
クイインを荷馬車に乗せて自分は歩くヨウティエを冷やかす村人たちに、彼は「荷物とクイインの他に自分も乗ったらロバが可哀相だ」と答えます。
働き者の二人は、麦畑だけでなくじゃがいやトウモロコシなどを栽培し、卵から雛を孵して育てます。そんなある日、荷馬車に麦を積む作業に難儀するクイインに思わず酷い言葉で罵ったヨウティエ。すぐに後悔しますが、彼にとってクイインは憐み保護してやる対象ではなく対等な働き手になっていたんですね。
嵐の夜に日干しレンガを守るために必死にビニールを掛ける二人。ずぶぬれの妻を心配する夫に生い立ちの中で過酷な状況には身体が慣れていると笑う妻。
風邪を引いたクイインに鶏が産んだ初めての卵を料理して食べさせるヨウティエに彼女が「幸せになったのに身体が弱くなった」とすまなそうに言う場面で感じた一抹の不安はやがて現実となります。
兄に頼まれた仕事で遅くなったヨウティエ。夫の帰りを心配して外に出たクイインが川に流されて還らぬ人となってしまいます。この時「卵」を持って夫の帰りを待っていた彼女の気持ちが何とも切ない。
妻の亡骸に寄り添い、その手に麦を押し付けて作った小さな「花」。指輪も買ってやれない彼が妻に贈った愛の証です。タイトルはここからですね。😀
ヨウティエは収穫した作物を全て売り払い、借金や卵(以前雛を孵すために借りていた)を返し、ロバを解き放ちます。
二人で建てた家が解体される様子を静かに眺めた後、ヨウティエは村を去っていきます。村人たちは彼が町(貧窮者に与えられた共同住宅)に行くのだと話します。自由になった筈のロバは戻ってきていて彼とともに行ったのだと思われます。
以前交わした二人の会話の中で「植物と違って人間はどこへでも行ける」と言ったクイインに、「農民は土地に縛り付けられどこへも行けない。」と彼は答えました。そのヨウティエが村を去る=農民を捨てる。クイインを喪った哀しみの深さが胸を抉ると同時に彼はこれまでのしがらみから自由になったのだとも感じました。
想像もできないほどの貧しい暮らしの中で、それでも二人の互いを思いやり慈しむ気持ちが痛いほど伝わってきます。土地とともに生きる農民の逞しさ、応えてくれる自然の素晴らしさ、何気ない毎日の中にある喜びを共に味わっている気になりました。これがたった十数年前の中国の農村の姿だということにも衝撃を受けました。