杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

Dr.コトー診療所

2023年07月25日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年12月16日公開 134分 G

日本の西の端にぽつんと在る美しい島・志木那島。本土からフェリーで6時間かかるこの絶海の孤島に、19年前東京からやってきた五島健助=コトー(吉岡秀隆)。以来、島に“たったひとりの医師”として、島民すべての命を背負ってきた。長い年月をかけ、島民はコトーに、コトーは島民に信頼をよせ、今や彼は、島にとってかけがえのない存在であり、家族となった。数年前、長年コトーを支えてきた看護師の星野彩佳(柴咲コウ)と結婚し、彩佳は現在妊娠7ヶ月。もうすぐ、コトーは父親になる。
コトーは、彩佳、和田(筧利夫)、そして新米医師の織田判斗、そして数年前から診療所に勤める島出身の看護師・西野那美(生田絵梨花)と共に診療所を切り盛りしていた。しかし、2022年現在、日本の多くの地方がそうであるように、志木那島もまた過疎高齢化が進んでいる。財政難にあえぐ近隣諸島との医療統合の話が持ち上がりコトーに島を出て拠点病院で働かないかとの提案が。そうなればコトーは長年暮らした島を出て行くことになる。それが島の未来のためになると理解しながらも、コトーは返事を出来ずにいた。
そんな折、島に近づく台風。毎年多くの台風の通り道となっている志木那島だが、想像を超える被害がもたらされているという話が役場に入ってくる。
次々と診療所に運び込まれる急患。限られた医療体制で対応を強いられる診療所は野戦病院と化す。そして再び、コトーたちは“家族”である島民たちの優しさと人の命の尊さに向き合い葛藤することになる。
時として残酷な自然、時を経て宿った新たな命、失われゆくもの、立ちはだかる現実。島はすべてを包み込んで、人々は、そこに生きている。(公式HPより)


山田貴敏の同名漫画を原作に、2003年と2006年に連続TVドラマとして放送された「Dr.コトー診療所」の16年ぶりの続編となる劇場版です。スタッフも中江功監督や、脚本の吉田紀子らドラマ版を手がけた顔ぶれが揃っています。

冒頭の青い海と美しい島の風景の中を進むコト―先生の自転車が電動になっているのにまず時の流れを感じました。うんうん、若い頃と比べたら明らかに体力は落ちてるだろうし、坂道は絶対電動だよな~😁 

東京の大病院の跡取り息子の織田判斗(高橋海人)が父親から「修行しろ」と言われて二か月の研修にやってきたその日、漁師の剛利(時任三郎)が、邦夫を庇って足に重傷を負い診療所に運びこまれます。ここで手術するのかと驚く判斗ですが、コトーの助手を務め足は切断せずに済みます。剛利は、医者になるべく東京の大学で勉強を続けている息子の剛洋(芸能界を引退していた富岡涼が本作のために復帰しています)には連絡しないよう頼みますが、彼が心配な茉莉子(大塚寧々)は東京で働いている息子の竜一(神木隆之介)に剛洋の様子を見に行って欲しいと頼みます。

ある日、正一に代わり島の支所長を務める坂野(大森南朋)から、 過疎化・高齢化に伴う診療所の統廃合の話と統廃合後の拠点病院での指導役の話がコトーに持ち込まれます。島を離れることと離島医療の未来への想いに揺れるコト―は返事を保留します。彼にはもう一つの不安があったのです。

コトーは判斗に骨髄液採取を頼み、鳴海医師(堺雅人)に検査を依頼します。しばらく前から続く体の不調や内出血の痣はある病気の可能性を示唆していました。検査の結果「急性骨髄性白血病」と判明しすぐに治療を始めるよう鳴海医師は警告します。(相変わらずクールな鳴海先生💛)

剛洋が島に帰省し、重雄(泉谷しげる)たち島民に大歓迎されますが、何故か浮かない顔でいつのまにか姿を消します。やがて本土から刑事がやってきて剛洋を探しているとの情報がもたらされます。茉莉子も竜一からの電話で、剛洋があるクリニックで起きた事件に関わっていると伝えられます。

診療所を訪れた剛洋は、医大に入ったものの成績不振で奨学金を打ち切られ、バイト収入では追い付かずに中退したこと、クリニックで事務として働いていたものの、手術中に医療事故が起きて自分では何も出来ずに目の前で患者が死んでいくのを見て「コトー先生のような医師になりたい」との思いが打ち砕かれたことを告白します。コト―は彼に「医者でないから何もできないと思ったなら医者にならなくて良かった」と言います。資格の有無に関わらず「助けたい」という思いこそが医療者にはなくてはならないものだから・・。
剛洋は父・剛利に謝罪し駐在所へ出頭します。(参考人扱いなので罪には問われないのよね。)

その夜、コトーは剛洋への期待が身勝手で傲慢な願望だったと彩佳に語り、自身の検査結果を見せようとして倒れてしまいます。専門家の診断のもとで対症療法を続けてでも島で働くと言う彼に、彩佳は「自分のこと、私とお腹の子のことを考えて」と涙ながらに訴えます。コト―はこれまで患者の気持ちをわかったつもりになっていたが自分が病を得て本当は何もわかっていなかったことに気付いたと言い「生きたい」と
言います。それでも彼は医者として人を助けることを選ぶんですね。

コトーの病を知らされた坂野 は、判斗にコトーが回復するまでいて欲しいと頼みますが、「自分にはコト―先生のようにはできない。この島の医療はコト―先生の良心と自己犠牲で成り立っている、皆が頼り過ぎたから先生は疲れ果ててしまったのではないか、《病気》って、そういうものじゃないのか」と答えます。

島に台風が接近し、土砂崩れが発生すると、コト―も彩佳と駆けつけ、災害現場には判斗と那美が向かいます。剛洋も邦夫と消防団の活動を手伝い、診療所には次々と負傷者が運ばれ治療が追い付かない状態に。
建物の倒壊に巻き込まれた末期の膵臓がんを患うノブおじの心臓マッサージ、那美の祖母で狭心症の持病を持つ助産師の美登里の心筋梗塞、どちらも一刻を争う中、彩佳も切迫早産の危機に陥ります。「全員助けます」と懸命に治療に臨むコト―でしたが遂に倒れてしまいます。コトーに代わりノブおじの心臓マッサージを続けた判斗ですが脈は戻らず「やっぱ無理だよ」とマッサージの手を止め「これが《現実》ですよ」と叫びます。その時、倒れたコト―を「俺は諦めねえぞ」と叱咤したのは松葉杖で駆けつけた剛利 でした。(重病人にその呼びかけはどうかと思うけど)父の言葉を聞いた剛洋はノブおじに駆け寄って心臓マッサージを再開し、島民たちも必死に呼びかけます。するとノブおじの脈が再開し、コト―も立ち上がります。
判斗と和田の介助のもと、遠のく意識を奮い立たせて美登里の手術を無事終了(この怒涛の展開はちょっとあり得ない。そもそも気力だけで緻密さが要求される長時間の手術なんてできないでしょ😓 )したコトーは、診察室のベッドで眠る彩佳のそばで力尽きました。

場面は代わり
剛利は大学に戻り再び医者になるために学んでいます。剛利も「剛宝丸」に乗り続けていました。診療所では、彩佳の子が立ち上がり歩き出す様子を那美や判斗、島民たちが見守っています。その子が差し出してきた小さな手にコトーの大きな手がそっと触れ抱き上げます。とても印象的なラストです。

このラストにはコト―が最期に見た希望の未来図という解釈もあるようですが、個人的にはハッピーエンドで良いかなと思います😀 
そういえば、本作では「手」の他に「背中」のシーンが大事な場面で登場します。コト―の背中は、彼が背負っている「命」の重さを、剛利 の背中は父親の責任を伝えているように感じました。その背中に深く頭を下げる判斗や剛洋は、その想いを確かに受け止めたのだと思います。

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