杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

たぶんねこ

2014年04月05日 | 
畠中恵(著)新潮社(刊)

えっ、若だんなが大店の跡取り息子たちと稼ぎの競い合いをすることになったってぇ!? 長崎屋には超不器用な女の子が花嫁修業に来るし、幼なじみの栄吉が奉公する安野屋は生意気な新入りの小僧のおかげで大騒ぎ。おまけに幽霊が猫に化けて……。てんやわんやの第十二弾の鍵を握るのは、荼枳尼天様と「神の庭」!
(新潮社HPより)

「しゃばけ」シリーズ第・・何弾になるのだっけ
とにかくわかだんなといつもの面々が賑やかにしているだけで嬉しくなっちゃうんです

まずはプロローグ「序」
二月病気をしなかったことに喜ぶ兄や達に半ば強引に5つの約束をさせられる若だんな・・・あ、これは無理ですねとシリーズの読者なら誰でも思う筈。そして約束の半年の間に次々と事件は起こるのです

・跡取り三人
早速第一の約束(仕事せずゆっくりはなれで過ごす)がまず御破算となります。
父に連れられていった大商人たちの顔合わせの席で、若だんなを含む跡取り息子の三人が稼ぎの競争をす ることになっちゃうんです。裏には両国を仕切る親分・大貞(あれ?「まんまこと」の彼ですか?)の思 惑がありました。体の弱い若だんなは菓子売りの商いをすることにします。他の二人もそれぞれ働き出す のですが、大貞の意図を見抜いた若だんなは皆と申し合わせて・・・
 
結局縁談のために大店の跡取り息子たちの能力を試したということですね
それなら体が弱いと知れ渡っている若だんなは除外されて然るべきところと思うのだけど

・こいさがし
次の約束(恋はお預け)も怪しくなってきました。
母・おたえが知り合いから頼まれて、14歳の娘於こんの行儀見習いを引き受けますが、この娘、家事一切 が不得手そのくせ他人の色恋には口を突っ込みたくなる厄介な性格。まぁ思春期の娘なら 当然の反応ともいえますがそんな折、大貞の子分が見合斡旋の頼みごとをしてきます。更 に 河童の大親分禰々子からも見合いを頼まれ、同じ日にセッテイングしたところに思わぬトラブルが発 生するわ、物見見物気分の於こんは口を出すわでてんやわんやの大騒動が持ち上がり・・・

コメディによくある展開。しかも於こんの正体は妖狐。言われてみれば名前が物語っているじゃない振り回されたのは周囲のものたちだけで当の若だんなは泰然としているのも面白いね。

・くたびれ砂糖
三つめの約束も軽く破られてしまいましたねだって大親友の危機ですもん。
安野屋で働く栄吉と久々に会えたと思ったら、クソ生意気な後輩のせいでまたまたトラブルに巻き込まれ てしまう若だんなです。安野屋に新しく入った三人の小僧はやる気がなかったり生意気だったりと揃って ろくでもない者ばかり。主人や番頭たちが揃って病気になったのを良いことに増長しまくりの様子。でも 病気の原因は誰かが一服盛ったからとわかり・・。

犯人の推測は容易ですが、誰かということとその理由はちょっと意外でした。短絡的で自分勝手な犯人像ですが、この話は現代でも通じるね。というよりあの時代にこんな小僧がいたら一日ももたずに追い出される気がしますが中間管理職のような立場の栄吉が小僧を一喝する場面では、彼の成長を感じることができます。

・みどりのたま
四つ目の約束(妖のために外出しない)も無理でしただって約束させた当事者が原因になったん ですもの
記憶を失い困惑の中にいる男が自分を知っているという老人・古松と出会います。彼は妖狐で、昔飛び出 した神の庭に戻りたいと望んでいましたが、歳をとり病を得た今それは叶わぬ願いと悟っています。それ で必死に薬を捜し回ってくれている仲間にもう迷惑をかけたくないからと、男に神の庭に行って皆に諦め るよう神から仲間に話して欲しいと頼むのですが・・・。

普通の人には見えぬ筈の鳴家が見えたり、古松の話がすんなり理解できたり、男もまた妖であるなとわかるけれど、それでは仁吉と佐助どっちでしょ?はい、白沢さん(仁吉)ですね
そして神の庭におわすのは恋しいおぎん様。この束の間、一瞬の視線の交錯で互いの想いが伝わる場面がでした。大事大事の若だんなに会っても戻らなかった記憶がおぎん様を一目見た途端甦るんだものね

・たぶんねこ
そして最後の約束(体に触る災難に巻き込まれない)も見越しの入道が幽霊の月丸を連れてきたことで破られることに
古松とは逆に神の庭から江戸に戻りたい月丸がちゃんと適応できるか見極めのために入道が預かってきた のだけれど、鳴家がもとでまたまたトラブル発生。月丸と一緒に夜の江戸のどこかに飛ばされた若だんな は、江戸で暮らせるか何とか自分で試してみたいという月丸に付き合うことにするのですが・・・。

月丸は神の庭で狐や狸たちに教わって化ける練習をしたと言い、猫や鳥に化けて見せるのだけどどれも中途半端です。「たぶんねこ」というのは鳴家が猫に化けた月丸を称したものですが、そのまま表題になったというわけね実は彼の人生も悉く中途半端だったのね。自分は何のために生まれてきたのだろうという心残りのせいで成仏できず幽霊になってしまったようです。そんな彼に入道は黄泉の銭を渡すのですが、若だんなは広徳寺の寛朝預けにします。自分が誰かの何かの役に立っているという実感を味わわせたかったのね。

そしてエピローグ「終」
無事?5つの事件に追いかけられ休む間もなく動き回った若だんなは何度も床に伏せ、命の危機に陥り・・要はいつもの毎日が続いたわけでしたう~~ん、これってめでたくはないな

少しずつ少しずつ、若だんなも守られるだけの立場ではなくなってきているようです

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする