Rain or Shine~メイおばさんの宝箱

雨が降れば虹が出る、晴れた空には光が躍る。
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世界のどこかから、あなたへ贈るメッセージ

トルーマンのエプロン

2016-05-29 22:54:43 | メイの教訓

様々な意味で歴史に刻まれる決断をした
アメリカの第33代大統領、トルーマンが幼少の頃より暮らしていた
ミズーリ州インデペンデンスの町には
昨日お話ししたようなトルーマンの家ばかりでなく
「トルーマン博物館」もあります。

ここはとりわけ私たち日本人には辛い場所です。
たくさんの写真や文書の多くは
戦争と戦場に関するものです。

広島の写真も長崎の写真も多数展示されています。
英雄としてのトルーマンがいます。

出口には来館者が自由に書き込めるノートがおいてあり
様々な思いが書き留められています。

戦争への後悔、懺悔、平和への思い、、、、、
中には単純にアメリカの勝利を喜び
よくやった!とばかりに賞賛するものだってないわけではありません。

日本人はおろかアジア系の人たちすらほかに見られない所で
少々センシティブになっていた私は
周囲の視線が気になって
いたたまれない気持ちで博物館を後にしました。

同じ通りの「案内所」に飛び込めば
そこにはあの戦争を通り抜けてきたであろう年配の男女が
カウンターの内側に立っています。

中で展示され、売られているのもまた
トルーマンと、あの戦争についての品々です。

私はそそくさと1945年5月の新聞と、8月15日の新聞を買って
何やら暗い気持ちのまま表に出ました。

ところが、早足で車へと戻る途中に信じられないことが起こったのです。

誰かが後ろから「マダム! マダム!」と呼んでいるのですが
まさか自分のこととは思わずにますます歩を早めました。

すると「マダム!」の声が私の背中で止まりました。
後ろを振り返ると、さっき売店にいた老いた男女が
はあはあと大きな息で立っているではありませんか。
一瞬、何か忘れ物でもしたのかと思いました。

すると、この二人が
「これ、これをどうぞ」と言って、包んでもいないむき出しのエプロンを私の手に持たせようとするのです。

それは大きなポケットが付いた厚地のエプロンで

「If You Can’t Stand the Heat,,,,,
 GET OUT OF THE KITCHEN!」
(熱さに耐えられないなら台所の外に出なさい。)

という考えようによっては比喩的な言葉と共に
トルーマンのサインが印刷してあるのです。


実は、このエプロンを見た時に買いたかったのですが
一刻も早く店を出たくてあきらめたのでした。
ですからそれが25ドルであることも私は知っていました。

状況が呑み込めないままに、とにかく25ドルを数えてお二人に渡そうとすると

「いいえ、どうかお受け取りください。」

と言いながら、お金も受け取らずにまた踵を返して
元来た道を戻り始めました。

でも、気づいてしまったのです。
二人の目に涙がたまっていたことを。

これをセンチメンタルな美談としてとらえるのは簡単でしょう。
けれども、店を無人にしてまで
ただエプロンを渡すためだけに私の後を追ってきた人たちの思いを
いったい私はどう解釈したらいいのでしょう。

このエプロンもまた
私の行く先々について回っています。
今はここシアトルの家で使われています。

そして
この、私には大きすぎるエプロンを身に付けて
太い紐をきりりと前で結ぶ時
なんだか切なくて、涙が出そうになるのです。

読んでくださってありがとうございました。
今日も良い一日でありますように。
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よろしかったらどうぞ覗いてみてくださいね。
5月27日:フィッシュ&チップスはペールエールで
5月26日:パリ空港のレストランで思ったこと
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