Rain or Shine~メイおばさんの宝箱

雨が降れば虹が出る、晴れた空には光が躍る。
雨でも晴れでも歩きましょう!
世界のどこかから、あなたへ贈るメッセージ

お・か・し・く・ない?

2014-11-12 19:57:20 | 言葉
都心へと向かう車内で
窓に向かって吊り皮につかまっていたら
おやおや、あらあら
7人掛けの座席に座るのは全員がみごとに若い男の子と女の子。

男の子も女の子も左手にスマホを持って
右手で早打ち、右手でスワイプ
そのうちイヤホンをした二人が
こっくりこっくり居眠りを始めた。

私の隣りで
一生懸命柱につかまるおばあちゃんは
どう見ても80は越えてそう。

電車が揺れるたびにおばあちゃんも揺れて
私は思わず腕でおばあちゃんを支えて
「よろしければお荷物をお持ちします。」と
言ってしまったら
おばあちゃんは「すいませんねえ。」と紙袋を渡した。

けれども
前の座席にすわる若い子たちは
誰一人そんな風景に気づくでもなく
ラクダのように長いエクステ睫をパサパサとしばたかせ
「ねえ、チョーおかしくない?」と
「か」と「し」と「く」を同じ高さにして笑い転げている。

おばあちゃんが右によろめけば
今度は別の方向から
ゲームに熱中した青年たちの
「やばくない?」と
「や」と「ば」と「く」がまるで「さばく」の音のように
平坦に並んだ声が聞こえてくる。

おばあちゃんが左によろめけば
「それで~」「だから~」「わたし的には~」「まじ~っ?」と
不思議な呪文のような音が耳に届く。

この国ではもう
見たいものしか見えなくなっているのだろうか。
聞きたい音しか聞こえなくなっているのだろうか。

おばあちゃんのからだがまたフワリと揺れたら
斜め向かいの席を立って
「どうぞこちらにお座りください。」
と迎えに来たのは
おばあちゃんとさして年の変わらぬご年配のおじいちゃん。

ようやく座れたおばあちゃんの隣に座る女の子は
爪を長く伸ばした美しい指を
カバンから取り出したマックの袋につっこんで
エンドレスにフライドポテトを食べ続ける。

ねえ、やっぱり
「まじで、お・か・し・く・ない?」

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みんなで秋を作りました。



読んでくださってありがとうございました。
今日もどうぞ良い一日でありますように!

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