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陽だまりのねごと

♪~思いつきひらめき直感~ただのねこのねごとでございますにゃごにゃご~♪

荒地の恋 ねじめ 正一著

2008-02-25 05:55:07 | 
荒地の恋
ねじめ 正一
文藝春秋

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NHKの週刊ブックレビューだったろうか?
取り上げられた数冊の中でこれはと興味がわいた。
53歳で親友の妻と恋に落ちて家庭も仕事も捨てて
急に詩がかけるようになった詩人北村太郎を
ファンであるねじめ正一が書いたと言うもの。
実際に詩の朗読会に若き日の著者が登場してきた。
53歳から死の69歳が70年代後半から80年代、90年代前半と
自分が生きてきた時と重なるのも馴染みやすかった。
ちょうど親世代になろうか?

恋におちた53歳と私の実年齢が近いことも興味を惹いた一因だ。
まず私の中にそう言う感情が湧き得ない。
湧いたとして一切合財捨て去っての駆け落ちもどきは
かなりきついとまず計算が働く。
若い人と違って双方が柵の中で生きている。
多少ハードルの低いバツイチ等で、たまたまシングル同士の熟年婚でも
いろいろと面倒くさいから戸籍上の籍はそのままなんて話も聞く。

ストーリーは駆け落ちでおしまいではなく、これが序にみえる。
なんとも枯れることなき若き情を持ち続ける詩人たち。

元夫の田村隆一は明子を呼び戻しておいて
何度も恋をし、最終的に離婚し彼女をひとりぽっちにさせる。

北村太郎もまた明子が去った後に子供ほど若い阿子に溺れる。

詩は
こうも波瀾万丈を産む人たちの中で紡がれていくものなのかもしれないと
平平凡凡の中でせめて伝記?小説でわくわする。

最後の最後に
『北村さんが死んだ。』で始まる
最後の恋人阿子だろう人物の語りがある。

北村太郎のお別れ会に日常生活からぽっとやってきて
死んだはずの彼に瓜二つの双子の弟に出会いギョとして
自分は「恋人であった」と語りかける。
弟は『北村太郎を幸せにしてくれて、ありがとうね。』と言い
彼女はせっかくの休暇だから、娘と夫の外食と言う
今のしあわせを感じるためにお別れ会は中座する。

シュールな結末に
思わずいつ阿子は結婚してたんだ???
と、パラパラとめくりかえした。
うたた寝しつつ読み継いだからどっかで読み落としたか?
確かに
『家庭があるんだから呼んでもすぐに来れない』と言う下りはあった…
覚えがある。
確か出会いの頃は病院の看護婦寮暮らしみたいな気がしたけれど?
北村との激しい性愛の間のいつの間に結婚して子供まで???

中年男は家庭を捨てても元妻への仕送りに喘ぎ
中年女は捨てた家庭に残した
一人では立ちいかない夫と
捨てたはずの家が汚れるのを気にし続ける。
恋の逃避行後も生活臭はぷんぷんとし、ちっともうつくしくない。
ロマンティックからはほど遠い。中年は哀しい。

北村太郎は猫好きだった。表紙の猫の絵はそこからきているみたい。
自分に家や仕事を捨てさせた明子が元の居場所に執着する姿は
『人よりも家に付く』という猫に似ていないか?

ドロドロとややこしい事をしでかした訳だけれども
やがて死を待つ病に冒された時
自分の情に忠実に生きて行動したことはすごく幸せにみえた。
男と女でなくても
人と人、ずっとおんなじ感情を持ち続けて関わっていくってことはない。

猫のようにしなやかに生きてもいいのかもしれない。
などと思いつつ老猫と一緒にこたつに潜って完読。
凡なワタクシは日常に追われると
もう駄詩を紡ぐところか字すら追えなくなる。


・・・「朝の鏡」/ 「北村太郎詩集」所収・・・

  朝の水が一滴、ほそい剃刀の
  刃のうえに光って、落ちる - それが
  一生というものか。残酷だ。


・・・「すてきな人生」/ 詩文集「すてきな人生」所収・・・

  モノをほしがる物欲、のほかに
  ココロをほしがる心欲、までもっているから
  ヒトは怪物、なのだ、
  


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