2014年初めての日記になります。明けましておめでとうございます。世界中で何が起こるか分からない激動の時代に完全に突入しておりますが、ぜひとも皆様にとって良い一年になるように、もしくは願うだけでなく、そうなるための努力を皆様とできれば楽しく共有できるように、と期待しております。どうぞ本年もよろしくお願いいたします。
年末年始を海外で過ごすことは初めての経験でしたが、奥さんの親友家族の家(クレルモン・フェラン)に二泊させてもらい、フランスの家族の年末年始の過ごし方を生で見ることができて大変に貴重な経験でした。もちろん非常に楽しい時間でした。
元旦にリヨンに移動しました。とても快適な街で、道路、歩道、川の遊歩道、広場などが非常に広く、公共交通も相当に整備されていて、歩いて散策するのがとても楽しい街でした。多くの写真をfacebookで紹介しましたので、facebookユーザーの方はそちらをご覧ください。
私一人、3日にTGVでパリに戻りました。夕方に指導学生の横山君がインターンのために渡仏し、シャルル・ド・ドール空港に到着するからです。我々の開発したSWATを持参してやってきましたが、一部の部品が税関で止められてしまいました。後日受け取りに再度空港に行くことになりましたが、とりあえず到着。私の家に連れて行ってSWATの本体を家に置いて、軽い夕食を振る舞ってホテルに出発していきました。
家族以外では日本からのお客さんの第一号で、一週間後にもう一名の学生がやってきますが、充実した時間を過ごしてもらえるよう、私にできるバックアップはしようと思っています。
さて、年末年始にもいろいろと経験したり、読書をしたりしましたが、大石久和さんの「日本人はなぜ大災害を受け止めることができるのか」という本を読了し、大変に勉強になりました。 国土学という観点から、日本人と欧州、中国などの大陸文明の人々との考え方の違いの根源的な理由を明らかにし、日本人の長所、短所を論じる興味深い本です。このような知識を身に付けてフランスでいろいろなことを観察すると、とても勉強になります。
その本の中に、日本人が本来持っている長所を大切にすべきこと、大陸の人たちとの考え方の違いを十分に認識すべきこと、今後の日本人が持つべき考え方や磨くべきツールなど、が滔々と述べられています。
私自身は、典型的な日本人の面も持っていますが、大石さんの本で述べられている今後の日本人があるべき姿の一部をすでに体現している面もあります。
それが培われた環境は、やはり東大のコンクリート研究室であったように感じます。
岡村先生のお考えで、学生の部屋は大部屋。パーティションも無し。とにかく議論が行われ、その議論が他の人にも聞こえることが重要。
学生の部屋だけでなく、教員も相部屋とすべき。特に若手教員の個室はよくない。
私が学生時代に過ごした研究室の居室はまさにそのような環境でした。留学生も先輩後輩もなく学生は大部屋。我々の研究室は3階にありましたが、同じ建物の4階(応用力学)、5階(橋梁)の研究室は全く異なる部屋の使い方であったことに驚いたことを記憶しています。
そのような環境で、私はトップレベルの留学生とも日常的に会話し、後輩の面倒を見たり、しました。
いろんな国の留学生がいましたが、ドイツ人やエジプト人、中国人などもいました。エジプト人がかなりたくさんいましたが、彼らの個性はかなり強烈で、彼らと対等にやりあう(会話する)過程で、言うべきことをしっかり言う、対立していても適切にコミュニケーション・交渉する、という基本を身に付けたように思います。
また、日本で不適切に理解されている「個性」についても、コンクリート研究室の環境で適切な個性について考え抜き、自分自身を確立していくきっかけをいただけたように思っています。
先生の単なる真似をしてもダメ、真似をしても絶対に追い抜けない、自分の最も得意なことを徹底的に磨く、確立された個性の連携により新たな価値が創造される、というような基本を模索し始めたのがコンクリート研究室所属していた時間であったと思います。
ひるがえって、私の研究室はそのような環境になっているか。教員の部屋は別々で個室。学生の部屋も3つに分かれている。
環境のせいにして文句ばかり言っても仕方ないので、私のポリシーにより一つの部屋を研究資料、解析PC、ミーティングスペースを兼ねた溜まり場にし、別途、別の建物にレンタルしている居室も実験設備を整備して、さらに別の溜まり場になるようにしました。活用されるかどうかは別ですが。
また、林さんが教員でいたときの終盤は、最若手の教員である林さんの部屋に、博士課程の最上学年二名(留学生だったり日本人だったり)を同居させるようにしました。
建物を勝手にいじることはできないので、制約はありますが、その中で自分たちのフィロソフィーを実現できるように改善を重ねてきているわけです。
ここで問題は、構成員が環境を生かそうとベストを尽くすかどうかです。
東大のコンクリート研究室でも、皆が皆、環境を生かしていたわけではありません。例えば、留学生たちからすると、「細田さんは話しやすい。面倒見がよい。」といつも言われ、彼らから今でも言われていますが、ほとんどの日本人学生は留学生と話もしないし、「ムラ」に閉じこもります。東大も横浜国大も私の目から見ると同じです。15年前も今もほとんど変わらない。
私の研究室では、もちろん私が率先して体現すべきであり、日本にいるときは私の体で示しているつもりです。私一人ではダメで、そのフィロソフィーに共鳴する人たちが行動を起こし、周囲を巻き込んでいくことで少しずつ実践され、根気強く続けていくことで少しずつ文化が形成されます。
なかなか難しいことだと思います。私の研究室に私以外の真のプラグマティストがいるのかいないのか。留学生も基本的には個人で閉じこもる傾向の人が多い。
研究室とは無限の可能性を秘めた場でもあるし、単なる共同体の税金食いのすみかに落ちぶれる可能性も持っているものです。
研究室の核となる教員が不在、という状況は捉えようにとってはチャンスであり、しかもこれだけの情報社会ですから、私とのコミュニケ―ションも難しいわけでは決してありません。私のような人間が上から様々な指示を出す状況でなく、自分たちで創意工夫を発揮して自分たちの研究室の環境を整備していくことのできる大きなチャンスでもあるわけです。
もちろん、今回の横山君や来週の佐藤君のようにフランスを訪問してくれれば、いろいろな経験をサポートしてあげることもできるかと思います。これも、今の時期の一つの生かし方でしょう。
いつもの結論になりますが、どれだけ多くの構成員が当事者意識を持ち、ベストを尽くせるか。私も含めほぼすべての人は凡人ですから、その無知に悲嘆することなく、楽観的に努力を重ね、研究室という場に自分も貢献しつつ、大きな恩恵を受けることができるか。構成員の考え方次第です。
私自身の人生に大きく影響を与えた東大コンクリート研の場と同じように、とはとても行きませんが、私の研究室も、私ができうるベストを尽くして環境を構築してきているつもりです。もちろん、私自身も発展途上ですから、環境の整備はこれからも続きます。
学生たちが協働でベストを尽くしてくれることを期待しています。
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