田母神俊雄氏が都知事選のための事務所を17日開設し、そこで記者会見が行われた。しかし、この日の主役は応援で同席した石原慎太郎日本維新の会共同代表であった。
まず、細川候補を維新の会の一部党員が支援している動きについては、石原氏は小泉元首相の細川支援にも言及してこう言い放つ。
「相手の言い分を聞いて候補者を比較して選択すべきだ。この期に及んでオリンピックを返上するとか、原発の問題でも小泉もそうだけど、単発的で、物事を複合的に考えない人間を私は選択愚かとしか言いようがない。
類は類を呼ぶていたらくだ、あの二人のコンビネーションを見たら。電力は経済の血液だからね。」
「ていたらく」「愚か」といった歯に衣を着せぬ「石原語」が飛び出す。小泉元首相に対しても容赦ない。また「複合的に考えない人間」というのは鋭い指摘であり、国政に関わる政治家への最大限の警告にも思える。
再度朝日の記者から細川出馬と小泉元首相の支援について問われて、田母神氏が「(小泉氏の支援は)まあやめた方が方がいい」と答えたのに続いて石原氏も細川・小泉批判が炸裂する。
「同感ですね。ものを複合的に考えない人間は愚かというしかいいようがない。センチメント(情緒)にかまけてものをする、後で臍を噛む。恋愛と同じなんですよ。
あんな男、あんな女と結婚して酷い目に遭う、周りが何を言っても惚れちゃって結婚して後になって臍を噛むことは多々あるわけだ。
やっぱり原発の問題もセンチメントだけで判断したら後になって取り返しのつかないことになる。お二人とも頭を冷やした方がいいんじゃないの。」
石原氏は、細川元首相ばかりでなく、この小泉元首相の言動にもよほど腹に据えかねているようだ。一時は評価していた時期もあったが。石原氏にとって今冷やすべきは原発の原子炉や燃料プールだけではないのだ。作家だけあって、細川小泉連合を男女の成り行き任せの恋愛に例えるのもさすがだ。
そういえば一昨年の暮れに小沢一郎グループが脱原発の嘉田由紀子滋賀県知事を党首に据えて、日本未来の党を結成して惨敗したのを思い出す。その後嘉田氏と小沢グループが、選挙敗退の責任をなすり付け合って醜態をさらしたことは記憶に新しい。この元首相連合の結末はいかに?
ネット選挙をどう活用についてもそれを評価をしながら既存メディアに手厳しい注文をつける。
「ネットのユーザーというのはあなた方大新聞、既存のテレビ局がつくった世論とは大分違うんだね。
たとえば安部君の靖国神社参拝の賛否両論の時にネットの視聴者の意見は80%賛成なんですよ。こういうギャップはあなた方も考えて論説を張ってもらいたい」
首相の靖国参拝については、自分も石原氏の意見には痛く賛同する。最近テレビや新聞の論調には違和感を覚えるし、国の進路を見誤る懸念をもつ。今後はもっとネットの世論が勢いを増していくことだろう。
場内にどっと笑いがもれる瞬間がいくつかあった。
細川陣営が脱原発のシングルイッシューのまま公約が先延ばしで、いまだに後手後手に回っている状況をどう見るかにつては「「それは候補者の資格がないね、そうしかいいようがない」、細川氏の過去の佐川急便問題を追求するかどうかにについては「あなた方がすることじょないか」と簡潔過ぎる答えだ。シンブルイッシューならぬシングルアンサーか。彼の物言いが何ともシニカルで滑稽だった。
会見を通してどうも見ても石原節が場内を包み込んでいた。あの強面の田母神氏がとても実直で誠実な人間に見えるから不思議だ。(実際そうなのかもしれないが)
田母神氏が会見の最後で「石原元都知事の回答は気持ちよいですね、経験を積んでこうなりたいと思います」と、語ったのが印象的だった。皮肉にも田母神氏の会見でもっとも場内に笑いが起こった瞬間だった。それには石原氏も苦笑いしていた。
自分自身も石原氏の回答は痛快そのものであった。そしてこの田母神・石原両氏のコンビはなかなかおもしろいと思った。ひょっとしたら、結構今後の選挙戦で話題を集めるかもしれない。
それに対抗する細川・小泉コンビ。聞くところによると自民党は小泉元首相に対しては遠慮して敢えて批判するのを憚っているという。彼は今も党内に厳然とした力をもっているようだ。メディアも脱原発のヒーローとして、持ち上げる傾向がある。
唯一小泉批判を堂々としているのがこの石原氏だが、小泉元首相もこれだけ石原氏に言われっ放しということはないだろう。あれだけ頑固で我が強い小泉氏のことだから黙って見過ごせないはずだ。石原VS小泉のバトルが見られるか?