とても残念な結果である。昨日行われた沖縄名護市長選挙、辺野古移設反対の稲嶺現役市長が勝利した。昨年仲井真沖縄県知事が辺野古埋立て工事承認を決めて普天間基地問題が前進すると期待していたが、この現役市長の再選でまた見通しが暗くなった。
自分がこの選挙結果を見るとどうしても推進派陣営の自滅という印象が強い。推進を主導すべき自民党県連の結束の乱れが災いしたことによるといえる。一応、県連は昨年暮れに本部の要請を受けて県内移設を容認していた。しかし、それまでは一丸となって県内移設反対でまとまっていた。
突然の県連執行部による県内容認で沖縄の自民党が紛糾、分裂状態だ。会長自身が県外移設の急先鋒で本部の強い意向で渋々辺野古移設を認めた。結局本人はそれが本意ではないとして、会長を降りた。沖縄県連に影響力を思っている那覇市長も相変わらず県内には反対で選挙中にも移設反対の稲嶺市長を陰で応援したようだ。
中央では与党の公明党も地元は自主投票ということで、結果的には支持母体の創価学会員の多くが稲嶺市長に票を投じたとのことだ。あるいは地元の経済界も今回の選挙では積極的ではなかったともいわれている。
そして一番の問題は推進派の末松候補、県議を昨年暮れまで留まっていて、出馬への意思が希薄であった。辺野古移設もはっきり明言せず、地元では「コウモリ男」と揶揄されていた。そして、県知事が移設を認めれば自分もそれに同意するという全く他人任せの姿勢に終始した。こうした候補者の煮え切れない態度には名護市民も辟易しいたようだ。
むしろ、辺野古移設を積極的に主張し出馬を表明していた島袋氏の方がもっと市民の支持を得ていたかもしれない。彼は、1期前の市長で4年前に再選を目指したが、現役市長に破れた。当時は民主党が中央政界で政権を取った直後で、鳩山首相の最低でも県外という方針があたかも現実性を帯びていた時期であった。沖縄県内では県外移設が県民を挙げて盛り上がっていた。そんな中破れたとはいえ島袋氏は1500票差の惜敗であった。
しかし、今回は4000票以上の差がついた。知事が辺野古埋立てを容認し、流れが県内移設に動いているこの時期にである。島袋氏は昨年暮れまで出馬を公言していたが、知事が埋立て容認をし、末松候補もやっとそれを追認した事で、推進派一本化のため出馬を突然取りやめた。末松氏が沖縄自民党の現職で島袋氏が野に下っている人物といった、様々な内部事情があったと思うが島袋氏の出馬辞退は残念である。
形の上では推進派と反対派一騎打ちの様相にはなったが、自民党県連の候補者選びに住民はしらけてしまい、選挙は盛り上がらなかった。推進派は辺野古移設という本来住民には負担になるものを埋め合わせるしっかりした地域振興策を積極的に訴えるべきであった。しかし、現役市長側の移設反対プロパガンダにまんまと乗せられ同じ土俵で相撲をとってしまった。
推進派の自滅で現役市長の鼻息は荒く戦闘モードになっている。今後埋立て工事にどんな妨害工作に出てくるかわからない。こんな今こそ、推進派は内部抗争に明け暮れることなく結束を十分図って欲しいと思う。