これは、中国語で「自分自身あまりコスプレするのが好きでありません。」となる。昨年から中国語の語学習を始めた。もっぱらNHKのテキストを使いラジオ講座で学習している。NHKの語学のサイトでは各言語とも前週の放送内容がストリーミングでいつでも聞けるようになっている。パソコンで1週間単位で聞き続けることができてとても便利だ。自分が今聞いているのは、レベルアップ中国語という講座だ。
この講座は、一応の中国語の基礎を取得した人が次に聞く中級ランクの内容になっている。これを習得すれば日常の中国語会話が出来るくらいのレベルだ。テキストは中国人記者が北京の旅行会社や北京大学の漫画サークルを尋ね、最近の中国国内世情を取材するというストリー仕立てになっている。
タイトルに挙げた中国文は、北京大学の漫画サークルの取材で、男子北京大生が発した言葉だ。
自己不太喜?COS.(自分自身あまりコスプレするのが好きではありません。)
自己は「自分自身」、不太は「あまり…でない」、喜?は「好きです」という意味である。そして最後のCOSはなんと「コスプレする」という動詞である。実はこの漫画サークルはクラブ内にいくつか部会があり、その内の一つがコスプレ部だ。取材は男女2人が応じているが、女子大生はコスプレ部に入っているが、男子大生はどうかという質問に答えたものだ。
最近、中国の若者の間には、英語が日常会話やネットの中に入ってくることは珍しくないようだ。そしてこのCOSという英字はむしろ「和製英語」といえるもので、日本の漫画文化に憧れる中国人アニメマファンが好んで使うことによって若者言語として市民権を得ているとのことだ。
中国は、当局が色々とネット規制しているが、それでも外国の様々な情報は完全に防ぎようもなく、微に入り細にいり入ってくる。特に世界の若者文化は中国の若者の日常に抵抗なく定着していく。日本のCOSなどその典型だ。ちなみドラえもんは最近では中国語で哆啦A梦という。単語のなかにAが入っているのがミソだ。以前は机器猫(ロボットネコ)という単語が使われていて今でも通称になっているが、哆啦A梦の方が通りがいいという。
言語はその国の文化の根本をなしている。しかし、外国語の流入は、自国言語に影響を与え文化さえも変容させていく。四千年の歴史を誇る中国語とて例外ではない。特に若者ほどそうした風潮を抵抗なく受け入れて日常化していく。若者文化はいずれ現代中国の文化の一部として定着していくのだろう。
「興奮する」という意味で英語のHIGHは既に若者たちには当たり前のように中国語に混じって使われている。あるいはこれはしっかりした中国語だが、囧 という漢字がある。本来は「光明」の意味だ。しかし文字の絵図の印象から「気がふさぐ」とか「悲しい」(発音はjiong「ジョン」)という意味にネットでは使われているようだ。「中国版絵文字」というべきものが登場しているのが面白い。
*中国語が表記されない場合があるので、問題の語句を画像化しておきました。