粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

菅谷松本市長にしたい3つの質問

2013-03-07 00:22:51 | 煽りの達人

日経はなんでこんな「危険廚」の市長のインタビュー記事を掲載したのだろうか。おおよそこの市長の発言なら想像がつく。事実その通りに危険を煽るだけのものになっている。朝日新聞や東京新聞なら取材の意図がわかるが、日経とあろうものが、こんな反原発市長の自己宣伝の片棒を担ぐなんて、なぜか合点がいかない。

松本市の菅谷市長に聞く「チェルノブイリ事故25年以上、現地なおお先見えず」(日本経済新聞2月20日)

チェルノブイリ事故後ベラルーシで5年間甲状腺がんの治療支援を行った菅谷昭市長が、昨年再度現地を訪問した時の様子が語られている。ただ見出しにもある通り、事故後人々の間に、いまだ健康への不安が消えないことが強調されていた。

しかし、記事を最後まで読んでも、不思議なことにベラルーシが現在事故で健康被害に悩まされている具体的な確証がない。せいぜい先生たちの話では元気そうに振る舞ってはいても子どもたち(中学生)の免疫力が落ちているようで、風邪をひきやすく、ひくと治りにくい。疲れやすく集中力を欠かしがちだと心配していた」と「現地の先生の印象」があるだけである。しかし、記者が「中学の生徒であれば、事故のときにはまだ生まれておらず、事故の直接の影響は考えられません。」と疑問の突っ込みともとれる感想をいう。それに対して菅谷市長の返答がどうも煮え切らない。

「確かに15歳以下の、事故後10年以上が過ぎて生まれた子たちだ。土壌の汚染は軽度(同3万7000~18万5000ベクレル)で、食品検査が実施されており汚染の心配がないものを食べている。ただ健康診断を定期的に受け心配な傾向が表れているらしい。科学的な説明は十分にできてはいない。疑うとすれば、軽度とはいっても汚染した土壌のほこりを吸い込み続けている影響か、食品の検査をしていても徹底されていないなどの理由で放射性物質の摂取がわずかながら継続していることも考えられる」

ここでいう「心配な傾向」についても科学的説明が「十分出来ない」とし、放射性物質の摂取がわずかながら継続していることも「考えられる」…奥歯にものが挟まったような記事を読んでいてこちらがイライラしてくる。チェルノブイリへいって彼はなんら医学的な実証データを持ち帰っていないのだ。

甲状腺ガン以外のガンについても「(子供たちの健康は)継続してみていかないといけない」とか「免疫力の低下や貧血の傾向なども科学的証明ができない。…被曝の影響も疑う必要がある」などと要するに「用心するのに越したことがない」といった常識的な話に終始しているのだ。

またこれも曖昧だが、「また市長の耳にはベラルーシにおける未熟児や早産・死産の増加といった周産期医療での問題も聞こえてくるという。これもはっきりとしたデータがあるわけではない。」と言う。

これまた「はっきりしたデータがない」のにこんなシリアスな話題を取り上げる。この問題に関しては市長は慎重であるべきだ。昨年も「福島で死産が増えている」と市長が発言し、実際はそれは事実無根で自身が謝罪した経緯があるくらいだ。

除染についてはベラルーシでは「土壌を20センチ削ったが、なかなか効果があがらない」と多少具体的とも思える証言をしたが、記者の突っ込みが弱いせいか、それ以上「効果が弱い」具体的事例が出てこない。市長自身もおそらく、それ以上の情報を得ていないものと思われる。はたして、これを被曝量が8分の1と低く、土壌や生活環境、除染技術が違う福島の除染と簡単に結びつけてよいのは大いに検証する必要がある。実際福島で線量が下がっている面も報告されている。

市長は「除染は余り効果がない。移住という選択肢を考えた方がいいのではないか。」、と早急ともいえる物言いになる。あるいは「親が動けないのだったら、集団疎開という形で子供たちを移してもいい。」とも言う。市長は移住や疎開を提言する時に「つらいことだが」と、枕詞のようにこの情緒的な言葉を添える。

チェルノブイリの今の印象がこんなに曖昧なのに、これをさらに福島の移住まで話を飛躍させるのは論理的に無理がある感じがする。変な言い方だが、自分には菅谷氏が松本市長で良かったと思う。これが福島県知事や福島市長だったら、広瀬隆氏や小出裕章京大助教らを行政の顧問にして住民の移住や疎開を率先して実施したのではないか。それによる社会的な混乱は想像もつかないほど深刻なものになったであろう。

以上、市長の発言は危険廚そのものだが、具体的事例が少なく主観的な要素が強いという判断をせざるを得ない。しかしそれに記者の突っ込みも足りず、市長の独演を許した印象が強い。インタビューは2月20日以前のようだが、その後の様々な報道から自分だったら、次の3つの質問は是非、菅谷市長にしてみたい。

1、安倍新政権下で森まさこ消費者庁担当大臣が「安全基準への疑問や不安があると思う」と指摘し、それが風評被害を助長しているとして、その対策を打ち出すことに対してどう見るか。

2、WHOの報告書で福島の事故でがん患者が増加する可能性は極めて低いことを発表しているが、この報告についてどう考えるか。

3、泉田新潟県知事が「被災地のがれきを焼却して埋めることは殺人行為に近い」と発言したことについて、同じ政治家としてどう思うか。

どれも、今の菅谷市長にとっては難問かもしれない。1でいえば、市長は市内の給食に国より厳しい「松本基準」という食品基準を打ち出したが、今思えばそれが正当だったのか。2ではWHOと記事に登場するパンダジェフスキー氏のどちらにくみするのか。3では殺人発言の知事と同列に思われたくないが、知事を非難すると市長(知事も)を支持する危険廚たちの反発を買いたくないし…。

*当初の記事に、後に加筆した部分があります。