粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

よくわからない数字

2013-03-04 13:56:37 | 反原発反日メディア

時々、性別の意識の差にはっとさせられることがある。以前の知人の女性があることで憤慨していた。「日本の出生率1.39人なんておかしいよね。産むのは1人、2人、なのに。女を馬鹿にしている。」世の男たちは普段こんな発想には至らない。出生率は女性が生涯子供を出産する数だが、確かに日常の生身の女性からすれば双子はあっても、1.39子なんてのはありえない。これも統計という学問上の世界で成立するものだ。

つい最近WHO(世界保健機構)が発表した日本の原発事故による健康への影響についても同様なことがいえる。たとえば、福島県浪江町の1歳女児が16歳までに甲状腺がんになる確率は、0.0365%となる。これは、平常時0.0040%の9.1倍にもなる。ただはたして浪江町の1歳女児はどれくらいいるのか。日本人の1歳児は人口の約1%、女児はその半分だ。浪江町の人口は2万人と考えると、女児は約100人になる。したがって浪江町1歳女児が16歳までに甲状腺がんになる人数は次のようになる。

100×0.000365=0.0365人(事故の影響を加味)

100×0.000040=0.0040人(平常時)

こんな小数点以下の数字に現実世界で意味があるのか。浪江町は人口が少ないというなら、福島市ではどうなのか。人口は約28万人、1歳女児は1400人とすると、16歳までに甲状腺がんになる確率は0.0148%だからこうなる。

1400×0.000148=0.207人(事故の影響を加味)

1400×0.000040=0.056人(平常時)

福島市でも一人の発症には遠く及ばない。事故での影響を判断することは困難だろう。

要するに、子供の頃に事故で甲状腺がんがふえることは、「ほとんど」認められない。敢えて「ほとんど」と書いたが、現実感覚では影響はないといってもよいだろう。

ただ、1歳女児が「生涯」で甲状腺がんになる確率は急激に高くなる。(朝日新聞の記事)平常時が0.77%、16歳の時点では0.004%だから192倍に増える。そして事故の影響では浪江町で1.29%と70%増える。これも実数を計算してみる。

100人×0.0129=1.29人(事故の影響を加味)

100人×0.0077=0.77人(平常時)

やっと?1人を超える。しかし、女性が生涯80年に病気になることを考えるとがん全体だけでも死因の3割を超える。がんのうちでも最も軽微といわれる甲状腺がんにかかる女性が一人出ることに、さほど問題があるちは思えない。それも0.77人から1.29人だから、事故で一人分増えるわけでもない。これまた現実感覚では事故での影響はないといってよい。朝日新聞の記事では「70%」という数字が強調されている。ただ0.77%に対する70%、に過ぎない。これが仮に30%に対する70%増なら51%となって意味合いが全く違ってくるが、実際は1.29%だ。

WHOの説明ではこうした数値もかなり条件が厳しく現実とかけ離れたものだ。同じ場所で4ヶ月住んで福島の食材で食事をした場合でこれも実態とかなり乖離している。以上今回の報道は、ちょうど「女性が(双子ならぬ)1.39子を産む」と同じように日常の生身の人間には、まさに浮き世離れしたSF小説のように思える。


追記:浪江町の1歳女児が、生涯で甲状腺がんになる確率が0.77%から1.29%になるというのは、0.52%の増加ということだ。これは、よくいわれる年間100ミリシーベルトの被曝でがんの発症が0.5%がふえるという、これまでの一般の放射線被曝言説と奇しくも一致する。

WHOの報告は、この過去の言説を踏まえた上で、今回の数値を算出したのか。当たらずといえども遠からず?しかもとても現実的ではない条件での数値だ。「ミスター100ミリシーベルト」といわれる山下俊一福島県立医科大学副学長のセオリーに敬意を払っている?