粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

2年ぶりの米出荷

2012-11-21 00:05:18 | 福島への思い

福島県広野町は原発事故で緊急時避難準備区域となり、昨年9月解除されたものの、米の作付けは国から自粛を求められた。ただ自主販売する農家は例外的に食品基準値以下なら出荷が許可されている。

東京新聞の記事によると、今年2軒の農家が2年ぶりに米を出荷することになった。そのうちの一人横田さんはなんと31歳だ。事故前から放棄されている休耕田をも借り受けて5ヘクターの農地に米を作付けする若手の意欲的農家だ。しかも減農薬を心がけ、販路も自分で開拓する「稼げる農業」の実践者でもある。

心配していた国の基準も、キロ20ベクレル以下で全く問題ない。事故で農地を放棄して廃業する農家も増えている広野町で頼もしい31歳だ。こうした若い農家の強い意志とその行動力にエールを送りたい。うれしいのは一部買い取りする業者が基準値以下だということで通常より高い価格で買い取ってくれたことだ。普通なら福島の米ということで買いたたかれることも多いのに。横田さんのひたむきな意気に心打たれたのかもしれない。

それ以上に横田さんを喜ばせたのは、幼い3人の娘が「広野のうちじゃなきゃ、いや」と避難していた神奈川から実家へ戻ってきてくれたことだろう。おそらく奥さんのしっかりした判断と理解があったに違いない。

実際まだ広野町は住民の2割しか戻っていない。娘たちが通う小学校も4分の3は避難したままだ。まだまだ多くの問題が広野町は抱えている。しかしこうした意欲的な若い農家の取り組みは、何よりもこれに続く人々への大きな励みとなるであろう。何より旧避難区域からの米の出荷という意味は大きい。

ところでこの記事を取材したのはなんと?東京新聞の記者である。何かと問題の多い新聞だが、郷里の人々のひたむきな思いを優しく見守る記者がいることは救われる。