原子力規制委員会が福井の大飯原発で実施した現地調査は、活断層の有無を巡って参加した専門家の間で紛糾して結論は出なかった。専門家で活断層の存在を主張していたのは、東洋大学の渡辺満久教授だった。「活断層があることは確実だ。すぐに運転を停止すべきだ」と。この発言だけを見ると相当な反原発派に見える。例の小出裕章京大助教との共著もある。
ただ最近のインタビュー記事を読むと、必ずしも全ての原発に反対というわけだはないようだ。彼にいわせると、あくまでも直下に活断層がある原発の稼働に反対していて、それ以外は問題ないとしている。問題はやはり原発と彼の専門分野の活断層とが直接結びついた場合、原発否定が非常に攻撃的だということだ。今回の調査でもすぐ運転中止を求める過激ぶりだ。結局、ただの地滑りと見る立命館大学の岡田教授と真っ向から対立し、収拾がつかない。
結論は引き延ばしにされたが、おそらく白黒をはっきりさせることは、今後大掛かりで時間をかけた調査をしなければなかなか難しそうだ。となると、ある意味現在稼働している大飯原発をすぐ運転中止にすることは難しい。しかし、これから稼働させる原発では、渡辺教授が事前調査のメンバーに加わっていく限り、相当なプレッシャーになると思う。その都度地質の問題なしとする学者と対立することが予想される。結局原発再稼働が先延ばしにされる可能性が高い。
これがはたして日本のエネルギー政策を考えていく上だ好ましいのか。おそらく反原発に立つ陣営からは渡辺教授は「反原発の旗手」に祭り上げられそうだ。その特異な風貌と攻撃性はそれにふさわしい存在にも見える。