旅する小林亜星

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福利

2008-09-10 21:41:01 | 青春生き残りゲーム
労働環境としては最低の職場だけれど

毎日20時半まで働くモチベーションを支える給与外特典が
毎日16時にお遣いに出されるバンキング。

5つの銀行と郵便局をツアーするのだけれど

小切手の口座番号が間違っていたりとか
小切手の字が汚くて読めないと窓口嬢に嫌味を言われたりとか

小切手のサインがなくて
16時半に閉まる銀行に間に合うよにオフィスに走って戻ったりとか

経理のひとの指示が曖昧で
予想外のことが起こって怒られたりとか

毎日この30分間は本当にスリリングだ。

いつも3軒目に行く黄色い銀行で
ビジネスバンキングという列に並ぶと

対応してくれるのが

窓口に立つ、美しいエキゾチックな瞳を持つ、
右手の人差し指の第一関節全部が青黒い男か

愛想のよい中年男性。

どちらに当たるのかは50%の確率だけれど
青黒い男に当たることが多い。

ところで仕事が終わって

死んだ魚のよな目をして20時半の電車に乗ろうとしたら
青黒い男に、と、ある日出くわした。

こっそり毎日観察したら、ほぼ毎日乗ってる。

青黒い男は窓口の向こうからいつも何かと話しかけてくれるけれど

「週末が待ち遠しい?」とか

「今日は小切手1枚だけなんだね?」とか

あたしは恥ずかしくて「うん」しか言えない。

思い切って

「8時半の電車に乗ってよね?昨日見かけたんだけど」と聞いてみたら

「そうそう、5時に仕事が終わってジムとか行くから。
 8時半逃すと、次が9時半だから大変だよねー」と答えてくれた。

それからというもの
どんなに疲れてても電車に乗る楽しみがあるから

遅くまでがんばれるよになった。

いつかは電車の中で「Hi」と話しかけて
そのエキゾチックな瞳はどこ産なのか聞くのが夢なのだけれど。
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