三分

手帳より。

「2/1 08:47 S１丁目左側
　2/2 08:50 S１丁目左側

　3/5 08:46 S１丁目右側
　3/6 08:47 K５丁目右側 マフラー・・・」

今の通勤経路になって２年。

バスに乗ってるとときどき見かける、
一度見たら絶対に忘れられないよな容姿のMr.マリックジュニア。

曇りの日でも絶対着用な
顔の半分を覆いつくすよな、とにかくでかい真っ黒なサングラス。

相手の戦闘能力とか測定できそな。

そして腰のあたりに刺さってる巨大なメカ。
トランシーバ？

とにかく姿勢がよく
春には真っ白なYシャツをパンツに入れてトランシーバ、
冬にはベージュのトレンチコートにトランシーバ。

スタスタと歩く異様を絵に描いたよな男、Mr.マリック, Jr.

バスに乗っていると
降って湧いたよに突然あたしの視界に入ってくるあの男が
一体どこから来てどこへ行くのか記録してみようと思ったのは２月のはじめだった。

ひとというものは不思議なもので
それまでは何の気なしによく目にしてたあの男は

では観測しようとすると、めっきり遭遇しなくなるもので。

遭えなくなったらなったで、

あの男はどこかの会社の役員で決まった日に出社しないのでは？とか
在宅で毎週月曜しか出社しないのでは？とか
シフト勤務で勤務時間がバラバラなのでは？とか

あたしの中でさまざまな憶測をよんだ。

バスに乗っていると時間を調整できないので、ではと、
今週から自転車で通勤することにしてみた。

時間は９時ちょっと前の３分が勝負。
場所はS１丁目付近が要。

いや、いない。
今日も空振りかと思ったそのとき、

シャナリシャナリと突然登場した、Mr.マリック, Jr.
Mr.マリックのテーマとともに。

そのときのあたしの顔の綻びをなんと表現しようか。

いないと思ったあの人が、いた・・・瞬間。
そして、その喜び。

これは恋？
恋なのか。

今朝は寒かったからマフラーしてきたんだね、水色のマフラー。

休みをとって
満足ゆくまでストーキングしてみたい欲求、そして春。