心の免疫力~書とことばから

もっと暮らしに書やARTを~
雲のように水のように あっけらかんと自在に生きるヒントを
求めて~ by 沙於里

天真を楽しむ

2007-10-24 | つれづれ
              「酒に陶然と酔いつつ心境の天真を楽しむ」



書を始めるきっかけは人それぞれ。
私はたまたま中川一政氏の「裸の字」展を観て、こんな風にまっすぐに心に届く
書が書きたい!と思ったから。

母に相談すると、私の性格も考慮し、母とは書風も会派も縁遠い、けれどご縁を
頂けたので、前衛書家の第一人者であるI先生の下を訪ねた。

I先生に於かれては、全くの素人は願ご遠慮というのが本当の所だったと思う。
なぜか父に付き添われ、ご自宅の書斎に通されてしばし禅問答のような会話。

「あなたは薬が欲しいのか、それとも処方箋が欲しいのか」
脳天気で怖いもの知らずだった私は、即答した。

「処方箋でいいです」  それに対して大家のI先生は
「はい、わかりました」  と子供を諭すように笑顔でおっしゃった。

「いいです」はないだろう・・って、随分あとになって冷や汗をかいた覚えがある。

けれどその後も世間知らずの私は、雲の上の存在のI先生を何故かライバルと
勘違いして、思うままの作品をあれこれ書いて「見て見て・・どう?」とばかりに
ウキウキしながらお教室に通っていた。

私の人生は、I先生に巡り会えたことで、大きく変わった。
会派の中であるいは師と同じ書風を求める世界にいたら、
私は今頃、書をやめていたと思う。

けれど私ごときの未熟者に対しても、書への情熱と常に新しいものへの探究心を
隠さず惜しまず示して下さったI先生の、どこまでも純粋で天真なお心、
そして愛情の深さのお蔭と、深く深く感謝の日々です。

一生かかっても先生の足元にも及ばないけれど、書への情熱、天真な心だけは
忘れずに、書を通して一人でも多くの方と、関わっていけたらと思っています。
コメント
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