心の免疫力~書とことばから

もっと暮らしに書やARTを~
雲のように水のように あっけらかんと自在に生きるヒントを
求めて~ by 沙於里

一期一会

2007-10-07 | 禅語・般若心経


子供の頃の夢は、動物園の飼育係だった。
けれど大学を出て初めて就職をした先は、小さな和紙の工房だった。

和紙の人形作家として有名だった女性が、きっぱり作家を廃業し始めた、
新入社員の同期の新卒女性4名と、事務の女性と社長の6名の会社だった。

全国の手漉き和紙の産地を歩き集めた和紙そのもの、そしてそれらを使って
自分達で企画・デザイン、製造、納品作業、販売、新規取引先開拓まで、
全部この6名でこなしていた。

社長の口癖は「心頭滅却すれば火もまた涼し!」
「出来ないと言うな、やってできないことはない!」
若かったから、社長のことばや行動は、全てそのまんまを受け入れていた。
右も左もわからない新卒の私達にとっては、毎日が刺激的だった。

たぶん普通の会社に就職していたら、経験できないことをたくさん体験した。
あまりのハードな生活に、体調を崩し2年で退職してしまったけれど、
この時の数々の出会いや楽しいエピソードは、語り尽くせないほどある。

その後、和紙へのこだわりの強さと、向っ気の強い社長の性格も多少災いしたのか、
和紙の会社としては残念ながら幕を下ろし、今では別会社として、
60歳をゆうに越えた今でも、まだまだ頑張っているようだ。
今でも「社長ちゃん」と呼びながら、時々連絡を取っている。

滅多にお目にかかれない不思議なエネルギーと懐の深い愛情、そして、
強くも繊細な心を持った社長ちゃんは、 私の人生で出会った人の中で、
かけがえのない人の一人だ。
コメント
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