’03、一応今も所属する書道団体の選抜100人展出品作。
3×6尺(90cm×180cm)で、タイトルはTime is Moving on.
この時期は、太い筆に濃墨で、紙にくい込むような粘っこい線ばかりを追っていた。
自分の周りにある空気や時間やエネルギーを寄せ集めて、そのどれをも
逃さないような吸引力を持って、目の前の紙に閉じ込めようとしていた。
今思えば、表現することと、団体に所属することのいくつかの矛盾にストレスを
感じていたのかもしれない。
Time is Moving on. ~時は流れている。そして私は「今」を生きているのに。
よく、なんて書いてあるの?と聞かれる。
文字は書いていない。私の場合、抽象作品の場合、文字を題材にしない。
なぜなら、文字は意味という既成概念がつきまとい、ぱっと見た瞬間に見る人に
ある程度の情報を与えてしまうから。
私にとって抽象作品を創るという作業は、自分探しの作業でもある。
白い紙の前に立ち、その時五感に響く音楽を聴きながら、まずは好きなお香を
焚いて嗅覚を刺激し、目を閉じて深呼吸。
音楽を吸収しながら集中し、自然と体が動き出したら書き始める。
1枚書くと、汗が出て息は乱れる。
大抵の人は1つのテーマなり題材を決めたら、同じような構図を何枚も書いて
いくらしい。でも私は、それができない。
2枚と同じ構図は書かない、というより書けない。
集中した感激は瞬発であり、次に紙に向うと違う興奮が生まれる。
まさに Time is Moving on. (←視聴できます)なのだ。
この作品はRed Hot のStolen Momentsというアルバムの1曲目、まさに
このタイトルの曲から生まれた。
今日は911。アメリカ同時多発テロから6年。
時は流れているのに、悲しいことに人の心はなかなか進化しない。