人生いろは坂

人生は山あり谷あり、そんなしんどい人生だから面白い。あの坂を登りきったら新しい景色が見えてくる。

公共の宿

2010-04-06 06:21:34 | Weblog
 倉敷周辺、ことに瀬戸内海沿岸は日本有数の風光明媚な土地である。
雲仙、霧島国立公園などと並んで日本初の国立公園に指定された場所
である。

 特に鷲羽山からの展望は素晴らしく、山頂に立つと沖に散らばる大小
様々な島と、時間を追って変化する潮の流れが、海面に様々な模様を
描く。

 その模様が時々刻々と変化する。太陽の光に照らし出されて光り輝く
縞模様は筆舌に尽くしがたい美しさである。かつて文壇で活躍した
有名人達も多数この地を訪れて様々な感想を書き残している。

 こんな美しい瀬戸内海地方なのに何故か訪れる人は少なく、その上
公共の宿まで相次いで閉鎖されてしまった。今はユースホステルや
国民宿舎を含め、大きな宿舎は僅かに7カ所残っているだけである。

 かつては国民宿舎を初め、公共の宿は三カ所あった。その一つが国民
年金センター「しもつい」であった。私が招待する行事の団体の宿泊先と
言えば「しもつい」であった。

 何しろ風光明媚なところに建っていた。この当たり一帯は日本夕日百景
の一つに数えられる場所でもあり展望が素晴らしい。

 また、鷲羽山にも瀬戸大橋にも近い。いつ行っても大勢の人が宿泊して
いるような、決して公共の宿にありがちな閑散としているような施設では
なかった。地の利を得ていたことと、それなりの経営努力も行われていた
ように見受けられた。

 もう一つは王子ヶ岳の国民宿舎近くにあった「ホールサムイン」という
施設であった。比較的、新しい施設で自前の温泉が自慢の宿舎であった。
ここも人の出入りは多かったようである。ここも売りに出されたが買い手
が付かず、今も閉鎖されたままのようである。

 ホテル業界はけっこう浮き沈みの激しい業界のようである。何度も売り
に出されたと言うホテルが多いようで、どのホテルも手入れが十分とは
言い難い。人件費と祝祭日以外の維持管理費に多くが費やされ、採算が
とれないらしい。

 しかし、集客力さえあれば採算はとれるわけで、私達のような素人の
目から見ても、こうした努力が足りないのではないかと思うことが多々
ある。

 例えば自分のホテルだけでなく、地域全体への観光客を呼び込むために
どんな努力をしているのだろうか。多くは市町村の観光窓口に依存した
ままなのではないだろうか。

 自らが、観光地としての素晴らしさを発信しているだろうか。リピーター
を増やすような努力をしているだろうか。旅は人の心に残るような出会いが
必要だ。それは景色であり人との出会いである。

 そのための演出方法は少なくない。もっと努力をしなければ、全国
津々浦々すべてが観光地化を目指している昨今にあって、生き残れる
とは思えない。

 私が色んなところを旅してみて思うのは、強欲にも自分のホテルのみに
客をとどめおくようなことをしていたり、観光客はこのようなことを喜ぶ
のに、何故そのようなことをしないのだろうと思うようなことが多い。
勉強不足も甚だしいと言わざるを得ない。

 特に私が住んでいる児島という町は本気で観光を考えているのかと思う
ほど工夫も努力も足りないように見える。今、児島は特産品の繊維製品
やジーンズなどを主体とした街づくりを目指している。

 これとても、あれもこれもと思う日本人に対しては、ジーンズだけでは
客は集まらないように思われる。来ても一部の人だけであろう。観光資源
と資源を繋ぐ努力と町全体の活性化がなければ人は来ないように思われる。
閑散とした商店街では寂しすぎる。

 日本人の感覚は、東京で言えばお年寄りの銀座と呼ばれている巣鴨など
の賑わいである。また、若者にしてみれば秋葉原のような街の賑わいでは
なかろうか。全国を巡り歩いて思うのは、肩と肩が擦れ合うような街で
なければ人は集まって来ないように思われる。

 それは店でも同じことである。狭いカウンターで体を小さくして座ら
なければならないような小さな酒場に人は集まってくる。あまりにも
手狭なので店を大きくしてしまうと、今度は閑散としすぎて人は遠ざかる。

 変なものである。やはり人間は賑やかな方が好きな動物のようである。
倉敷美観地区の何が良いのだろう。あの倉町の大半は意識的に作られた
ものである。それでも人は集まってくる。

 最近の土産物店の数は二十数年前に比較すると格段に多くなった。
それだけ町全体の売上は伸びているのだろう。こんな店はこの町に
ふさわしくないなと思われるようなものまで出来ている。

 公共の宿がなくなる背景には色んな問題があるようだが、採算のとれて
いるものまで一様に閉鎖してしまう必要があったのであろうか。ちなみに
国民年金センター「しもつい」は民間に買い取られて再会の準備が進め
られているようだが、いつのことになるのだろうか。また、以前のように
低価格で宿泊出来るのだろうか。あまりにも展望が良い場所なので、この
ままにしておくのはもったいないと思うのである。

 ともあれ観光地として素晴らしい街は、そこに住んでいる人にも住み
やすい街である。多くの人に誇れるような街である。

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