おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

韓非子

2013-07-28 12:23:22 | 格言・ことわざ
『韓非子』より亡徴(第十五)。「亡国の徴候(条件・きざし)」を挙げています。

「~者」(~というような場合)」、「可亡也」(政治は危ない、国家は滅びかねない)という形の47条の文を列挙。どれもこれも、今もどこかの組織、国で当てはまるような・・・。

・凡人主之国小而家大、権軽臣重者、可亡也。
国は小さいのに臣の家が大きく、王の権力が弱くて臣の権力が強い場合、可亡也。

・簡法禁而務謀慮、荒封内而恃交援者、可亡也。
王が法律を軽んじてはかりごとにばかり関心があり、国内を荒れさせる一方で友好国からの援助を頼みにしているような場合、可亡也。

・群臣為学、門子好弁、商賈外積、小民右杖者、可亡也。
家臣たちが(役に立たない)学問を行い、子弟が弁舌が巧みなのを好み、商人が外国に蓄えを持ち、下の者が上に頼るばかりの場合、可亡也。

・好宮室台榭陂池、事車服器玩好、罷露百姓、煎靡貨財者、可亡也。
王が建物や器物の好み凝って、人民を使い富を浪費する場合、可亡也。

・用時日、事鬼神、信卜筮而好祭祀者、可亡也。
王が日の吉凶や占いや祭り事を好んでいる場合、可亡也。

・聴以爵不待参験、用一人門戸者、可亡也。
王が業績も調べずに爵位を与え、特定の一人の言うことだけを用いている場合、可亡也。

・官職可以重求、爵禄可以貨得者、可亡也。
有力者の口ぞえがあればそれで役職につくことができ、賄賂で爵禄が得られる場合、可亡也。

・緩心而無成、柔茹而寡断、好悪無決、而無所定立者、可亡也。
王が志にゆるみがあり、決断力がなく、(政治を行うに)確固とした方針がない場合、可亡也。

・饕貪而無饜、近利而好得者、可亡也。
貪欲で目先の利を得ることを好む王がいる場合、可亡也。

・喜淫乱而不周於法、好弁舌而不求其用、濫於文麗而不顧其功者、可亡也。
王がでたらめな処置を行い、法律を厳守せず、巧みな弁舌を好み、その先を考えず、体裁のよさだけを見てその効果を顧みない場合、可亡也。

・浅薄而易見、漏泄而無蔵、不能周密而通群臣之語者、可亡也。
底が浅く考えていることを簡単に見透かされ、意図を隠しておくことができず、家臣らのいうことをすぐ別の人に言う、そういう人が王である場合、可亡也。

・狠剛而不和、愎諌而好勝、不顧社稷、而軽為自信者、可亡也。
強情で諫言も聞かず、勝ち負けにこだわり、国家を顧みず、正しいことかどうか考えずに軽々しく事を行って、自分はよいことをしたと思いこんでいる、自信過剰な人が王である場合、可亡也。

・恃交援而簡近隣、怙強大之救而侮所迫之国者、可亡也。
友好国をあてにして近くの隣国を軽んじ、(自国より)強大な他国が助けてくれるとたかをくくって自国を圧迫してくる国を軽くみている場合、可亡也。

・羈旅僑士、重帑在外、上間謀計、下与民事者、可亡也。
外国の出で、しかも家族などが外国にあるような者が人民と一緒になって政治にたずさわる場合、可亡也。

・民信其相、下不能其上、主愛信之而弗能廃者、可亡也。
民が大臣を信頼するも、家臣は主上を信頼することができず、王もその大臣を信頼してやめさせることができない場合、可亡也。

・境内之傑不事而求封外之士、不以功伐課試、而好以名聞挙措、羈旅起貴、以陵故常者、可亡也。
国内の有能な人物が官に仕えず、外国の人物を求め、功績でなく名聞名利で人事を行うことを好み、自国の古参の者にかわって外国の出の者が高貴な地位につく場合、可亡也。

・出君在外而国更置、質太子未反而君易子、如是則国携、国携者、可亡也。
亡命して国外に王がいて人質となっている太子が帰ってこないうちに別の子を太子とする場合、可亡也。

・挫辱大臣而狎其身、刑戮小民而逆其使、懐怒思恥、而専習則賊生、賊生者、可亡也。
大臣に恥をかかせてなれなれしくあつかい、人民を多く処刑して使役の仕方もまちがっていると、恨みをもたれ反乱が頻発する場合、可亡也。

・大臣両重、父兄衆強、内党外援、以争事勢者、可亡也。
大臣の間に二つの強い勢力があり、また君主の親族たちが力を持ち、国の内外の者と手を結んで勢力を争うような場合、可亡也。

・婢妾之言聴、愛玩之知用、外内悲惋、而数行不法者、可亡也。
王が個人的にかわいがっている女たちの言うことが政治に用いられ、国には悲しみ怨む者が多いにもかかわらず、王がしばしば不法を行う場合、可亡也。

・簡侮大臣、無礼父兄、労苦百姓、殺戮不辜者、可亡也。
家臣を馬鹿にし、親族に礼を用いず、人民を苦しめ、罪のない者を殺す場合、可亡也。

・好以知矯法、時以私雑公、法禁変易、号令数下者、可亡也。
(王が)一存で法をまげ、時に私的な思惑が公に入りこみ、禁令の内容がたやすく変わり、(内容のちがう)命令がたびたびくり返される場合、可亡也。

・無地固、城郭悪、無蓄積、財物寡、無守戦之備、而軽攻伐者、可亡也。
確固とした地形による守りがなく、城壁の質は悪く、蓄えもなく、財物も少なく、守りも戦の備えもないのに他国を軽々しく攻撃する場合、可亡也。

・種類不寿、主数即世、嬰児為君、大臣専制、樹羈旅以為党、数割地以待交者、可亡也。
王家の一族がみな短命で、王がしばしば代わり、乳児が王となり、大臣が権力を一手に握り、外国の出の者に徒党を作らせ、たびたび土地をさしだして(強国との)友誼を期待している場合、可亡也。

・太子尊顕、徒属衆強、多大国之交、而威勢蚤具者、可亡也。
太子の地位が高く、従う味方が多く、大国とのつながりがあり、即位より前に強大な力を持っている場合、可亡也。

・変褊而心急、軽疾而易動発、必狷忿而不訾前後者、可亡也。
王が移り気で思い立つとすぐ行動に移し、失敗するとすぐに腹を立てて前後を顧みない場合、可亡也。

・主多怒而好用兵、簡本教而軽戦攻者、可亡也。
王が怒りっぽく戦に走ることを好み、農業や練兵をおろそかにして、それでいて軽々しく他国を攻める場合、可亡也。

・貴臣相妬、大臣隆盛、外藉敵国、内困百姓、以攻怨讎、而人主弗誅者、可亡也。
高位の家臣が互いの仲が悪く、大臣が権力を持ち、外国の力を借り、人民を苦しめて、互いに争っているのに、王がそれを処罰できない場合、可亡也。

・君不肖而側室賢、太子軽而庶子伉、官吏弱而人民桀、如此則国躁、国躁者、可亡也。
王が無能で近親者に有能な者がいる、あるいは太子の力が弱く妾腹の子がそれと同じぐらい力を持っている、または官吏の力が弱く民を抑えられず、国が不穏になる場合、可亡也。

・蔵怨而弗発、懸罪而弗誅、使群臣陰憎而愈憂懼、而久未可知者、可亡也。
王が怨みをしまったままにしておき、罪人を処罰せず、そのためにかえって家臣らが王を憎み、ますます恐れを抱き、それでも長くそのことに気付くことができない場合、可亡也。

・出軍命将太重、辺地任守太尊、専制擅命、径為而無所請者、可亡也。
出征する際に将に権限を与えすぎたり、辺地の防備にあたる将の地位が高すぎたりして、将が自分ですべて事を行い、上からの統制がない場合、可亡也。

・后妻淫乱、主母畜穢、外内混通、男女無別、是謂両主。領主者、可亡也。
王の妻や母が姦通を行い、内(宮)と外(朝廷)の者が出入りし、男女の秩序がない。これを両主(=二勢力ができる)というが、そうした状況になる場合、可亡也。

・后妻賎而婢妾貴、太子卑而庶子尊、相室軽而典謁重。如此則内外乖。内外乖者、可亡也。
后や正室がさげすまれ、下女や妾が高くあつかわれ、太子の地位が低いのに対し、庶子の地位が高く、宰相が軽んじられて(謁見をつかさどる官で本来政治的な権限は弱い)典謁が重んじられる。このように上下・内外の区別がない場合、可亡也。

・大臣甚貴、偏党衆強、壅塞主断而重、擅国者、可亡也。
大臣の力がきわめて強く、またそれに偏る徒党が多く、王が正しい判断をできないようにして、権威を持ち国を思うままに動かすような場合、可亡也。

・私門之官用、馬府之世絀、郷曲之善挙、官職之労廃、貴私行而賎公功者、可亡也。
権力のある家の者が官として用いられ、代々の軍人の家の者はたっとばれず、町で私的に善行を行う者は賞せられるが、官にあってはたらいた者は功績を認められず、私の行いがたたえられても公の功が無視される場合、可亡也。

・公家虚而大臣実、正戸貧而寄寓富、耕戦之士困、末作之民利者、可亡也。
王家の倉は空で大臣の家の倉は満ち、もとからいる民は貧しく外から来た者は富み、耕作に励み戦では命をかける者は生活が苦しいのに、(商工業など)大したことのないなりわいの者が潤う場合、可亡也。

・見大利而不趨、聞禍端而不備、浅薄於争守之事、而務以仁義自飾者、可亡也。
大きな利益のあることがあっても手を出さず、災いのきっかけを見ても備えず、争う、防ぐといったことに意欲が薄く、仁義で自分を飾るような人が王である場合、可亡也。

・不為人主之孝而慕匹夫之孝、不顧社稷之利、而主母之令、女子用国、刑余用事者、可亡也。
王が王としての正しい行いをせず、下々の孝をよしとし、国の利益を顧みず、母親の命令を用い、また女や宦官が国を動かしている場合、可亡也。

・辞弁而不法、心知而無術、主多能而不以法度従事者、可亡也。
王が能弁で賢くしたり顔で何でもするが、たびたび法術(形式的なとりきめを守らせることで秩序を実現すること)を無視するような場合、可亡也。

・新臣進而故人退、不肖用事而賢良伏、無功貴而労苦賎、如是則下怨、下怨者、可亡也。
新参の者ばかり栄進して古参の者が退けられ、無能な者が政務を行い有能な者が退けられ、功績のない者が大事にされ骨折って働く者がいやしまれる、そのようなとき下の者は怨みをもつ、下の者が恨むような場合、可亡也。

・父兄大臣禄秩過功、章服侵等、宮室供養太侈、而人主弗禁、則臣心無窮。臣心無窮者、可亡也。
君主の親戚や大臣が功績に過ぎる俸禄を受け、身分を表す章・印や服が分を逸しており、住居や食事が奢侈であり、王がそれを禁ずることをしないと、臣下の心はやむところを知らなくなる。家臣がそうなる場合、可亡也。

・公壻公孫与民同門、暴傲其鄰者、可亡也。
君主の孫や娘婿が同じところに住み、近隣に横暴をふるう場合、可亡也。

 ついついすべて掲載してしまいました。重複があったりもするが、「法家」としての面目躍如たる内容になっています。こうした「戒め」があっても「われ関せず」、あるいは「自分には当てはまらない」ということで、今も昔も相変わらずの状態。人間の性がということでしょうか。
 政治家は本当はこれらのことを心していなければならないと思いますが、はたして。せいぜい「亡国」「亡組織」の因にならぬよう・・・。

 「韓非」は百家争鳴と呼ばれる中国思想史の全盛期に生まれた政治家。書中では分かり易い説話から教訓を引き、徹底的に権力の扱い方とその保持について説いています。「法家」。
 韓非は「性悪説」を説く儒家の荀子に学んだといわれ、非違の行いを礼による徳化で矯正するとした荀子の考えに対し、法によって抑えるべきだと主張しました(「法治主義」「信賞必罰」)。
 韓非の生まれた戦国末期は、戦国七雄と呼ばれ、春秋五覇の時代を経て徐々に天下統一の機運と超大国出現の兆しが生まれ始めた時期。天下を狙う諸国の存亡を賭けた戦いの連続で、国家同士の総力戦でもあった。その国を挙げての過酷な生存競争は、それぞれの国での人材登用の活発化にもつながっていきました。
 それまで君主の血統に連なる公子や貴族などによって運営されていた国政も、階級が下の士大夫や素性の知れない遊説の徒などに、君主の権限が委譲されることも珍しいことでは無くなっていきます。君主に権力を集中し、それをスムーズに適材に委ねる必要があったわけです。
 しかし、その結果として、当時の王権は特定の士大夫や王族に壟断されることが多く、斉(山東省)や晋(山西省)などのように国そのものを奪われてしまう例も起こっていきます。そこで韓非は分断され乱脈化した君主の権力を法によって一元化し、体系化することにより強国になるべきだと考えました。
(以上、「Wikipedia」参照)

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