おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「モーツァルトの脳」(ベルナール・ルシュヴァリエ)作品社

2011-05-23 21:12:39 | 読書無限
 とても興味深く読みました。14歳の少年、モーツァルトが門外不出の15分の楽曲をメモも取らずに、一度聞いただけで全てを覚えて楽譜に残した、という有名なエピソードから、どんな種類の記憶が作用したのか、音楽記憶は存在するのか、と。
 神経心理学の専門家であり、一流のオルガニストでもある筆者。さまざまなエピソード(学者としての自ら関わった実例)などを織り交ぜて天才の「脳」(神経・音楽的知能、さらには身体活動まで)の解明を試みます。短期の記憶、長期の記憶、また、記憶作用に関わる聴覚や視覚などの神経作用。特に音楽を「見る」こと、「構想する」ことに言及しながらモーツァルトのけたはずれの認知能力など、天賦の才・音楽家としての「天才」ぶりに迫ります。絶対音感にもふれていますが、彼はそうではなかったのではないか、と。
 脳内作用が作業記憶として(暗譜による演奏活動や音符言語として作品化する)具体化されるまでの精神作用(肉体作用)の分析には、興味深いものがありました。
 モーツァルトだけでなく、現代の音楽家たちのエピソードも面白い。例えば、歌を口ずさみながら仕事をして、歌うのを止めて仕事に集中、再び歌い出したところは、続きではなくて時間が経過した後の旋律だった、その後、何度も同じように試してみたが、結果はいつも同じだった、という経験は、何とか理解できそうだが。
 とても残念なことは、訳が巧みではないということ。ぎくしゃくした訳が多く(かつての下手な直訳スタイル)、原文のおそらく流ちょうな語り口が伝わってこなかったことでした。
 
コメント
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